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CIAも「お手上げ」の北朝鮮の秘密主義

2011年12月26日(月)

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 金正日総書記の死去にともない、北朝鮮が「新しい顔」を立ててイメージ・チェンジをはかり、米中韓から援助を獲得して息を吹き返す可能性がある。米国、中国、韓国そして日本は、北朝鮮に対してそれぞれ政策上の優先順位が異なっている。各国がそれぞれ自国の国益を優先させて北朝鮮と取引をすれば、金正恩新体制の基盤固めに貢献するだけでなく、日本にとって重要な懸念事項が取り除かれないまま、北朝鮮が息を吹き返す可能性がある。2012年は、日本の北朝鮮外交にとって正念場になりそうだ。

CIAも「お手上げ」の北朝鮮の秘密主義

 12月17日正午に北朝鮮の朝鮮中央テレビが特別放送で伝えた「金正日総書記死去」は、日本国民だけでなく、世界各国の政府の中枢にいる指導者たちにとっても寝耳に水の衝撃的なニュースだった。

 北朝鮮指導部の動向に最も敏感なはずの韓国では、李明博大統領が自身の誕生パーティーを開催していた。しかも北朝鮮情報の収集・分析を担う国家情報院の元世勲院長が、「テレビを見て金総書記死去の事実を知った」と証言したことで、韓国では李政権や国家情報院を非難する声が強まっている。

 また世界最大の諜報機関・米中央情報局(CIA)もこの事実を事前に察知することが出来なかった。ただし、米国の諜報機関が北朝鮮絡みの重要事件を察知できなかったのは何も今に始まったことではない。

 2007年にイスラエルが空爆したシリアの核施設は北朝鮮の協力によって建設されたものだったが、米国はイスラエルの情報機関にその事実を知らされるまで知らなかったと言われている。また、2010年にはスタンフォード大学の科学者たちが北朝鮮に招待され、新しいウラン濃縮施設を見せられるまで、米国の諜報機関はその施設に気がつかなかった。

 過去にこれだけ重要な事実を米諜報機関がまったく察知できなかったこともあって、北朝鮮については「あの国の内部事情は分からない。もうお手上げ」という一種の諦めが米国内で支配的になっているのかもしれない。今回の「インテリジェンスの失敗」でオバマ政権やCIAを非難する声は米国ではあまり聞こえてこない。

北朝鮮の内部権力闘争はすでに決着済みか?

 北朝鮮の新しい指導者となる金正恩氏に関しても、米メディアでは「われわれはこの人物についてほとんど何も知らない(米タイム誌)」といった自信の無い書きぶりの記事が多く、「実績のない」「未知の」といった表現が数多く使われている。

 一般的に「未知のもの」「知らないもの」に対して人は不安や懸念を抱くが、米メディアの論調を見ても、「この若い後継者は国をまとめていけるのか」「軍部をコントロール下に置くことが出来るのか」「北朝鮮は内部対立から混乱に陥るのではないか」といった見方が多く紹介されている。

 日本でも「北朝鮮暴発」「国内権力闘争激化による崩壊」といったセンセーショナルな記事が一部のメディアで報じられている。もちろん金正恩新体制が権力基盤の確立に失敗し、内部崩壊する可能性がないとは言えない。金日成から金正日への権力移譲が20年かけてじっくり行われたのに対し、金正恩が表に姿を現わしたのはわずか一年前のことであり、まだ20代の正恩は見るからに心許ない。

 しかし、北朝鮮では少なくとも過去2年以上かけて、金正恩体制へ移行するための基盤固めと思われる軍部の人事や、不満分子の粛清が行われてきており、国内の権力闘争には一定の決着がついたのではないか、との分析も成り立つ。

 目立った動きだけを見ても、2010年4月15日に、金正日は太陽節を契機に「大将」4人を含む軍の将軍100人を大挙昇進させており、同年9月の労働党代表者会の前日には、金正恩、金慶喜をはじめとする6人に人民軍大将の称号を付与した。またこの時、上将1人、中将6人、少将27人の昇任人事も断行されている。さらに今年の4月15日の太陽節の2日前には、上将2人、中将5人、少将38人に対して、軍最高司令官(金正日)名義で昇任措置がなされた。2010年4月から2011年4月までの1年間で、実に185人の階級章に星が追加されたという。

 これらの動きを伝えた韓国の北朝鮮情報専門サイト『デイリーNK』は、こうした措置の裏には、人民軍を「金正恩の軍隊」として再編する過程で、「若手の新進軍部グループを浮上させ、後継安定化を図る目的がある」と分析していた。

 同様に反対派や不満分子の弾圧や粛清も相当激しく行われたようである。北朝鮮の人権状況をモニターしているアムネスティ・インターナショナルは12月20日に、「過去1年間にわたる情報収集の結果、金正恩とその支持勢力が後継体制の足場固めのため、粛清を強化している」と発表している。粛清された政府当局者は数百人に上り、処刑されたり、政治犯収容所に送り込まれたりしているという。

 また、過去2カ月間、北朝鮮国内で不正摘発を名目に、地方の党幹部や情報機関の高位幹部が多数逮捕されている。『デイリーNK』は、10月以降「金正恩氏主導の粛清作業」を繰り返し伝えており、「一連の綱紀粛正は金正恩氏が主導しているといわれているが、そのあまりの厳しさに『金正恩氏は普通ではない』とささやかれている」(10月31日付)などと報じていた。

コメント2件コメント/レビュー

菅原氏の指摘はいつも的確で納得がいくだけに、指摘される状況分析では、日本に打つ手はあるかなあ?やはり蚊帳の外か?(2011/12/26)

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「CIAも「お手上げ」の北朝鮮の秘密主義」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

菅原氏の指摘はいつも的確で納得がいくだけに、指摘される状況分析では、日本に打つ手はあるかなあ?やはり蚊帳の外か?(2011/12/26)

なっ!なにっ!北朝鮮は、代替わりしたら、得するわけ!?あの犯罪集団が、汚い外交カードで??ありえない!こんな形で認められるなんて、とても納得いかない!CIAもKGBも役に立たないのか?!やっぱり、何とかしてほしい!!!そう!日本諜報機関が潜入して、拉致被害者を、救出しなければ!日本が、力を見せる一番いい方法だろう!(2011/12/26)

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