製造業や一部の流通業を中心に多くの日本企業は、グローバル展開を加速しようとしている。だが、人材の確保が追いついていない。日経BPビジョナリー経営研究所が実施した経営者調査「企業のグローバル化と人材育成に関する調査」で明らかになった。グローバル人材の育成プログラムを作っている企業はまだまだ少ない。外国人社員に対してキャリアパスを明確に提示している企業もあまり多くない。
経営者調査と並行して、2011年11月、ASEANや中国に出張し、元気な日本企業の現地法人を取材した。共通点は、現地の社員が要職を占めていること。進出当初こそ、経営陣や幹部の多くは日本人社員だったはずだが、現地の社員が育つなかで次々と重要なポストを任されるようになった。ポストを与えられた社員はモチベーションが向上し、より積極的に仕事に没頭して業績向上につながっている。
現地の優秀な人材に経営トップを任せる方針を打ち出し、着実に実施している。経営トップと社員とのコミュニケーションが活発になり、組織が活性化する。不満や悩みを経営トップに打ち明けることで、様々な問題の解決につながっている。「頑張って実績を出せば、トップになれる」と思ってより仕事に身が入るようになるなど、好循環を生んでいる。
日経BPビジョナリー経営研究所が今年9月、上場企業の経営者に実施した「企業のグローバル化と人材育成に関する調査」の集計結果がまとまった。回答企業354社のうち34.5%が「積極的にグローバル化を推進している」、同25.7%が「これから積極的に推進しようとしている」と回答した。両者を合わせると、6割を超える。

しかし、「グローバル人材育成プログラムは既にある」や「グローバルリーダー育成プログラムは既にある」と回答した企業は、それぞれ12.7%、10.7%しかいない。
さらに「日本採用の留学生や外国人従業員のキャリアプランは既にある」と回答した企業は6.5%しかない。「現地採用の外国人従業員に対するキャリアプランは既にある」と回答した企業も1割以下(8.2%)だった。調査結果の一部は、日経ビジネス2011年12月19日号特集「目指すは日本人上司ゼロ 新興国で勝つグローバル人材マネジメントの秘訣 」に掲載。調査の詳細(単純推計およびクロス集計ほか)は、同年12月20日発行の報告書「21世紀を勝ち抜く決め手 グローバル人材マネジメント」に収録した。


グローバル人材やグローバルリーダーの育成はこれからといったところだが、既にプログラムを持っている企業は、自社で独自に開発したり、海外の有名なビジネススクールと共同開発したりしている。例えば、三井物産は、米ハーバード大学経営大学院と共同で開発した。
マイケル・ポーターなど超一流の教授によるグローバルリーダー研修を実施
三井物産は2011年7月5日から2週間、米国ボストンにあるハーバードのキャンパスで、合宿を行った。幹部候補生30人(16人は本社採用の日本人、残りは三井物産の海外現地法人のトップ、戦略的パートナー企業のトップや役員)が、マイケル・ポーター教授をはじめとして、ハーバードでもトップ10%に入る超一流の教授による講義を受けた。講義と議論はすべて英語で行った。
「世界でいくつかのビジネススクールを回ったが、やるなら世界ナンバーワンと組んでグローバルリーダー研修を実施したかった」と、三井物産執行役員の石川博紳・人事総務部長は話す。三井物産には、80強の事業分野を抱えているが、「社員全員がリーダーでないと業態が持たない。だから、今後もいろいろな研修を作っていきたい」(石川部長)という。
今回行ったリーダー研修を通じて、石川部長は「当社の日本人社員が優秀で能力を発揮できることが分かった。要はどういう環境を与え、どう鍛えるかだ」と言う。三井物産は日本人社員のグローバル化に力を入れている。目標は、自社で研修を作り込むことだ。必要に応じて、相応しい教育機関を使っていく。
「ハーバードは、リベラルアーツを通してリーダーを養成する学校。ギリシャの修辞学や西洋の帰納法的なものを伝えている。ただし、日本人が直面しているのが、アジアだったり、南米やアフリカだったりする。そこでは、必ずしも西洋の論理性が通用しない」と石川部長は話す。だから、三井物産の取締役を務める野中郁次郎・一橋大学名誉教授の考え方などを研修に取り入れている。
今後の重点領域は成長市場。中国は間違いなく入る。そのほか、インド、インドネシア、ブラジル、アフリカなど。
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