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米・イラン秘密戦争と「駐米サウジ大使暗殺」事件

イラクからの全面撤退を発表したオバマ大統領

2011年11月1日(火)

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 世界はいよいよ「ポスト対テロ戦争時代」に本格的に突入した。オバマ大統領は、ブッシュ前政権時代に米国が深入りした戦争からの撤収を加速させ、小規模部隊で安上がりな軍事介入、経済・外交・インテリジェンスを用いた「見えない戦争」へのシフトをますます強めている。

 10月21日、オバマ大統領はホワイトハウスで声明を発表し、今年末までにイラクから米軍を全面的に撤退させる計画を正式に発表した。

 「今日、私は、約束通り、イラクに残された我々の軍隊が今年の終わりまでに全員帰宅することを報告する。(戦争開始から)9年近くの後、米国のイラクにおける戦争は終結する。」

 「イラク戦争の終わりは、より大きな事態の推移を反映したものである。戦争の潮流は後退している。イラクからの撤収により、我々は再びアルカイダとの戦いへ焦点を合わせることが可能となり、その結果、オサマ・ビン・ラディンを含めたアルカイダ指導部に対して、大勝利をおさめることができた。

 今日、我々がイラクから最後の部隊を撤収させると同時に、我々はアフガニスタンでも現地の治安部隊に権限を移譲して、同国から我が兵士たちを帰還させている。私が大統領職に就いた時、この2つの戦争に18万人の兵士たちが派遣されていたが、今年の終わりまでにその数は半分まで削減され、その後も減り続けることになる」

 オバマ大統領は、イラクもアフガンも「すべて予定通り」に進んでいることを強調し、公約通り、両国から軍を撤退させることに成功している、と述べてその外交成果を自画自賛した。

 しかし、この選挙向けのPRは現実とは大きくかけ離れている。

大幅に縮小した米国の対イラク支援

 そもそも、オバマ政権は、ごく最近まで「いかにしてイラク政府との安保協定を改定し、米軍の駐留を延長するか」についてイラク側と交渉を続けていた。イラク軍はまだ自国を単独で防衛する能力のある軍隊には育っていない。これまでの訓練は主に国内の反乱勢力によるテロ対策が中心であり、国外からの侵略に対する防衛訓練はまだ始まったばかりである。

 イラク軍が1人前の軍隊に育つ前に米軍を撤退させてしまえば、イランの影響力の拡大につながるとして、米政府は少なくとも4000~5000人程度の米軍部隊を残すように、とイラク側に申し入れていた。しかし米兵の訴追免除を認めるかどうかでイラク側と折り合いがつかず、交渉は決裂した。

 しかも、軍を撤退させるだけでなく、米国の深刻な財政難が、イラクへの外交的関与や経済・開発支援も大幅に削減させることになった。米国務省は、まだ治安の落ち着いていないイラク北部のモスルに700人規模の領事館を建設する予定だったが、この計画は無期延期になった。同じく北部のキルクーク市は、クルド系とアラブ系が混在しており、潜在的に民族紛争が勃発する可能性がもっとも高い地域だが、ここに計画されていた米領事館の建設も中止となった。

 さらにイラク南部は隣国イランの影響力が強まっているため、米国の外交プレゼンスを強化してほしい、と一部のイラク人が要望していたが、予算がつかないとして受け入れられなかった。350人の米国人教官によるイラク警察訓練計画は、100人体制へと縮小され、イラク全土15か所に治安調整局を設置する計画も、10カ所に縮小された。

 こうして見ていくと、「予定通り」どころか、イラク政府との交渉失敗や米国自身の財政難により、当初予定を大幅に削減せざるを得ない状況になっており、米国のプレゼンス低下は明白である。ちなみに、米軍撤退後に、残された米外交官や復興支援の要員を誰が守るのか?ホワイトハウスは、4000~5000人の治安契約者(Security Contractors)、つまり民間軍事会社の元軍人たちを雇う計画を明らかにしている。正規軍にかわって民間の元軍人たちを「警備員」として雇うというこの計画は、後々様々な問題を引き起こすことになろう。

 新生イラクでは、多数派シーア派が中心のマリキ政権による体制が長期化しており、同じくシーア派の隣国イランの影響力の高まりが懸念されている。少数派スンニ派中心の政党「イラキヤ」のスポークスマンは、「オバマがすべての米軍を撤退させると発表したことは、イラク人にとっての勝利だが、一方で、イランの影響力が強まっており、彼らがイラクを支配しようと画策していることにも注意を向けなければならない」との声明を発表している。

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「米・イラン秘密戦争と「駐米サウジ大使暗殺」事件」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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