• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

エイズ感染抑制は達成できたのか

情報統制と、それによる恐怖と無理解が恐ろしい

2011年12月7日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 12月1日は「世界エイズデー」であった。その絡みでこの日の前後に中国ではエイズに関する報道が急増する。2011年現在、生存しているHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者は推計78万人(うち確認済み34.6万人)と発表している。11次五カ年計画においてHIV感染者を150万人以下とするという目標を掲げていた中国からすると、感染拡大抑制に成功した、と言えるだろう。

 しかし、多くの中国人は公式統計を信じていない。それどころか、エイズに対する恐怖心は日本人などよりよほど高い。それは、中国当局はかつて国内のエイズ問題について隠ぺいしていたという“前科”があり、今も公式発表に対して疑いを持っている人が多いからだ。こういう当局への不信感とエイズそのものに対する無知からくる「エイズ恐怖症」と差別、そして対策の遅れが中国エイズの問題の本質として浮かび上がってきている。

「売血政策」による「農村エイズ」が特徴

 かなり知られている話なので今さら説明の必要はないかもしれないが、中国におけるエイズの流行は、ほかの国とかなり違う背景がある。一言で言えば、地方政府の「売血政策」による「農村エイズ」が特徴だ。中国でエイズが最初に確認されたのは1985年6月。北京の病院において肺炎で死亡したアルゼンチン系米国人の旅行者が後から確認されたところエイズだった。しかし、その後も中国当局は国内にHIVウイルスは存在しないという立場をとり続けていた。

 河南省に村民の半分がHIVキャリアと言う村が点在していることが公になってきたのは1999年ごろである。一部の良心的な医者や元衛生官僚、記者たちだが厳しい弾圧を受けながらも告発し続け、欧米メディアが報じることで、世界がこの事実を知った。国際社会がその患者の多さと、HIVの蔓延となった恐ろしい売血政策の実体と、10年にわたる隠ぺいの事実を知ったときの驚愕は言うまでもない。

 天安門事件後、鄧小平氏の「南巡講和」によって改革開放政策加速の大号令をかけられたあと、農業以外に特に際立った産業のない河南省では、その省人口の多さを期待して、農民に血液製剤の原料となる血液を売るよう呼びかけた。農民たちの目には、血液を売ることは、重労働の農作業よりずっと簡単に現金収入を得る方法に映り、皆、血液ステーションに殺到した。

 血液をいったん採取し、血漿成分だけ分離して赤血球を体内に戻す分離採血という方法が取られたが、不衛生な器具を使い回すことで、他人の血が体内に混入することがあった。少なからぬ農民が年に数十回のペースで血を売った。各地にできた採決ステーションには夜明け前から長蛇の列ができ、優先的に血液を買ってもらおうと、ステーションの窓口への贈賄が横行するほどだった。

売血を仕切るボスが出現

 そのうち「血頭」と呼ばれる売血を仕切るボスが出現し、彼らは農村をめぐって血を採取するいわば出張採血ステーションを運営し金儲けをした。売血政策は当時の河南省衛生庁長であった劉全喜氏の発案だったが、この劉一族が売血による利益を独占する形になった。劉氏は当時、米国にまで行き、血液の販売先企業を開拓しようとしたと言う。この状況が誰も気づかぬ間にHIVを河南省全土に拡大させた。

 この売血政策は91年ごろから始まったが、90年代半ばには現地で「奇病」の発生が噂になっていた。武漢大学医学部の桂希恩教授や女医の高耀潔さんら一部の医療関係者の現地調査の結果、これがエイズであることをつかんだ。しかし地元衛生当局や中央の衛生部はこの報告を受けて、隠ぺい工作に動き、この問題を告発しようとした医療関係者や中国の新聞記者たちに激しい弾圧を加えた。

コメント4

「中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス」のバックナンバー

一覧

「エイズ感染抑制は達成できたのか」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

人は何か自信を持って誇れるものを持っているはずです。

為末 大 元プロ陸上選手