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「貧困地区」指定をなぜか熱烈祝賀する県政府

一度かぶったら脱ぎたくない「恥ずかしい帽子」

2012年3月9日(金)

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 2012年1月30日、「“新邵県(しんしょうけん)”が“国家集中連片特困地区(国家広域特殊困難地区、以下「特殊困難地区」)”に組み入れられることに成功し、新時代の国家貧困救済の主戦場となったことを熱烈に祝賀する 中国共産党新邵県委員会、新邵人民政府 宣伝部」と書かれた電光掲示板の画像が“微博(ミニブログ)”に投稿された。

 特殊困難地区の国家指定を受けることは本来なら恥ずべきことのはずだが、なぜかそれをひけらかすかのごとく電光掲示板に“熱烈祝賀”と大書して歓喜するのは理解に苦しむ話である。これに違和感を覚えたネットユーザーたちはこの画像を次々と転載したので、「貧困地区指定を祝賀する新邵県」は瞬く間に全国に知れ渡ることとなった。

 新邵県は湖南省中部にある“邵陽市”の管轄下にあり、面積は1763平方キロメートル<注1>、人口は約100万人である。新邵県は雪峰山脈の東側に位置し、山地と丘陵が面積の大部分を占め、平原の面積はわずか15%という貧しい農村地帯である。その新邵県が国家によって「特殊困難地区」に指定されたことを祝賀するというのが電光掲示板の趣旨であり、そこには祝賀表明の当事者として新邵県の共産党委員会ならびに人民政府の名前が明確に記されていたのである。

<注1>日本の都道府県で面積が最小の香川県(1876平方キロメートル)よりも113平方キロメートル小さい。

貧困救済の対象は日本の人口と同じ

 ところで、2010年に日本を抜いて世界第二の経済大国となった中国だが、国民の貧富の差は経済発展に伴って年々拡大しており、国内には依然として“国家級貧困県(国家指定貧困県)”と呼ばれる貧困地域が多数存在している。“国家級貧困県”は国家が貧困地区を救済することにより貧困からの脱出を支援する目的で“県”<注2>を単位として一定の基準により選別・指定したものだが、2012年の現時点では全国に592カ所の“国家級貧困県”が存在する。

<注2>中国の行政単位では“市”の下に“県”があり、“県”の下に“郷”あるいは“鎮”がある。

 その基本概念は“温飽問題(衣食が満ち足りているかどうかの問題)”の解決であり、これらの地域では“三靠(三つの依存)”がまだ全面的に解決されていないことにある。“三靠”とは即ち、(1)食糧は政府支援に依存、(2)支出は借金に依存、(3)生活費は補助金に依存を意味する。“国家級貧困県”は中国の西北部、西南部、東部の旧革命根拠地、少数民族地区、国境地帯、辺鄙な山地区域にあり、様々な要因から今なお“三靠”から脱け出せていないのである。

 2011年11月29日に開催された“中央扶貧開発工作会議”<注3>では、「農民1人当たり平均年間純収入」に準拠した貧困救済基準を2010年の1274元(約1万6000円)から81%引き上げて2300元(約2万9000円)にすることを決定した。この結果、貧困救済の対象となる農村人口は、2010年の2688万人(全農村人口の2.8%)から1億2800万人(全農村人口の13.4%)に増大した。中国の人口は2011年末で13億4735万人であるから、今回の基準引き上げによって貧困救済の対象となった農村人口は全人口の約1割に相当する。もっと端的に言えば日本の総人口1億2800万人と同じ人口が中国では貧困救済の対象人口なのである。これでは「世界第二の経済大国」とはおこがましい限りだが、それが中国の実情である。

<注3>中国共産党中央および国務院が開催する最高レベルの貧困救済開発活動に関する会議。

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「「貧困地区」指定をなぜか熱烈祝賀する県政府」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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