「坂田亮太郎のチャイナ★スナップ」

中国のネガティブ情報

バイアスかかってない?

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2011年12月19日(月)

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 10月21日金曜日、上海に急遽行かなければならなくなった。北京と上海を結ぶ国内線は便数が最も多い。だがエコノミー席はおろか、ビジネスやファーストクラスも空席がなく、困り果てて「あれしかない」と覚悟を決めた。

 そう、北京と上海を結ぶ高速鉄道だ。中国共産党の創設90周年に間に合わせるため今年6月末に駆け足で開業し、当初からトラブルが多発した“中国版新幹線”だ。7月23日には浙江省温州(ウェンジョウ)で40人が死亡する鉄道事故が発生。安全軽視の鉄道省に批判が集中、事故後の乗車率は軒並み半分近くに落ち込んだ。そのため「高速鉄道ならガラガラのはず」と思い込んでいた。

何かと話題の中国版新幹線。やっぱり“本家”に似ている
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 だが、こちらも満席だった。高速鉄道が発着する北京南駅は乗客で溢れ返っていた。朝からキャンセル待ちをして、やっと確保できたのは午後4時10分発の1等席だけ。チケット売り場の電光掲示板を見ると、3日後までほぼ空席はなかった。「思い込み」とは恐ろしいものだと改めて感じた。

危険情報は優先的に扱われる

 そもそも私の頭には偏った情報しか入っていなかった。日本の新聞もあの鉄道事故については連日報道した。手抜き工事、業者と鉄道省幹部の癒着、そして事故原因となった信号機メーカーのトップの急死など話題は事欠かなかった。調べると、事故後1カ月間で日本の全国紙5紙だけで514本も記事が載った。国内の重大事故並みの扱いだ。

 ところが1カ月を過ぎると記事は極端に減っていく。2カ月目は95本、3カ月目は80本、4カ月目は41本。報道すべきニュースがほかにも多くあるとはいえ、事故直後の過熱ぶりとは極端な差だ。そして日本の報道を見る限り、当日券が買えないほど高速鉄道に客足が戻っている状況は把握できなかった。

 中国内の報道も批判的なものが多かったが、時折国営メディアが高速鉄道の人気回復ぶりを伝えていた。しかし、ネガティブな情報で頭がいっぱいの私には“大本営発表”としか映らなかった。結局、自分の目で確かめてみるまで先入観を排することはできなかったのだ。

 邦人の安全を確保するため外国の危険情報を日本メディアが注視するのは当然だ。だが、必要以上にネガティブな情報ばかりが抽出されてはいないだろうか。とりわけ中国に対してはその傾向が強いと思えてならない。

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著者プロフィール
坂田 亮太郎(さかた・りょうたろう)

日経BP社北京支局長。入社してから6年間はバイオテクノロジーの専門誌「日経バイオテク」で記者として修行、2004年に「日経ビジネス」に異動、以来、主に製造業を中心に取材活動を続けた。2009年から北京支局に赴任し現在に至る。趣味は上手とは言い難いがバドミントン。あと酒税の安い中国はビール好きには天国です。


このコラムについて

坂田亮太郎のチャイナ★スナップ

2009年に北京に赴任したばかりの中国“新米”記者が中国を駆けずり回り、見て、聞いて、感じたことをスナップ写真と共にコラムとして掲載していきます。1本の記事は「点」に過ぎないかもしれませんが、回数を重ねていくことで中国の今の「実像」を日本の読者に伝えられたら幸いです。

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