接戦要因は三つ:両極化、失業、人種問題
アメリカ大統領選まで4カ月を切った。これまで、「現職有利」といったムードがなんとなくただよっていた。これが7月に入って一変した。オバマ大統領とロムニー共和党大統領候補の戦いが互角の様相を呈してきたのだ。
その理由は三つある。一つはアメリカが、保守派とリベラル派に完全に両極化してしまっていること。第二は、経済の先行きに対する国民の不安感が高まっていること。オバマ大統領が再選するための最も重要な要因である雇用情勢に陰りが見えてきた。
そして三つ目は、黒人大統領に2期8年やらせることに対する白人保守派の反発だ。これまで底辺で蠢いていた人種間の亀裂がここにきて一気に噴出した。黒人大統領に対する反発が「金持ちで頼りない、しかもモルモン教徒だが、今や黒人に対抗する唯一の白人」(ロサンゼルス近郊サウスパサデナ在住の中道派共和党員、パトリック・グリーソン氏)への積極的な支持に転嫁しだした。まさに「Nothing but Obama」(オバマ以外なら誰でもいい)という雰囲気が白人層にじわじわと広がっている。(“Fasten Your Seat Belts: Polarization, Weak Economy Forecast Very Close Election,” Alan I. Abramowitz, Sabato's Crystal Ball, 7/12/2012)
白人保守派とリベラル派との亀裂はオバマ氏が大統領に就任した時からあった。オバマ大統領は就任演説で、自らの政権はこの亀裂を解消するためのものであり、そのシンボルとまで言い切った。ところが3年8カ月たってその亀裂は、当時よりも広がってしまっている。そのことをオバマ大統領自身が認めている。
オバマ大統領は7月15日放映のCBSテレビとのインタビューでこう語った。「『過去4年間を振り返って、何にいちばん苛立ちを感じるか』と聞かれたら、何と答えるか。仕事がきついことではないし、気の遠くなるような数の政策決定でもない。アメリカの一般市民の品位と常識とをなんとか政治に反映させようとしてきたのに、私はワシントンの空気を少しも変えることができなかった。そこに苛立っているのだ」。(“Obama: Washington feels as broken as it did four years ago,”Aamer Madhani, USA Today, 7/15/2012)
両候補の激しい誹謗中傷合戦が両極化に拍車かける
両極化の火に油を注いでいるのが、オバマ大統領とロムニー候補による激しい誹謗中傷合戦だ。
発端は、オバマ陣営が激戦州において、テレビスポット広告を流し始めたことだ。「投資会社を経営していた時に多くの雇用を生み出した」とするロムニー候補の主張に照準を定め、「ロムニーは雇用創出に失敗していた」と批判した。
「ロムニーは、公表している期間よりも長く投資会社の経営に携り、企業の閉鎖や生産工場の海外移転に手を貸していた。これは重罪以外の何者でもない」と糾弾。さらに、オバマ陣営は追い打ちをかけるように、ロムニー候補の納税報告の不備を指摘し、この点についての疑惑を晴らすように求めている。
この中傷攻撃に業を煮やしたロムニー候補は7月13日、主要テレビに出演し、「オバマ氏は大統領の品位を汚している。事実を歪曲した中傷について大統領に謝罪を求める」と猛反発した。これに対してオバマ大統領は「ロムニー氏はこれらの疑問に答えねばならない」と発言。謝罪要求には応じる気配はない。
いただいたコメント
コメントを書く