印刷ページ

 ギリシャの財政危機に端を発し、欧州金融市場が不安定になっています。本稿を執筆中の8、9日には、欧州連合(EU)首脳会議が開催され、危機克服に向けた協議がなされています。しかしEUにおいて問題を抱えている国が、ギリシャにとどまらず、イタリアもIMFの監視下に置かれるなど、広がりを見せる一方で、欧州各国が足並みを揃えるかどうかはなお不透明感が強く、世界金融危機にまで発展するリスクはいまだにくすぶっています。

 世界の金融市場が動揺すると多くの国の為替レートに影響を与えますが、日韓ともその例外ではありません。日本の場合は、欧州、米国の先行き不透明感から、消去法として円が買われ、一時、円レートは変動相場制に移行してからの最高値を更新しました。円は欧米の金融市場が不安定になると通貨が強くなる傾向にありますが、韓国では様相が全く異なります。欧米の金融市場が不安定になると、韓国ウォンは逆に安くなる傾向にあるのです。

 日本では輸出企業を中心に韓国ウォン安に対応した円高対策を唱える声が小さくありません。韓国政府による誘導説も根強く語られており、対抗すべきという声も聞こえてきます。それは本当なのでしょうか。今回から2回にわたり、ウォン安の真の理由とその影響について検証していきます。

「韓国政府によるウォン安誘導説」にまつわる3つの誤解

 「2008年以降のウォン安は、政府が人為的に誘導しているのではないか」との見解をよく目にします。根拠としては、(1)インフレ圧力が高まる中、韓国銀行が利上げを見送り、ウォン安を誘導している、(2)資金流入規制によりウォン高を抑制している、(3)ドル買い介入をしている、といったことが挙げられています。

 しかしウォン安は、確かに輸出競争力といった面ではメリットもありますが、物価上昇率を高めること、また交易条件を悪化させ内需低迷につながるなどのデメリットもあります。よって政府が積極的にウォン安を誘導しているとは考えられません。そこで、韓国政府が人為的に安く維持しているのではないかとの見解について、3つの根拠の妥当性を検討していきましょう。

 まず、「インフレ圧力が高まる中、韓国銀行が利上げを見送り、ウォン安を誘導している」との説はどうでしょうか。

 たしかに今、韓国ではインフレ圧力が高まっています。韓国はインフレターゲットを採用しており、3%±1%が現在の許容されている物価上昇率です。しかし、2011年に入り継続して4%の上限を超える状況が続いており、2011年8月には5.3%を記録しました。

 これに対して韓国銀行は、基準金利を2009年2月に2%に引き下げてから5回、2011年に入ってからは3回引き上げ、現在は3.25%まで引き上げています。これでも引き上げが足りないとの主張もありますが、韓国銀行が金利を更に引き上げない理由は為替レートとは関係ありません。

 本来の中央銀行の目標は物価安定ですので、景気の状態がどうあれ、金利を引き上げればよいとの考えもあります。しかし現実には、主要輸出国である欧米経済の不振もあって、芳しくない国内景気に配慮した金融政策運営を韓国銀行は実施しています。現在の高い物価上昇率は、供給面からのショックによるものであり、金利引き上げで抑制できるかは疑問だからです。

 具体的には、原油価格の上昇と、春からの口蹄疫や多雨により農産物価格が高まっていることが、物価上昇の要因です。需要の過熱により物価上昇率が高い場合には、金利引き上げが有効ですが、現在の局面では、金利を上げても景気だけ悪くして物価を引き下げられない可能性が高いと言えます。したがって金利を大幅に引き上げていない理由は、ウォン安誘導のためではないと言えます。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。


関連記事

コメント

参考度
お薦め度
投票結果

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事