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中国の「俺様地図」にビザスタンプを押していいか

領土拡張の野心をあからさまにした新パスポートへの対応

2012年12月5日(水)

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 今年5月15日から中国ではICチップの入った新しいパスポートが発行され始めた。それが徐々に普及しはじめ、秋ごろからいろいろ物議をかもしている。

 日本メディアでも既報だが、まず、そのパスポートの出入国・ビザスタンプを押すところに薄く印刷されている中国地図が、中国だけで通用する「俺様地図」なのである。

各国がビザスタンプ捺印を拒否

 具体的に言えば、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾などが領有権を主張しているスプラトリー諸島、パラセル諸島を含む南シナ海の全域を囲う「U字線(中国語の九段線)」を自国領海線としてわざわざ入れてある。さらにインドとの国境の係争地域であるアルナチャル・プラデシュ州(インド側実効支配地域)とアクサイチン(中国側実効支配地域)ともに、中国領土として描かれている。

 台湾は当然のように領海線の内側にあり、各ページに印刷されている中国の有名な景勝地イラストの中に、台湾の日月潭(南投県)や清水断崖(花蓮県)も「中国の景勝地」として、江蘇省の蘇州園林や江西省の井岡山などと並べられている。

 しかも「清水断崖」と銘打ったイラストは間違いで、「あれは哈巴狗(パグ岩)と睡美人(美人岩)。緑島(台東県)の景勝地」と台湾のテレビ記者から、国務院台湾事務弁公室の定例記者会見で突っ込まれている。このとき報道官は「初耳でした」と答弁。台湾事務担当報道官が台湾の地名についてほとんど無知なこともそうだが、台湾の景勝地の地名もうろ覚えの中国がいくら台湾は自分の領土と主張しても、怒りよりさきに冷笑がわいてくるというものだ。

 この新パスポートの俺様地図については、台湾の大陸委員会が「争議を惹起し、現状を変えようという魂胆。両岸(中台)のお互いの信頼を傷つける」と厳正なる抗議声明を発表。またベトナムとフィリピンも「新パスポートにビザスタンプを押したら、中国の主張を認めることになる」と新パスポートへのビザスタンプ捺印を拒否。さすが入国拒否する度胸はなく、別の紙にビザスタンプを押して、それをパスポートに挟めば入国できるのだが、新パスポートの撤収を強く主張している。インドはさらに辛らつで、ビザスタンプのデザインを係争地域もインド領とするインド版「俺様地図」を中国「俺様地図」の上にバンと押すことにした。

 南シナ海の領有権争いに直接かかわっていないが、インドネシアのナタレガワ外相も「中国の誠意に欠く行動。周辺国の領土問題に対する反応を試すやり方」と非難。米国は中国新パスポートを一応は受け入れているものの、米国務省のヌランド報道官は「新パスポートの上に米入国ビザのスタンプが押されても、中国の主張する南シナ海領有権は承認しているわけではない」「パスポートのデザインを決めるのはそれぞれの国の自由ではあるが、グローバルスタンダードにあわせる必要がある」「一部の国は中国が挑発していると考えるだろう」「こんなやり方、領土問題の解決の助けには全くならない」と思いっきり嫌味を言っている。

コメント10件コメント/レビュー

日本のパスポートは、154ヶ国でビザスタンプが不要なので、どのように地図をデザインしても、154ヶ国では文句を言われずに通過できます。対して中国はビザスタンプ不要は33か国。100ヶ国以上でビザスタンプが必要。これでは軋轢を生みますね。これが日本と中国の現状の国力の差です。(2012/12/05)

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「中国の「俺様地図」にビザスタンプを押していいか」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

日本のパスポートは、154ヶ国でビザスタンプが不要なので、どのように地図をデザインしても、154ヶ国では文句を言われずに通過できます。対して中国はビザスタンプ不要は33か国。100ヶ国以上でビザスタンプが必要。これでは軋轢を生みますね。これが日本と中国の現状の国力の差です。(2012/12/05)

「日本は政府として、まだ何もコメントしていない」やっぱり何が重要か分かっていないようです。直ぐ消えて欲しい政府ですね。(2012/12/05)

19世紀的帝国主義を奉じる危険な隣国に対しては、「日中友好」「冷静な対応」という名の弱腰外交を主張する一方で、領土を守るために国防力を強化しようとする政党に対してありとあらゆる批判をする日本の左翼マスコミに、福島さんのこの文章をぜひ読ませたいです。日本のマスコミは中国にずいぶん支局員を置いているはずですが、このような歴史的事実が報道されることはほとんどありません。マスコミのこのようないびつな姿勢が日本の国防力強化の試みを弱め、結果として尖閣その他の領土を中国とそれ以外の隣国に奪われるのではと心配になります。(2012/12/05)

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