「中国発 財新」

スト頻発の裏で変わる労使交渉

  • 財新メディア

>>バックナンバー

2012年2月21日(火)

1/4ページ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック
  • Facebookでシェアする 0

印刷ページ

労工的律師
 「新世紀」記者 王婧

労働争議が多発している中国・広東省で、労使間の交渉スタイルが変わり始めた。政府が介入せず、労働者の代表が企業と直接話し合う「集団交渉」が注目を集める。企業側は政府頼みの解決策は通用しない。現地の日系企業も対応が必須だ。

 昨年10月、広東省深圳市内にある電子機器・自動車大手BYDの工場と、日系精密大手シチズン向けのOEM(相手先ブランドによる生産)工場でストライキが発生した。2つの労働争議には今までにない特徴があった。政府や工会(*1)が介入せず、企業側と労働者側の集団交渉で決着が図られたのだ。

 その裏側では、ある特別な法律事務所――広東労維(ラオウェイ)弁護士事務所(労維所)が大きな役割を果たしていた。労働紛争を専門に手がけるプロ集団で、「労働者の代理人だけを務め、企業の代理人は引き受けない」ことをモットーにしている。

 この“労働者のための法律事務所”が代理人を務めた案件は、過去6年余りで3000件近くに上る。中国ではこの時期に労働紛争が急増し、「世界の工場」と呼ばれる珠江デルタ地区でも大規模ストライキが頻発した。そんな中、労維所は試行錯誤を繰り返しながら、集団交渉を通じた労働者の権利保護という新たなモデルを作り上げつつある。

今年1月に深圳市で起きた清掃作業員のデモ行進と、それを取り囲む警官隊
(写真:Imaginechina)

「団結こそ力なり」

 会議室のスクリーンに、気勢を上げるシチズンOEM工場の労働者たちが映し出された。続いて、整然とした集団交渉の映像。これは昨年12月25日、深圳市宝安区の労働者向けに行われた法律講座の模様だ。スクリーンに映ったストライキの様子を見た時、受講者たちは心持ち緊張した表情だった。彼らにとって、決起した労働者は「英雄」であると同時に、「こんなことをしたら公安に引っ張られるのでは」との不安があるからだ。

 この日受講した二十数人の平均年齢は約30歳。法律に関する基礎知識は乏しく、「三険一金(*2)」が何かさえ知らない。だが、労働者の「権利」については曖昧ながら認識しており、「政府」「弁護士」「ジャーナリスト」を味方につけるべきことも知っている。

 この日の講師を務めた労維所の何遠程(フーユエンチョン)は、シチズンOEM工場の労働者が実際に取った行動の「良い点」と「悪い点」を一つひとつ列挙しながら、「団結こそ力なり」という考え方を説いた。

*1=工会は日本の労働組合に相当するが、社会主義国の中国では共産党の統治機構の一部を成す「官製組合」の色彩が強い
*2=中国の社会保障制度の用語。「三険」は養老保険、医療保険、失業保険、「一金」は住宅積立金を意味する

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

コメント

参考度
お薦め度
投票結果

コメントを書く

コメント[0件]

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事