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8歳の少女の願いは戸籍の取得と祖母の生活保護認定

基本的権利を持たない黒戸が1300万人以上

2013年8月9日(金)

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 香港の中国語紙「太陽報」は2013年7月30日付で、「中国共産党が創作した無戸籍、父無く、母無く、戸籍なし、幼子は天に向かって何も語らず」と題する写真入りの記事を掲載した。写真には貧しい農家の門口に並んで立つ老婦人と少女の2人が写っていただけだったが、真っすぐ前を見つめて、何かを訴えかける少女の視線が読者の心を捕え、記事は大きな反響を呼んだ。当該記事の要旨は以下の通りである。

役に立つ人間になっておばあちゃんを世話したい

【1】四川省“宜賓市”の8歳の少女、“葉新慧(ようしんけい)”には戸籍がない。彼女が生まれて間もない頃に、両親が相次いで家を出て行き、出生届が出されなかったため、彼女は“黒戸(無戸籍)”となった。無戸籍の葉新慧は何らの社会的支援を受けることも許されていない。年老いて衰え、身体障害を持つ祖母と助け合って生活している。赤貧洗うがごとき生活だが、葉新慧は品行、学業ともに優秀で、成績は常に上位にいる。

【2】葉新慧は数日前に慈善機関に手紙を出して、彼女の戸籍取得と祖母の最低生活保障の認定の支援を要請した。「戸籍がなければ、今後勉強を続けることができないし、役に立つ人間になっておばあちゃんの世話をすることもできない」と葉新慧は述べた。

【3】ある人は葉新慧の支援要請の手紙を西晋時代の“李密”が書いた“陳情表(陳情書)”<注1>と引き比べている。確かに、葉新慧と李密はいずれも両親がおらず、祖母と助け合って生活している。しかし、李密は成人した大人であるのに対して、葉新慧はわずか8歳の少女なのである。葉新慧の境遇は李密とは比べようもなく悲惨であり、李密は戸籍のないことを心配する必要もなかった。今や“大国崛起(大国の勃興)”と称する中国に、無戸籍という原罪の故に社会から見捨てられている少女が存在しているということはなんと皮肉なことだろうか。

<注1>蜀漢(現在の四川省)に生まれた李密(224~287年)は、幼少時に父を亡くし、母が他家へ嫁いだため、祖母に育てられた。有能な役人として知られていたため、蜀漢滅亡後に西晋の皇帝(武帝)から出仕を要請されたが、90歳を過ぎた祖母を置いて出仕するわけには行かず、祖母が亡くなるまで出仕を先に延ばしてほしい旨を述べた陳情書を上奏した。祖母思いの李密に感動した武帝は、2人を手厚く保護するように命じた。祖母の死後、李密は約束通り出仕し、西晋で多大な業績を残した。李密が上奏した陳情書は、中国の三大名文の1つとされている。

【4】“黒戸(無戸籍)”という言葉は中国共産党が創作したもので、現行の制度下で有効な戸籍を登録できない人を指し、彼らは教育、就業、婚姻などの面で基本的権利を剥奪されている。中国で2010年に行われた第6回“人口普査(国勢調査)”のデータによれば、全国の無戸籍人口は1300万人以上であり、総人口の1%を占めている。これは中国国民100人に1人が無戸籍であることを意味するが、その背景には“独生子女政策(一人っ子政策)”<注2>という逃れようのない“計劃育成政策(計画出産政策)”に関わる規則があり、超過出産となる2人目以上の子供は規則違反で戸籍登録ができず、“黒戸”とならざるを得ないのである。

<注2>中国政府が1980年から始めた家族計画で、夫婦1組に対し子供を原則1人に制限した。これに違反した場合は、“社会扶養費”と呼ばれる高額な罰金が科せられる。この罰金が支払えないと、子供を戸籍に登録することは許されず、子供は自動的に“黒戸”となる。

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「8歳の少女の願いは戸籍の取得と祖母の生活保護認定」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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