広東省が揺れている。もう既にたくさんの報道がなされているのでご存じの方も多いだろう。広東省汕尾市陸豊市の烏坎村で発生した官民衝突事件である。
村の強制土地収用に文字通り血みどろの抵抗をした村民が「独裁反対」の旗を掲げて臨時自治組織を結成し、これまた血みどろの弾圧を受けて、これに憤る村民1万数千人がデモを行い、村の党幹部が逃げ出して自治権を奪還、まるで“村内革命”といってもいいような事件である。
これをもって、すわ中国式ジャスミン革命か、と判断するのは当然のことながら早すぎるだろう。正直言えば、この種の村レベルの生存権をめぐった「官民武力衝突」「自治組織の結成と党支部の独裁へ抵抗」という事件は今に始まった話ではない。
100人規模以上の官民衝突、暴動などの集団事件が年間18万件もあるのだから、ある意味、日常茶飯事である。しかし、やはり今回の事件は今までと違う予感めいたものを感じさせる。では今までの「官民衝突」とどこが違うのか。
爪がはがされ、歯が何本も折られ
事件の詳細は報道されているが、もう1度、香港、欧米、日本メディアの情報を総合して時系列に整理してみよう。
事件の現場の人口1万3000人の烏坎村は40年以上の長きにわたって、党支書記・薛昌(91)とその一族が牛耳っていた。村の自治組織・村民委員会の主任(村長に相当)は、一般に村民による直接選挙だが、40年連続で90%以上の得票率で当選を続けてきた。
彼らは香港企業家などと手を組み不動産会社を設立、村民の共同所有である村の土地を好き勝手に周辺大企業に売り私腹を肥やしてきた。今年また数千ムー、数万ムーの2つの土地を養豚大手の豊田畜産と不動産大手の碧桂園に売りわたし、高級マンション、別荘などを建てる再開発計画を進めようとしていた。
土地を強制収用された村民約400人に渡された保障額は1人当たりわずか550元という。村民らは書記と直接談判もし、鎮や市、省の上級政府に陳情に行くなどしたが、らちがあかず、無視された。その一方で薛昌は陸豊市の人民代表大会選挙で85%の得票率で自動当選。実際、村民のほとんどが投票拒否していたのだが、そんな投票結果などいくらでも捏造できるのが、農村の「海選」(直接選挙)の実態だ。
9月22日、この結果を不正選挙だと怒りを爆発させた数千人の村民と警官隊が衝突、多数の負傷者が出る事件となった。これで村民4人が逮捕された。これで地元政府機関による改善への期待を完全に失った村民は、村民の意志を代表する者として13人の理事を選び、村民臨時代表理事会(臨時政府)を設立。理事会のとる方針は、全民大会(議会に相当)で話し合うと決め、また自主的に治安を維持するための治安維持隊も組織した。
彼らは定期的に抗議集会を行い、外部メディアに事情を訴え、党支部側と交渉を進めようとした。11月21日には上級政府の陸豊市庁舎前で3000人が座り込みの大集会を開いた。村民側の主張によれば、自主的な治安維持隊の監視によって暴徒化することはなかったというが、相当激しい抗議だったようで、この時、村の党幹部全員が逃げ出した。臨時代表理事会が村の自治を党から奪還した瞬間だった。
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大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002〜08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。著書に『

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