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王子製紙の排水管敷設への抗議活動は、反日デモではない

中国で高まる民主化リスク

2012年8月1日(水)

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 ちょうど、中国・広州で取材中の7月28日、江蘇省の南通市啓東市で激しいデモがおきた。参加者は1万人規模。このデモは死者が出ても不思議ではない。実際、デモ参加者2~4人が警察の暴行で死んだという噂が流れている。

 もちろん、当局はガセネタだと否定している。しかし、ツイッターで流れてきた、市民が偶然建物の中からスマートフォンで撮影したらしい映像には、上半身裸の青年が何十人もの警官に取り囲まれ、袋だたきにされ、倒れて動かなくなった様子が映っている。

 広州の取材の手がはなせず、現場には行けなかったが、恐ろしいほど臨場感のある写真や映像が次々とツイッターと流れてくるせいで、現場にいなくてもデモ隊の怒りと興奮に感染した。そう知り合いにメールすると、「でもこのデモは日本の企業をターゲットにしているんですよ」と非難めいた返答が来た。

 違う、と思う。これを尖閣諸島問題で反日感情が盛り上がってきたところのガス抜きで行われた、いわゆる「反日デモ」と見るのは、当局の情報操作に乗せられることになるだろう。少なくとも2005年に起きた「反日デモ」を現場で取材した身としては、違うと感じている。確かめるためにも、今回も現場に行けばよかったのだけれど、地方で取材していたので、気付いたときはもう遅かった。

 では何かというと、これは「プチ民主化デモ」といっていいと思う。あるいは「もはや、プチ革命?」くらいの見出しをつけたい。そして、中国進出、あるいは進出予定の日系企業には、こう言いたい。これからの中国の最大のカントリーリスクは、反日感情ではなく、“民意”あるいは“民主化”であろう、と。

1990年代生まれの若者たちがネットで呼びかけ

 もう、日本メディアでもさんざん報道されているが、改めてまとめておくと、このデモの目的は、長江河口に位置する日系企業の王子製紙南通工場の工場排水をわざわざ100キロ以上離れた啓東市が位置する黄海沿海に廃棄するための排水管敷設計画を阻止することである。

 90后(1990年代生まれ)の学生ら若者たちが計画し、中国のマイクロブログ・微博を通じて、「私たちの故郷・啓東を守るため、力をかしてください」と、28~30日の3日にわたるデモ参加を呼びかけた。25日の時点で、すでに新浪微博の公益スレッドにのっていた。

 この工場は、王子製紙と南通市政府の契約によって、投資額2000億円で2007年に建設が開始され、2010年に第一期計画分の生産が開始された。2009年ごろに今後増える予定の工場排水を地元の長江河口ではなく、黄海に廃棄するため直径1.6メートルの排水管を敷設する計画を聞きつけた一部市民の間で、工場排水および排水管建設のアセスメント資料の閲覧請求などが行ったが、「排水はきれいだ」の一点張りで市側は誠意ある対応をしてこなかったという。デモ計画とその参加呼びかけが微博で拡散された26日、市政府はパイプライン敷設の一時停止を発表し、違法デモに参加しないよう各種メディアを通じて呼びかけたが、市民たちはそれを当局のごまかしと警戒し、デモは決行された。

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「王子製紙の排水管敷設への抗議活動は、反日デモではない」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官