• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

中産階級は、中国市場の主力に成長する

日本企業が狙うべき顧客はエリート層ではない

2011年12月8日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 前回コラムでは、日増しに人材育成市場となりつつある中国で、日本企業として獲るべき人材は、中堅大学卒業生であることを述べた。北京大卒や清華大卒といった超エリートよりも会社に対して忠誠心を抱きやすく、「私を雇ってくださった。感謝したい」という真心を持って働いてくれるからだ。

 背景には、大学進学率35%、毎年600万人の卒業生のうち100万人が職に就けないという酷な状況がある。多くの若者が衣食住という基本的なことに「安心感」を持って生活することできないでいる。特に北京、上海などの大都市では、「明日、どうなるか分からない」という心境で暮らす若者が続出している。

 日本でも話題になった「蟻族」はいまだに増え続けている。大卒でありながらよい給料の職に就けない、高学歴ワーキングプアたちだ。彼らは、将来に備えて節約するため郊外のアパートをシェアして集団で暮らし、毎日、3時間以上かけて都市へと通勤する。

 中堅大学卒業生ほど、こういう境遇にあるケースが目立つ。彼ら・彼女らに安心して働ける、長期雇用の就業環境を用意することは、中国社会の安定に寄与する。加えて、依然として「終身雇用・年功序列」を王道とする日本企業にとっても歓迎できる仕組みだろう。超エリート卒業生が日本企業に留まり続けることはあり得ない。彼ら・彼女らにとっては「転職こそが王道」だからである。

中国社会は鉄アレイ型

 今回は前回の延長線として、中堅大学出身者が日本企業にとって最適な消費者になり得るのか、その先に何が見えるのか、というテーマを考えていきたい。

 かつて1億総中流を誇った日本は「ラグビーボール型」社会だと言われる。とてつもなく裕福な人も、とてつもなく貧困な人も少ない。人口の大部分が「それなりに豊かで、衣食住が足り、安心した生活ができる」中産階級に当たる。

 近年では格差が問題になり、社会的な弱者をいかに救出し、社会の安定を維持するかが積極的に議論されている。しかし、日頃海外で暮らす筆者から見ると、そうした議論が起こること自体、上も下も真ん中に寄せようとする引力が働いているように見える。強者と弱者が乖離することに対する日本社会及び日本人の警戒心は異常なまでに強い。格差の少ない「ラグビーボール型」社会を実現するために、政府、企業から個人までが歩調を合わせていこう、とする世論が普遍的に存在している。

 一方、中国は「鉄アレイ型」社会だと言われる。とてつもなく裕福な人、とてつもなく貧しい人が多く、真ん中に位置する中産階級がぽっかり空いてしまっている。2010年版の世界長者番付(米誌フォーブス)では、中国人の数が初めてロシア人を抜き2位になった。2009年には28人だったものが、1年間で62人まで増加した。ちなみに、首位はアメリカ人で、ランキングされた富豪の4割に当たる403人を占めた。

 1000万元以上の投資が可能な中国の資産家の総数は60万人近くに達する。一方、中国の都市化率はいまだ50%に満たず、人口の半分以上が農村で農業に従事している。農村から都市に出稼ぎに来て、月収1000~2000元ほどで暮らす農民工が2億人いると言われる。彼らは都市戸籍を獲得できない。農村戸籍のままである。「都市で働く農民」ということだ。

禁止されていた中産階級の議論

 共産党直属で、中国最大の政策シンクタンクである「社会科学院」は、中産階級を「年収6万~50万元くらいの層」と定義づけており、「現在、人口の約25%を占め、毎年1%の割合で増えている」と結論づけている。温家宝首相は2011年3月に発表した「政府活動報告」において、「収入格差の是正は政策の最優先事項だ」と明言した。国家のリーダーが格差を問題視しているということだ。

 上記の社会科学院で社会学を研究し、共産党当局に定期的に政策提言レポートを提出している知り合いの女性研究員が、北京の喫茶店で筆者に対して2年前に語った言葉を思い出した。

 「上層部は格差の是正に真剣に取り組もうとしている。日本のようにラグビーボール型社会にシフトしていくことがベストな社会構造だと認識している。中産階級を増やしていくしかない。税制改革も求められる。ただ、中産階級の定義や動向を公の場で議論できるようになったのは最近のこと。とても敏感な問題だから」

コメント3

「加藤嘉一の「脱中国論」現代中国を読み解く56のテーゼ」のバックナンバー

一覧

「中産階級は、中国市場の主力に成長する」の著者

加藤 嘉一

加藤 嘉一(かとう・よしかず)

国際コラムニスト

現在米ハーバード大学アジアセンターフェロー。世界経済フォーラムGlobal Shapers Community(GSC)メンバー。中国版ツイッター(新浪微博)のフォロワー数は150万以上。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トランプ政権のここまでの動きはスロー。

ジョセフ・ナイ 米ハーバード大学特別功労教授