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米国の無人偵察機はイランのサイバー攻撃で落とされた?

2011年12月16日(金)

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 米国の軍事・諜報関係者の間では今、米国の超ハイテク無人偵察機がイラン軍の手に落ちた話題で持ちきりだ。

 12月8日、米国のメディアはイラン国営放送が米国製の無人機の映像を公開したニュースを一斉に報じ、イランがどうやってこの無人機を落としたのか、無人機に積まれているはずの極秘データがどうなったかなど、様々な情報、分析や憶測を伝え、知られざる米・イラン諜報戦の一端に光を当てた。

 「最近、我々が収集したインテリジェンスと正確な電子監視により、この航空機がスパイ活動のために我が国の領空内に侵入しようとしている事実を突き止めた。そしてこの航空機は、我が国の東部に侵入した後、我が軍隊の仕掛けた罠に落ち、機体への損傷を最小限に抑えたまま落とされた」

 イラン国営テレビに登場したイラン革命防衛隊のAmir Ali Hajizadeh准将はこう述べて、イラン軍が「洗練されたサイバー攻撃」を使って米国の無人機をほぼ無傷のまま落とした、という俄に信じ難い説明を得意げにしてみせた。「この無人機は、非常に高度な偵察、データ収集、電子通信やレーダーシステムを搭載している」と同准将は続けて述べ、この極秘情報とハイテクシステム満載の最新兵器を手にしたことの重要性を強調した。

 米政府はこの無人機が落ちた原因について正式なコメントを出していない。だが、アフガニスタンで軍事作戦を実施中のNATO軍が12月4日に、「イランで墜落したとされる航空機はおそらくアフガン西部で偵察任務についていたものの、故障によりコントロールが不能になっていた無人偵察機の可能性がある」との声明を発表している。同じように米政府筋からは基本的に「故障により墜落した」との情報が流されている。

 イランが米国製の無人機をサイバー攻撃で落とせる能力を有しているのかどうかは全く不明なのだが、米国の無人機が故障によりコントロールが効かなくなって墜落した事例はこれまでにも数多く存在する。ウィキリークスの機密文書には、米軍の無人機が故障で墜落し、その機体の回収に苦労した話や、コントロールの効かなくなった無人機を撃墜するために戦闘機が送られたエピソードなどが数多く含まれており、このハイテクの塊には、やはり故障がつきものであることが明らかになっていた(「曝されたCIAと米軍特殊部隊の『秘密戦争』」)。

気勢の上がるイラン強硬派

 米国はアフガニスタン西部のイランとの国境に近いシーンダンドに航空基地を構え、そこを拠点にイランに対する偵察活動や特殊作戦任務を実施していると伝えられている。今回イランが獲得した米ロッキード・マーティン社製の「RQ-170」は、ステルス性能を施した秘密性の高い無人機である。今年の5月にパキスタンの北部アボッターバードで米特殊部隊がオサマ・ビン・ラディンを殺害する作戦を実施した際に、ビン・ラディンの隠れ家を上空から監視してライブのデータを送信し続けた秘密兵器として一躍有名になった代物だ。

 こうした無人偵察機は、偵察衛星のように特定のターゲットの上空を数分間のみ撮影するのではなく、長時間にわたってターゲットの上空にとどまって監視活動をすることが可能である。特定の場所を継続的に監視することで、そこにどんな人たちが出入りしていてどんな物が運び込まれているか、などより詳細な情報を収集することができる。また、高性能のビデオカメラの他にも、通信傍受機器や放射性物質の探知機等も搭載されており、広範な情報収集を可能にする。

 アフガニスタン国内の作戦に関しては米軍が各種の無人機を運用しているが、アフガニスタン以外の国々、例えばパキスタンやイラン、それにイエメンやソマリアでの秘密作戦においては、米中央情報局(CIA)が無人機を運用しており、今回イランで落とされた無人機もCIAの所属だとされている。ちなみに今回イランの手に渡ったRQ-170は、CIAがパキスタンでミサイル攻撃を行う際に使っている無人機「プレデター」とは別の機種であり、ミサイルは搭載していない。

 先のNATO軍の発表では、まるでアフガニスタン国内で使用されていた無人機が故障してイラン国内に入ってしまったかのような印象を受けるが、アフガニスタン国内でステルス性のRQ-170を使う意味はあまりない。NATO軍がアフガニスタンで戦っている武装勢力タリバンは高度なレーダーなど使用しておらず、何もステルス性の無人機を使う必要はないからだ。

 今回イラン軍の手に落ちた無人機がどのような理由で墜落したのかは不明だが、これがイランに対するスパイ活動のためにCIAが使用していた無人機であることはほぼ間違いなく、米国にとって打撃であることも確かであろう。

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「米国の無人偵察機はイランのサイバー攻撃で落とされた?」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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