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ECBの国債無制限買い取りで決定的になったユーロ圏の亀裂

インフレを懸念するドイツ連銀は反対姿勢を貫く

2012年9月12日(水)

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 2012年9月6日という日は、ヨーロッパの経済史に残るだろう。この日、欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は、債務危機に苦しむユーロ圏加盟国の国債を無制限に買い取ることを正式に発表した。

 この決定は、ユーロ危機に対するECBの姿勢が大きく変わったことを意味する。これまでECBの正式なユーロ危機対策は、クレジット・クランチ(銀行による貸し渋り) を防ぐための銀行支援に限られていた。ECBは域内の金融機関に対して、去年12月に4890億ユーロ(48兆9000億円、1ユーロ=100円換算)、今年3月に5295億ユーロ(52兆9500億円)もの低利資金を供給した。だがECBが市場に供給した巨額の流動性は、焼け石に水だった。

 ギリシャの過重債務が表面化してからほぼ3年経っても、ユーロ危機が一向に終息の兆しを見せないことから、ECBはいよいよ国債買い取りという「切り札」によって、全面的に介入することを決めた。

「ユーロは後戻りしない」

 9月6日、ドラギ氏はフランクフルト・アム・マインにあるECBで開かれた理事会の直後、記者団の前に立った。彼は8月2日にすでに国債買い取りの方針を打ち出していたが、今回はそのディテールを明らかにした。

 ドラギ氏は記者会見で、Outright Monetary Transaction(OMT)と呼ぶ国債買い取りオペレーションの正当性を強調した。「リスボン条約の第123条が禁止しているのは、ECBがユーロ圏加盟国から国債を直接買い取ることだけだ。ECBが、国債を持っている投資家からマーケットにおいて国債を買い取ることは、ECBの 定款の第18条が許しているオペレーションだ」と述べ、ECBに付与されている権限を逸脱していないと断言した。総裁は、OMTに関するコメントを「ユーロは後戻りしない(the euro is irreversible)」という言葉で締めくくった。

 ドラギ氏がこの言葉に込めたのは、「ユーロが廃止されることはあり得ない」というマーケットへのメッセージである。

 ユーロ危機の基本的なメカニズムは、投資家が「国債に投資した金が返ってこなくなるのではないか」と考えることから、債務過重国の国債の利回りが高騰し、これらの国の政府がマーケットで借金をできなくなることだ。このため借金に依存する国が、債務不履行(デフォルト)に陥るリスクが増大する。

 ドラギ氏は、この問題の根本的な原因は、投資家が「ユーロがなくなるかもしれない」という「根拠のない恐れ」を抱いていることだと指摘する。つまり彼は、「ヨーロッパの通貨政策を司るECBはいかなるコストを払っても、ユーロを防衛する」という固い意志をマーケットに対して示したのである。

 前回お伝えしたように、ドラギ氏は7月26日にロンドンで行なった講演で、「ECBは、ユーロを維持するためには、与えられた権限の範囲で、必要とあればあらゆる措置を取る。私の言うことを信じてほしい。ECBが取る措置は、十分な効果を持つだろう」と述べていた。その「措置」が、国債の無制限買い取りだったのである。

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「ECBの国債無制限買い取りで決定的になったユーロ圏の亀裂」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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