• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

ノーベル賞経済学者とエストニア大統領の緊縮財政論争(後編)

緊縮に堪えユーロに加盟~クローンでは投資家の信頼を得られない

  • Bloomberg Businessweek

バックナンバー

2012年8月17日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

ルールを守ることを非難されるいわれはない

 旧ソ連から独立した後、エストニアは西側の一員となることに力を注いできた。NATO(北大西洋条約機構)や有志連合(米国とともにイラク戦争に参加した国々)、EUに加わった。独立後、初代首相となったマルト・ラール氏は、よくこんな話をする。首相になるまでに読んだ経済関連の本は1冊だけで、それはミルトン・フリードマンの「選択の自由-自立社会への挑戦(Free to Choose)」だった。

 エストニアは開かれた効率的な国で、通信環境も整備されている。世界銀行は、事業活動が容易な国を並べたランキングにおいて、エストニアを183カ国中24位に位置づけている。エストニア語はフィンランド語に近く、フィンランドとスェーデンがエストニアの2大貿易相手国である。イルベス大統領はカドリオルグの官邸に、ある地図を掲げている。EU加盟国を競争力の高い順に色分けしたものだ。エストニアは第2グループ。ドイツや英国とともに、トップ集団を走る北欧諸国に続く高い競争力を誇っている。

 だが、エストニアの人々は、外国人が自分たちのことをわざわざ理解しようとするはずはないと考えている。閣僚は、こう不平を述べる。我々は懸命に努力している。にもかかわらず、「東欧」、悪くすると「辺境」などというレッテルを貼られて、その他の国々と10羽一絡げにされる。欧州危機以降、エストニアの人々の間では、自分たちを正しく理解してもらおうという前向きの姿勢が再び薄れてきている。

 イルベス大統領は欧州を2つのグループに分ける。ルールを守る国と守らない国だ。さらに、欧州で新種のポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭していることに懸念を抱き始めている。つまり、ルールを守る国の国民が、ルールを守らなかった国を助けることに後ろ向きになっていることだ。同大統領は例としてフィンランドとスロバキアを挙げる。フィンランドでは、救済拒否を掲げる「真のフィンランド人党」が選挙で大躍進した。スロバキアでは昨年、欧州救済基金を支持していた首相が信任投票で敗れ、辞任した。

 エストニアは、彼らいわく、常にルールを守ってきた。2009年には苦汁を飲んでルールを死守した。イルベス大統領によれば、エストニアの平均給与はギリシャの最低賃金より10%低い。年金もはるかに少なく、公務員の定年は15年も先だ。「国民が苛立ちを感じても不思議はないだろう」と同大統領は訴える。

 クルーグマン氏に対するイルベス大統領の激しい反発の根っこには、この苛立ちと同大統領自身の米国での若き日の体験がある。同大統領は、西欧人の話を聞いて、恩着せがましさやこうした小国を一緒くたに扱うニュアンスを聞き分けられるという。大統領は「英語ができて良かったと私が思うのはこんな時だ」と皮肉まじりに語る。

 筆者がイルベス大統領と話した日の夜、同大統領はコンサートと歓迎会を開催した。エストニアの海外駐在員および海外投資家が一堂に会する国際交流会の一環だ。エストニアはイスラエルやアイルランドと同様、国外に移住した者を通じて海外投資を引き付ける方法を探っている。大統領は歓迎会で筆者のところに来て、カドリオルグで言い忘れたことがあると言った。大統領によれば、「840字」で一生分の学術論争をしたそうだ。字数はもう少し多かったと思うが、それは、さしたる問題ではない。

コメント0

「Bloomberg Businessweek」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

意外なことに、伝統的な観光地が 訪日客の誘致に失敗するケースも 少なからず存在する。

高坂 晶子 日本総合研究所調査部主任研究員