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高騰するスペイン国債の利回り、選挙を控えるギリシャは右傾化

「ユーロ危機は沈静化した」との発言に油断は禁物

2012年4月19日(木)

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 最近、意外に思うことがある。日本に住んでいる知人から「ユーロ危機は沈静化したようですね」という声をよく聞くのだ。今年3月以降、欧州の債務危機に関するニュースが減ったためだろう。その根拠として、イタリアのマリオ・モンティ首相が今年3月に日本を訪れて、「ユーロ危機は、ほぼ終わりました」と発言したことを挙げる人もいる。

モンティ首相のセールス・トー ク

 モンティ首相は東京で「新しく導入される欧州金融安定メカニズム(ESM)と財政規律に関する協定によって、ユーロ危機はほとんど克服されました」と語った。「ギリシャはこれまでEUの要求を完全には満たしてきませんでした。しかし、改善している部分もあります。これはユーロにとって、成果と言えます」。

 私は、モンティ氏の楽観的な発言を鵜呑みにしてはならないと思う。彼が日本に行った目的の一つは、ESMに出資してくれる投資家を見つけることだったからである。実際に彼は「日本の投資家が去年以来、債務危機についての懸念を強めて、ユーロ圏加盟国の国債の大半を手放したことはよく理解できます」と述べると同時に、「しかしそのような懸念はもはや無用です」と語った。モンティ氏の楽観論は、「もう危機は去りました。ユーロ圏に投資しても大丈夫ですよ」という印象を日本人に与え、ESMへの投資意欲をそそるためのセールス・トークだ。

 私はモンティ氏の発言を聞いて、去年「福島原発事故は収束した」と語った野田佳彦首相の発言を思い出した。「原発事故が終わった」とはとても言えないのと同じく、「ユーロ危機はほぼ終わった」と断言するのもあまりにも早過ぎる。

ESM限度額の大幅引き上げ

 例えば私は、ESMの融資限度額が今年3月に大幅に引き上げられたこと自体が、欧州諸国の間でユーロ危機に対する警戒が解けていないことの表れと見ている。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は3月26日、次のことに同意した――今年7月に創設するESMの融資限度額を、一時的に7000億ユーロ(77兆円、1ユーロ=110円換算)に引き上げる。欧州最大の経済パワーであるドイツは、この基金のために最も高額の保証を迫られる。このためメルケル氏はこれまでESMの限度額を5000億ユーロ(55兆円)に抑えるべきだと主張していた。

 しかし欧州委員会と南欧諸国は、「債務危機が将来、他の国に飛び火するのを防ぐために、ESMの融資限度額を引き上げるべきだ」と反論。現行の緊急融資制度である欧州金融安定基金(EFSF)がアイルランド、ギリシャ、ポルトガルが危険な状態に陥った時に備えて準備している2000億ユーロ(22兆円)を、ESMの限度額5000億ユーロに足して、少なくとも今年7月から来年半ばまでは融資の最高限度額を7000億ユーロにすることを提案した。

 EUのある官僚は、次のように説明する。「ESMは核兵器のようなものだ。核兵器は、爆発力が大きければ大きいほど抑止力が高まり、実際に使用する危険は小さくなる。ESMに巨額の融資余力を与えれば、投機筋は対抗できないと考える。特定の国が破綻するシナリオで相場を張りにくくなる。つまり、融資限度額が大きければ大きいほど、ESMが実際に融資を実行する可能性は小さくなる」。

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「高騰するスペイン国債の利回り、選挙を控えるギリシャは右傾化」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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