• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

終わりなきギリシャ救済劇が醸す「既視感」

緊急連載 ユーロ危機と欧州合衆 国の幻(6)

2012年2月24日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 2月21日早朝、ユーロ圏の財務大臣たちは、約13時間に及ぶマラソン会議の末、総額1300億ユーロ(13兆円) に上るギリシャへの緊急融資について合意した。EUがギリシャに資金を投入するのは、2010年5月に続いて2回目である。ギリシャ政府は、3月20日までに145億ユーロ(1兆4500億円)の借金を返せなければ破綻する。今回の決定によって、ギリシャは再び債務不履行から救われた。

ヘアカットをめぐって激論

 財務大臣たちが特に激しく議論したのは、民間投資家に対する債務の削減である。債務削減は、欧米ではしばしば「ヘアカット」と呼ばれる。ギリシャ国債を保有する銀行や保険会社は、元本の 53.5%を自主的に放棄するという条件を受諾した。利子も含めると、民間の債権者は本来受け取るべきだった金額の70%をあきらめることになる。

 現在ギリシャ政府の借金は3500億ユーロ(35兆円)だが、今回のヘアカットにより1070億ユーロ(10兆7000億円)減る。ギリシャの債務は現在、国内総生産(GDP)の161%。ユーロ圏諸国とIMFは、「史上最大規模のヘアカット」によって、同国の債務比率を2020年までに120.5%に減らすことを狙っている。債務比率がこの水準まで下がれば、ギリシャは外国の支援を受けなくても、自力で国債を売って、資金を調達できるというのが、EUの読みである。

 2011年7月の時点で銀行や保険会社は、「元本の21%をあきらめてもよい」とEUに通告していた。だがギリシャの債務比率がじりじり上昇したために、21%の削減では足りないことが判明。「ヘアカット」の比率は、結局2倍以上に引き上げられた。ギリシャに投資した金融機関には、厳しい事態だ。これらの金融機関は自発的に債権を放棄したことになるので、債務者が破綻した場合のリスクをカバーする一種の保険、CDS(クレディット・ディフォルト・スワップ)から「保険金」を受け取ることもできない。泣き面に蜂である。

 しかし現在のユーロ圏では、ギリシャを破綻から救うという「公共の利益」が優先される。ヘアカットを行なわなければ、ギリシャは2024年までに、3371億ユーロ (33兆7100億円)もの借金を返さなくてはならないところだった。

 ギリシャの経済情勢は悪化する一方だ。欧州統計局の推計によると、2011年のギリシャの国内総生産(GDP)は5.5%減少した。同国では2008年以来、4年連続でマイナス成長が続いている。パパデモス首相は2月12日に国会で演説し、「我が国は崩壊の一歩手前にある」と国民に訴えた。この国が、天文学的な債務を自力で返済できる可能性は非常に低いと言わなければならない。

 ヘアカットについて、2月下旬になって、 債権者たちの間で大きな論争が持ち上がった。欧州中央銀行 (ECB)のマリオ・ドラギ総裁が、「ECBがギリシャ国債のヘアカットによって、損失を受けることは許されない」と言い出したのだ。ギリシャの国債を買ったのは、銀行や保険会社など民間の投資家だけではない。ECBとユーロ圏の中央銀行も、550億ユーロ(5兆5000億円)相当の国債を保有している。ドラギ氏によると、ギリシャ政府に対する債権の回収を、ECBなどの中央銀行が一部でもあきらめることは、「中央銀行による加盟国政府に対する融資」に相当する。こうした行為は、条約で禁じられている。

コメント0

「熊谷徹のヨーロッパ通信」のバックナンバー

一覧

「終わりなきギリシャ救済劇が醸す「既視感」」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

リストラなどつらい経験もありましたが、多くの山に登ったことで、別の景色が見えやすくなりました。

吉田 秀俊 VAIO社長