「肖敏捷の中国観〜複眼で斬る最新ニュース」

台湾投資家80人は日本で何を見たか

「中国視察は興奮させられる、日本視察は考えさせられる」

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2011年11月21日(月)

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 去る10月30日から11月6日にかけて、台湾から約80人が参加する大型視察団が日本にやってきた。熱海で観光した11月3日、文化の日を除くと、滞在期間中、この視察団は大型観光バス2台を連ね、大阪、京都、東京、千葉にある10カ所の日本企業や団体を精力的に訪問して回った。さらに、夜は、有名な日本料理店での会食や東京湾での屋形船などを楽しみ、5つ星の超高級ホテルに宿泊するという盛りだくさんの滞在だった。

 「3.11」の東日本大震災後、福島の原発事故による風評被害の拡大、史上最高値を更新する円高などの影響を受け、海外からの観光客が急減する中、この気前のいい台湾人(うち、1人はシンガポールからの参加)の団体はなぜ日本を訪れることになったのか。

 実は、これは私の呼びかけで実現した訪日ツアーである。そして、この発端は東日本大震災にある。その経緯について、ここで少し説明させてもらいたい。

私が被災地を「代表」する理由

 台北に本社を構える「財金文化社」は、台湾で最も知名度の高い金融情報雑誌社で、論客としてよく知られる謝金河氏が会長をしている。株式投資などに関する数種類の雑誌を発行しているほか、「金融家倶楽部」という会員制の組織を運営している。

 この倶楽部は1991年に邱永漢氏によって創設されたもので、金融機関の関係者や企業の経営者、個人投資家などを主要なメンバーとして、経済や産業に関する最新動向を把握する目的で、定期的に講演会の開催や中国大陸などの企業視察を企画している。

 私が大和総研で勤務していた頃、年に数回のペースで台湾の機関投資家を対象に中国経済セミナーを開催してきた。数年前、そのセミナーに出席した「財金文化社」の関係者は、「今度、ぜひ弊社で講演していただけないか」と話を持ちかけてきた。以来、同社との付き合いが始まり、現在に至っている。

 謝会長の知名度の高さもあって、講演会の参加者は少ない時でも200人、多い時に800人を超えるという盛況ぶり。中国経済や中台関係について、歯に衣着せぬ激論を戦わせたせいか、謝会長とはすっかり意気投合してしまった。

 今年の6月、「財金文化社」の講演会に出席するため、台北に向かった。「3.11」後、初めての海外出張で万感の思いだった。講演会の冒頭では、東日本大震災における台湾の皆さんからの義援金が100億円を超えたことに対し、被災地の皆さんを代表し、深い感謝の意を申し上げた。そして、私がなぜ被災地の皆さんを代表する資格があるのかについて、こんなエピソードを披露した。

福島にいる姪から突然の電話

 私は1988年1月に日本の文部省(当時)の国費留学生として来日した。留学先は福島大学だった。1990年4月、同じく私の弟も福島大学に留学した。それからというもの、福島にはずいぶんと縁があり、今、そこには14歳になる私の姪が暮らしている。しかし、ある事情があって、姪とは10年近く一切連絡していなかった。そこに「3・11」が起きた。私は居ても立ってもいられない気持ちになった。

 そんな中、ある日、私の携帯が鳴った。福島の番号が表示されていた。慌てて出てみると「おじちゃん、○○子です」という女の子の声だった。一瞬頭が真っ白になり、近くの会議室に駆け込んで、「本当に○○子?」と何度も聞き返したほどだった。

 本当にうれしかった。後日、姪の近影も送られてきた。最後に会ったときにはまだ4歳だった姪が、いまはバスケットボールチームの主将を務める凛とした14歳の少女に成長している。10年という時間の空白を埋めるきっかけが東日本大震災であったというのは複雑な気持ちだが、私は改めて福島とのつながりの深さを実感したのだ。

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著者プロフィール

肖 敏捷(しょう・びんしょう)

肖 敏捷ファンネックス・アセット・マネジメント代表取締役社長、チーフエコノミスト。中国武漢大学卒業後、国費留学生で来日。筑波大学大学院博士課程修了後、1994年に大和総研入社。2010年3月、同社を円満退職した。6月から現職。日経ヴェリタス人気ランキング(2010年)のエコノミスト部門では第5位。著書に『人気中国人エコノミストによる中国経済事情』(日本経済新聞出版社、2010年)などがある。



このコラムについて

肖敏捷の中国観〜複眼で斬る最新ニュース

これまで20年間、東京、香港、上海における生活・仕事の経験で培ってきた複眼的な視野に基づいて、 中国経済に関するホットな話題に斬り込む。また、この近くて遠い日本と中国の「若即若離(つかず離れず)」の距離感を大事に、両国間のヒト・モノ・カネ・情報の流れを追っていく。中国情報が溢れる時代、それらに埋没しない一味違う中国観の提供を目指す。随時掲載。

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