「日本と韓国の交差点」

ペットは「愛玩」動物ではなく「伴侶動物」

法改正で動物虐待には懲役刑も

バックナンバー

2011年12月14日(水)

1/2ページ

印刷ページ

 マハトマ・ガンジーの名言、「国の偉大さと道徳的発展はその国における動物の扱い方で分かる」は日本でも有名だ。韓国は2011年7月に動物保護法を改訂した。他方、「伴侶動物」市場が急成長している。これらを見ていると、ガンジーの名言を思い出す。

 韓国の長寿番組の1つに「TV動物農場」がある。SBS放送が2001年5月1日から、毎週日曜朝9時から放映している番組で、かわいいペットや変わった行動をする動物を紹介している。

 ある日突然飼い主を噛むようになった犬や、水を怖がる犬などに心理治療を施すコーナーの人気が高い。日本のテレビに出演しているアニマルコミュニケーター「ハイジー」も何度か出演し、犬猫が心に秘めた物語を彼ら?の代わりに伝えてくれた。これにスタジオ中が涙した。この番組をきっかけに動物の感情を気にするようになった人が少なくない。

 「TV動物農場」はこのほか、引っ越しの際に面倒だからと捨てられた犬、成犬になったらかわいくなくなったとして捨てられた犬の物語や、ペットを飼うときに気を付けるべき情報なども教えてくれる。

 「TV動物農場」の影響は大きく、韓国ではペットを、「ペット」「愛玩動物」ではなく「伴侶動物」と呼ぶようになった。伴侶動物というのは「一緒に生きる家族と同じ存在」という意味である。

 犬を飼っている友人の話だと、犬たちも「TV動物農場」が大好きで、日曜の朝になると人間と犬が一緒に仲良くソファーに座ってこの番組を視聴するそうだ。

ペット向け肥満クリニック、アンチエイジングが増加

 「TV動物農場」の放送開始以来、大型スーパーマーケットには必ずと言っていいほどペットショップが入店するようになった。ペットフードのコーナーも大きくなった。犬と猫専用の美容院ができ、買い物の間、任せられるようにもなった。日本ではやった犬や猫にさわれるカフェ、ペットのためのアロマセラピーや犬用誕生日ケーキなどが韓国にも登場した。ペットフードやペット用品は日本製一色だったが、最近は韓国産も増えている。

 国立獣医科学検疫院が2010年に行った「動物保護に関する国民意識調査」によると、韓国で伴侶動物を飼っている世帯は全世帯の17.4%で、このうち94.2%は犬を飼っていると答えた。伴侶動物のための月間支出は、犬の場合で6万1200ウォン(約4500円)、猫で4万4000ウォン(約3000円)が平均だった。 国立獣医科学検疫院は2010年、伴侶動物関連市場規模を 1兆8000ウォン(約1200億円)規模と推算した。

 この資料によると、伴侶動物関連市場の中では動物病院が急成長した。動物のための韓方(韓国の漢方)治療、インプラント、肥満クリニック、アンチエイジングなど、特殊クリニックが増えているのが特徴だ。伴侶動物のための幼稚園、ホテル、カフェ、運動場、お葬式場など、日本をモデルにした新しいサービスが増えている。サムスンや現代など大手グループの保険会社は伴侶動物の傷害保険も販売するようになった。

 一方で、捨てられる動物の数も急増している。国立獣医科学検疫院によると、飼い主に捨てられ、施設に捕獲された犬は5万1188匹、猫は2万6284匹だった(2008年)。合計を比較すると、2003年の犬猫合わせて2万5278匹に比べ約3倍に増えている。

ヨンピョンド砲撃事件が動物愛護を後押し

 韓国で動物保護が社会的関心事になったきっかけは、「TV動物農場」のほかにもう1つある。北朝鮮によるヨンピョンド砲撃(2010年11月)により、動物だけが島に残されたことである。人の命も危ない中、動物を連れて避難するのは難しい。島民は飼っていた犬や猫、牛などを島に残さざるを得なかった。動物の命はどうなるのか、飢え死したらどうするのかと気にする世論が広がった。

 動物保護をテーマにした韓国初の映画『ごめん、ありがとう』が2011年5月に上映された。農林水産食品部が出資してボリピクチャーズが制作したものだ。伴侶動物との交感によって人生が変わった人々の物語を描いたもので、「TV動物農場」の映画版と呼ばれている。内容は以下の物語のオムニバスだ――ホームレスの老人と捨てられた犬の物語、亡くなった父が飼っていた犬を引き取ってから父の愛情を知った娘の物語、妹同然だった犬と別れた子供の物語、野良猫に餌をあげる娘と猫が嫌いな父の物語。いずれも、飼い主に嫌がられても、悪さをされても、飼い主を信じて守ろうとする伴侶動物への感謝の気持ちが込められている。家族みんなで観たい感動的な映画として人気を得た。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント4 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

 研究者、ジャーナリスト。ソウルで生まれ小学校から高校卒業まで東京で育つ。韓国ソウルの梨花女子大学卒業。現在は東京大学社会情報学修士。ソウル在住。日本経済新聞「ネット時評」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどにコラムを連載。著書に「韓国インターネットの技を盗め」(アスキー)、「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)がある。
 「講演などで日韓を行き交う楽しい日々を送っています。日韓両国で生活した経験を生かし、日韓の社会事情を比較解説する講師として、また韓国のさまざまな情報を分りやすく伝えるジャーナリストとしてもっともっと活躍したいです」。
 「韓国はいつも活気に溢れ、競争が激しい社会。なので変化も速く、2〜3カ月もすると街の表情ががらっと変わってしまいます。こんな話をすると『なんだかきつそうな国〜』と思われがちですが、世話好きな人が多い。電車やバスでは席を譲り合い、かばんを持ってくれる人も多いのです。マンションに住んでいても、おいしいものが手に入れば『おすそ分けするのが当たり前』の人情の国です。みなさん、遊びに来てください!」。



このコラムについて

日本と韓国の交差点

 韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。
 趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。
 中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか?

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン