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「南方週末」が新政権に投げたエッジボール

3歩進んで2歩下がる中国メディアの闘争

2013年1月16日(水)

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 少々遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。2013年も当コラムをよろしくお願いいたします。

 ごあいさつが遅れたのは、別件の取材で年末年始は中国で過ごしてきたからだ。年末を広州中心に南方をめぐり、大晦日から新年にかけては北京を中心に動いていた。

 ところで、私が中国滞在中に興味深いメディア事件が発生した。日本ではもうかなり報道されているが、「南週事件」とも呼ばれている広東省地元週刊紙「南方週末」の「新年祝辞社説差し替え事件」である。

 この差し替えに抵抗しストライキする記者たち対し、同業者や著名人や知識人たちが次々「声援」を送り、また愛読者たち数百人が新聞社前で抗議デモを行い、民主化活動家2人が国家政権転覆扇動罪容疑などで拘束されたことはすでに報道されている通りである。南方週末は10日号が無事発行され「正常運転」に戻っているが、まだメディア界では事件の残り火がくすぶっている。

 ちょうど私が広州を離れたのちに発生した事件で、残念ながら現場取材はできなかった。最近の私は「事件の神様」にあまり愛されていない。

 ただ微博などを通じて、事件の顛末が事細かに流れ、遠方にいる人でも、事件の全貌がほぼわかるようになっている。南方週末や新京報の顔見知りの記者たちが、唇をかみしめながら妥協しつつも、それでも言論・報道の自由への期待を失わずにいる様子が想像できた。この事件の全貌を改めて振り返り、中国の報道の自由への道のりにおける位置づけを考えてみたい。

事前検閲の上にさらなる紙面修正要求

 事件の流れを改めて整理しておこう。

 問題の「新年祝辞記事」が掲載されたのは1月3日号紙面だ。当初は「中国の夢、憲政の夢」とタイトルで、「憲政を実現することこそ、自由で強大な国家を建設するという中国の夢を実現することである」と訴える内容だった。この祝辞記事を含む、新年特集号(3日号)については、12月24日から広東省宣伝部当局の厳しい事前検閲を経て、そのテーマ、内容や表現は二転、三転して練り上げられた。祝辞記事は、中国が憲政の夢を実現しつつあるというポジティブな論調になった。

 編集部は1日午前3時までかけて新聞を作り上げ、正月はゆっくりと休めるはずだった。担当編集記者5人はすでに3日連続の徹夜だった。ところがゆっくり休めるはずの1日夕方に黄燦編集長と伍小峰副編集長が省宣伝部に呼び出される。そして祝辞記事を含む大幅な紙面修正を要求されたのだった。

 伍副編集長はこのとき、ブチ切れたそうである。宣伝部の事前検閲ですでに修正に修正を重ねて3日徹夜でやっと作り上げた紙面にダメ出しされれば、何のための事前検閲か。

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「「南方週末」が新政権に投げたエッジボール」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官