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「福祉拡大公約は守る」~朴大統領の公約の影で自殺する福祉公務員

2013年3月27日(水)

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 朴槿恵大統領が就任して1カ月がたった。国民年金廃止運動騒ぎに福祉政策の財源問題、北朝鮮による挑発、銀行と放送局に対するサイバーテロなどで毎日が騒がしく、同大統領が就任して1年はたった気がするほどだ。

 朴大統領は、「雇用の拡大」と、基礎年金や育児手当をより充実させた「死角のない福祉国家」に焦点を当てている。その最前線に立つ福祉担当地方公務員が2013年1~3月の間に、3人も自殺した。仕事が多すぎることを苦にした、いわゆる「過労自殺」である。

 1月31日、ソウル市のベッドタウンである龍仁(ヨンイン)市の市庁傘下にある住民センター(町役場)に勤める29歳の福祉担当公務員が自殺した。

 2月26日、ソウルから近い城南(ソンナム)市傘下にある住民センターの38歳の福祉担当公務員が「仕事が多すぎてつらい」と遺書を残して自殺した。5月に結婚する予定の女性だった。

 3月19日には、蔚山(ウルサン)市中区役所傘下にある住民センターで働く36歳の福祉担当公務員が自殺した。地域福祉センターに長年勤務していたこの男性は、公務員試験に合格し、2013年1月に福祉担当公務員に就いたばかりだった。

 彼は遺書に、過労の苦しみを次のようにつづっていた。「業務ストレスが多すぎる。『先に死んだ2 人(福祉担当公務員)は弱くてだめな人間だから自殺した』と思っている人に、僕の死をもって、この仕事は本当に大変だと知ってもらいたい。誰もが『時間がたてばよくなるから耐えろ』と言うが、私は人間なので、最小限の尊重と待遇を要求するのだ。公共組織のいちばん末端で、数々の指示と命令に従うしかない付属品として耐えることは、怪物と戦うよりつらかった」。

憧れの公務員の厳しい現実

 彼は2月だけで、育児手当の受付と審査、約1500件を担当した。さらに、低所得層の学費支援受付と審査、約300件が重なった。これらを処理するため、毎日深夜2時まで働き、週末も出勤したという。家族や友達に「仕事が多すぎて大変だ」と悩みを打ち明けても、「それでも公務員だからいいじゃないか。いつクビになるかわからない会社員よりマシではないか」と言われたという。自分のつらさをわかってもらえないことに悩んでいたという証言もある。

 就職難が深刻化し、失業率の高い韓国で、公務員は医者、弁護士と並んで最も人気の高い職業である。定年(定年は地位に応じて57~60歳)まで働けるし、リストラになることもなく安定しているのが理由だ。2012年度の公務員採用試験は、倍率が150倍を超えて大きな話題になった。福祉担当公務員は社会福祉士の資格を取得した人しか応募できないため通常の公務員試験よりも倍率が低いが、それでも17倍だった。

 競争を勝ち抜いて憧れの公務員になったが、現実は厳しすぎた。

 自殺した3人に共通しているのは、9級福祉公務員(最も末端の公務員)で、休日もなく、毎晩夜勤しても業務は増えるばかりだったということ。1人で基礎生活(生活保護者、貧困家庭に支給する補助金)受給者だけでなく、障害手当や老人基礎年金の受給者の申請受付から審査・支給まですべて担当していた。その数は合計で平均1000人に上る。

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「「福祉拡大公約は守る」~朴大統領の公約の影で自殺する福祉公務員」の著者

趙 章恩

趙 章恩(ちょう・ちゃんうん)

ITジャーナリスト

研究者、ジャーナリスト。小学校~高校まで東京で育つ。ソウルの梨花女子大学卒業。東京大学学際情報学府博士課程に在学。日経新聞「ネット時評」、日経パソコン「Korea on the web」などを連載。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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