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治安維持費が軍事費を上回る中国社会

海外メディアの報道に反駁も、その実態は

2012年3月16日(金)

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 中国の国会に相当する“全国人民代表大会(略称:“全人代”)”の第11期第5回会議が2012年3月5日から14日まで開催された。その初日の5日に中国政府“財政部(日本の「財務省」に相当)”は全人代に対して「2011年中央と地方の予算執行状況および2012年中央と地方の予算案に関する報告」(以下「2011/2012報告」)を提出して審議を要請した。

 同日に公表された2011/2012報告の内容を検討した海外メディアは、2012年の全国(中央+地方)予算案の中で、国内の治安維持などに充てる“公共安全費”の7017億6300万元(約9兆1230億円)が“国防費”の6702億7400万元(約8兆7140億円)を上回っていることに注目し、中国政府が各地で頻発する住民の抗議行動や少数民族による分離・独立運動などの社会矛盾の激増を懸念し、その鎮静化に注力していることの現れであると報じた。

「事実と異なる」と反駁

 2012年の“公共安全費”予算が7017億6300万元ということは、1日当たり19億2270万元(約250億円)の計算になる。国内の治安維持を主たる目的とする“公共安全費”が軍事を目的とする“国防費”を上回るのはどう考えても正常な姿とは思えない。そうした海外メディアの報道に対して、3月7日付の広州紙「南方都市報」はこうした海外メディア報道を紹介すると同時に財政部関係者が「事実と異なる」と反駁した旨を次のよう述べたと報じた。

 「公共安全のための支出には、公共衛生、公共交通、建築安全など多くの領域が含まれており、それを一概に“維穏費(治安維持費)と言うことはできない。例えば、末端の監督管理部門における食品の検査測定能力の強化や食品の安全保障関連事業の促進といったものもこの項目に計上される。外国メディアは故意に実態を無視して大げさに報じている。米国やフランスのみならず、全世界の大多数の国はどこも公共安全のための支出が軍事費を上回っており、中国の公共安全費が国防費をちょっと上回ったと言ってもこれは正常な現象である」

 中国政府の財政支出に関する説明によれば、“公共安全”に関する支出とは、「政府が社会の公共安全を維持するための支出を指し、武装警察、“公安(警察)”、国家安全、検察、“法院(裁判所)”、司法行政、監獄、“労教(労働矯正)”、“国家保密(国家機密漏えい防止)”、“緝私警察(密輸・密売取締官)”などの人員の給与待遇および機関の事務経費を含む」とある。

 ちなみに、“国防”に関する支出とは、「政府が国防のために用いる支出を指し、現役部隊、予備役部隊、民兵、国防科学研究事業、特殊プロジェクト、国防のための動員などの方面の支出を含む」とあるが、端的に言えば中国共産党の軍隊である“中国人民解放軍”に関わる支出を意味する。

 そこで、過去に溯って中国の“公共安全費”の推移を見てみると、国家予算の中で“公共安全費”が“国防費”を金額で上回ったのは、2009年が最初で、2011年、今年(2012年)と都合3回であり、実績では2010年に既に“公共安全費”が“国防費”を上回っていたのである。すなわち、【表1】を参照願いたい。

【表1】中国の公共安全費と国防費の推移

  •  
  • (単位:億元)

  公共安全費 国防費
  予算額 実績額 予算額 実績額
2008年 4097 4060 4178 4179
2009年 4870 4744 4807 4951
2010年 5140 5518 5321 5333
2011年 6244 6293 6012 6027
2012年 7018 - 6703 -

出所)財政部「全国公共財政支出決算表」(2008~2010年)および 「全国公共財政支出予算安排状況」(2011~2012年)から筆者作成

 2008年には国防費が予算額・実績額ともに公共安全費を上回っていた。2009年になると予算段階で公共安全費が国防費を上回ったが、実績では従来通り国防費が公共安全費を超えた。これを反映したかのごとく、2010年は予算段階で国防費が公共安全費を上回ったが、実績では公共安全費が国防費を逆転し、185億元(当時のレートで約2775億円)もの差を付けた。そして、2011年、2012年と予算段階では公共安全費が国防費を上回り、2011年の実績も同様に公共安全費が国防費を上回っており、恐らく2012年の実績も同様な結果になるものと思われる。<注1>

<注1>各年度の「全国公共財政支出決算表」は翌年の7月末に公表されて確定数字となる。【表1】の2011年実績額は2012年3月に発表された「2012年全国公共財政支出予想安排状況」に記載された2011年実績を採用しており、上記決算表による最終数字ではない。

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「治安維持費が軍事費を上回る中国社会」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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