「日本と韓国の交差点」

年に1度、韓国中が緊張する日が来た

大学修学能力試験を巡るマーケティング合戦が盛んに

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2011年11月16日(水)

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 2011年11月10日、全国の受験生が一斉に受ける「大学修学能力試験」が行われた。韓国では成人式よりも重要な人生の通過儀礼である。朝8時40分から17時35分まで、全国1207カ所の試験会場で69万人の受験生が参加した(教育科学技術部――韓国の文部省――調べ)。受験生の数は2010年の71万人より2.6%減っている。それでも全国4年生大学の入学定員は33万人にすぎない。

 この試験の点数で大学の合否が決まる。高い点数を取った人は名門大学に入り、専門職になるか大企業に就職し、そこそこの年俸をもらい、より良い配偶者に出会える。韓国では大学入試でその後の人生が決まると言っても過言ではない。

 韓国はいまだに「2人集まれば同窓会をつくる」というほど学閥、学縁に敏感な社会である。ここでいう学閥とは大学(学士)である。偏差値の高い大学の大学院に行って学歴ランドリーをする人も多いが、どの大学のどのキャンパスに通っていたのかが社会人生活の中で重要な意味を持つ。偏差値の高い大学でも地方キャンパス出身者は「大学修学能力試験の足切りラインがソウルキャンパスより低い」という理由で差別される。以前、小学生が学校に提出する家庭調査という書類に親の出身大学名を書く欄があってびっくりしたことがある。

試験会場は応援と祈りの場に

 大学修学能力試験はこれだけ重要なものであるだけに、受験日となれば全国民が緊張する。この日の光景は、米国や日本など海外のマスコミが珍場面として紹介するほどである。今年も例外ではなかった。

 試験当日は高校ごとに後輩と先生が応援に駆けつけ、盛大な応援合戦を繰り広げる。応援に最適な、試験会場の正門前――ほとんどは高校の校舎――に陣取るため、早朝から場所取り競争をする。「少しでも高い点数を取ってほしい」という願いを込めた応援である。

 受験生の家族も会場の入り口まで同行する。試験が始まると、試験が終わるまでずっと祈りながら外で待つ。試験会場の周辺は試験が始まると同時に祈りの場になる。

受験生のため地下鉄はダイヤを変更、クルマは徐行

 教育科学技術部が発表した「2012年度大学就学能力試験施行のための交通、騒音防止、試験用紙輸送円滑化対策」を見ていたら、大学受験日は全国民が受験生になる日のように感じられた。

 チェジュを除く全国で、公務員と大手企業の出勤時間が10時に遅らされた。受験生が満員電車で疲れることなく、会場まで行けるようにするためだ。全国の地下鉄(韓国の電車は基本的にすべて地下鉄だが、地上を走る区間もある。最も古い1号線は地上を走る区間が多い)は運行ダイヤを変更した。受験生が地下鉄に乗り遅れないよう、午前6時から10時まで2〜3分間隔で地下鉄を運行させた。全国のバスは、通過する試験会場の名前をバスの前に張り出した。試験会場のバス停に着くと案内放送もした。

 リスニングテストがある午前8時40分から8時53分まで、13時10分から13時30分までは騒音防止のため、空港は飛行機の離着陸を規制した。教育科学技術部の要請を受けての措置だ。この間は、バスと地上区間を走る地下鉄も騒音防止のため徐行運行した。道路では交通警察がクラクションを鳴らさないよう注意を呼びかけた。試験会場近くにショッピングセンターや市場がある場合、この時間には大きな音を立てないよう協力を要請した。

 混雑を防止するため、試験会場の半径200メートル内には車が入れないようにした。試験会場の近くに軍隊の施設がある場合、受験生が会場に入るまで隊員の移動や受験生に影響を与える活動を自制するよう呼びかけた。行政機関は突発的な気象悪化に備え、非常勤務態勢となった。

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著者プロフィール

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

 研究者、ジャーナリスト。ソウルで生まれ小学校から高校卒業まで東京で育つ。韓国ソウルの梨花女子大学卒業。現在は東京大学社会情報学修士。ソウル在住。日本経済新聞「ネット時評」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどにコラムを連載。著書に「韓国インターネットの技を盗め」(アスキー)、「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)がある。
 「講演などで日韓を行き交う楽しい日々を送っています。日韓両国で生活した経験を生かし、日韓の社会事情を比較解説する講師として、また韓国のさまざまな情報を分りやすく伝えるジャーナリストとしてもっともっと活躍したいです」。
 「韓国はいつも活気に溢れ、競争が激しい社会。なので変化も速く、2〜3カ月もすると街の表情ががらっと変わってしまいます。こんな話をすると『なんだかきつそうな国〜』と思われがちですが、世話好きな人が多い。電車やバスでは席を譲り合い、かばんを持ってくれる人も多いのです。マンションに住んでいても、おいしいものが手に入れば『おすそ分けするのが当たり前』の人情の国です。みなさん、遊びに来てください!」。



このコラムについて

日本と韓国の交差点

 韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。
 趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。
 中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか?

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