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習近平政権の発足を象徴するような2つの“事件”

理想の公有制に執着した若者と公有制で利益を得た老人

2013年3月29日(金)

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 重慶市の象徴とも言える高さ27.5メートルの“解放碑(正式名:“重慶人民解放紀念碑”)”は、市中心部に位置する渝中区の民族路、民権路、鄒容路の交差点にある。解放碑一帯は市内最大の繁華街で、解放碑を取り巻く主要な道路は“歩行街(歩行者天国)”となっている。その解放碑に程近い鄒容路に面した6階建のビル“金鷹財富中心”は1階に世界的ブランド「グッチ(GUCCI)」の中国西南地区の旗艦店があり、ビルの3階部分の外壁にはGUCCIの巨大な文字看板が掲げられている。また、そのすぐ上には文字看板を風雨から守るかのように幅2メートル程の庇(ひさし)が、ビルの外壁に沿って突き出ている。

6階建てのビルで「自殺ショー」

 3月17日の午後3時頃、そのGUCCIの文字看板の上にある庇の上に若い男が不意に現れた。彼は事前に準備した音響設備を庇の上に置くと、マイクを持って鄒容路に面した庇の先端に立ち、下を歩く人々に向かって演説を開始した。GUCCIの文字看板の上方から突然聞こえてきた男の演説調の声に人々が見上げると、庇の上に若い男が立ち、マイクを握って叫んでいる。歩行者天国を散策していた人々は何事かと足を止めて、演説に耳を傾ける。騒ぎを聞きつけた野次馬が次々とこれに加わり、見る間に金鷹財富中心前の路上には黒山のような人だかりが出来た。

 演説を始めた男は眼下の聴衆が増えるにつれて興奮の度合いを強め、その声は絶叫調に変わったが、途切れることなく演説を続けた。その声はスピーカーを通して拡大されてはいたものの、人々の喧騒にかき消されてとぎれとぎれにしか聞こえなかった。そうこうするうちに通報を受けた消防局の救助隊員2人が庇に到着し、男を説得しようと試みた。しかし、男は今にも飛び降りる姿勢を見せ、救助隊員の接近を阻止して演説を続行した。開始から30分間ほどで演説を終えた男は、一呼吸置いてから、急に声を張り上げて革命歌の“国際歌(インターナショナル)”を歌い始めた。そして、歌い終わるや否や、男は十数メートル下の地上を目がけて飛び降りた。興奮していた男には見えなかったが、地上には消防局が救助マットを設置して待ち構えていたので、男の身体は救助マットによって受け止められた。こうして男は待機していた警察官によって取り押さえられ、パトカーで連行されていった。

 以上が重慶飛び降り事件のてん末である。その後に判明したところによれば、男の名前は“張仁健”であり、重慶市に属する“開県”出身の大学生であるという。現場で張仁健の演説を聴いていた人々によれば、彼が演説で述べたのは以下の事項であった。

【1】2012年3月に失脚し、9月に汚職や職権濫用などの容疑で刑事訴追された前重慶市党委員会書記の薄煕来は、現在裁判待ちの状態にある。男は薄煕来を懸命に擁護すると同時に、薄煕来の裁判を公開で行うよう要求した。

【2】薄煕来が市党委員会書記として重慶市を統治したのは、2007年12月から2012年3月までの4年4カ月であったが、この間に薄煕来が提起した重慶の建設目標を列挙して、薄煕来の素晴らしさを強調した。その建設目標とは、「“五個重慶(5つの重慶)”」「民生10条」「“共富12条(共同富裕12条)”」であった。「5つの重慶」とは、(1)健康な重慶、(2)住みやすい重慶、(3)緑の重慶、(4)交通至便な重慶、(5)平安な重慶である。また、「民生10条」は、賃貸住宅の建設、農民の収入増、農民年金の普及、農村留守児童の擁護、農民の都市戸籍化、診療所の建設、零細企業の発展と就業の増大などを意味し、「共同富裕12条」とは、12条からなる重慶市民の所得増を図るための具体的な方針を指す。

コメント1件コメント/レビュー

 なるほど。「公有制」とは究極の「私有制」ともいえるのではないでしょうか。そうとすれば華西村の将来は決して暗いものではありません。 これだけの発展(?)がすべて「付け届け」によるものとは思えないのですが、若しこれを共産党が咎めるならどのような口実を用いるのか興味津々です。(ともの市) (2013/03/29)

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「習近平政権の発足を象徴するような2つの“事件”」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

 なるほど。「公有制」とは究極の「私有制」ともいえるのではないでしょうか。そうとすれば華西村の将来は決して暗いものではありません。 これだけの発展(?)がすべて「付け届け」によるものとは思えないのですが、若しこれを共産党が咎めるならどのような口実を用いるのか興味津々です。(ともの市) (2013/03/29)

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