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ギリシャ救済を巡り、IMFと欧州委員会が「戦争」へ

孤独な「帝王」ドイツの選択(中)

2013年8月9日(金)

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 7月21日の参議院選挙では、大方の予想通り自民党が大勝。安倍政権は国会での「ねじれ」解消に成功した。

 今回は本題に入る前に、ドイツのメディアが参院選の結果をどう見たかについてお伝えしたい。ドイツのメディアにとって、アジアと言えばまず「中国」である。このためドイツの新聞社やテレビ局は、東日本大震災と福島原発事故以降、日本についてあまり報道しなくなっていた。しかし、今年の参院選については、比較的大きく伝えた。

日本は改革を実現できるか

 ドイツの保守系有力紙「フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)」紙のカルステン・ゲルミス東京特派員は、「日本が構造改革、対外開放を実現して経済や社会を覆っている殻を打ち破るための最後のチャンスが到来した」という見方を打ち出した。

 ドイツ人たちが関心を持っているのは、「日本はデフレと不況からいつ立ち直るのか」というテーマである。

 ゲルミス記者は「黒船来航時の開国と1945年の敗戦に次ぐ、『第三の開国』を日本は必要としている。安倍首相は党内の反対をはねのけて、日本を変えることができるだろうか」と問いかけている。つまり1998年から2005年までドイツで首相を務めたゲアハルト・シュレーダーが実施したような「痛みを伴う構造改革」を断行できるかどうかを、問うているのだ。

 ドイツの記者たちは、「アベノミクス」の発令以降、日本の株価が上昇し、経済成長率も回復の兆しを見せていることに注目している。

 一方で彼らは、日銀による国債の大量買い取りによって景気を改善しようという試みには懐疑的だ。「構造改革を伴わない、金融政策だけでは日本はデフレから脱却できない」という論調が目立つ。ドイツのメディアが最も注目しているのは、日本が持続的な経済成長と国際競争力の回復をどのように実現するかだ。

2015年に財政均衡を達成するドイツ

 ドイツ政府にとって、中央銀行が国債を大量に買い取る金融政策は事実上「禁じ手」なのだ。彼らは、労賃コストの削減と減税、技術水準の向上、研究開発費の拡充によって、企業の競争力を高めるしかないと考えてきた。シュレーダーは2000年代の初め以来、ドイツ経済の弱点だった「経済成長力の低迷」を克服するために心血を注いだ。アンゲラ・メルケル首相もその路線を継承した。

 過去10年間の努力は実を結び、2010年以降ドイツ経済はヨーロッパで「独り勝ち」とも言うべき状況にある。そのことは、財政にも色濃く反映している。

 連邦財務省が今年3月13日に発表した財政5カ年計画によると、ドイツは2015年に新規債務の発行(財政赤字)ゼロの状態を達成する。つまり再来年に、ドイツの歳入と歳出が均衡するので、政府は新しい借金をする必要がなくなるのだ。財政赤字がゼロになるのは、約40年ぶりのことである。

 さらに2016年には、歳入が歳出を上回って50億ユーロ(約6500億円・1ユーロ=130円換算)の財政黒字を達成する方針だ。

コメント1件コメント/レビュー

面白かったです。欧州分析記事は非常に興味がありますし、取材も良くされていると思います。その上で。■ドイツは財政均衡主義者の根城となっています。その精神的論拠は筆者も述べている通り構造改革による輸出型の経済成長の成功体験でした。ただ、EU域内の需要を高い生産性によって取り込み、その結果南欧諸国の供給力を削り続けてきたこと。ユーロ導入による不公平な通貨引き下げによってEU域外への輸出ボーナスを享受していたこと。そして、その余剰資金による南欧への無理な投資こそがギリシャ危機の直接の原因だったこと。この輸出至上主義とそれに付随する財政均衡主義は、ドイツ一国を見ればそれは自己満足できる結果だったのでしょうが、明らかに欧州全体を不安定にしています。この記事を読み、ドイツにはこれらに対する自己認識も反省も全くないという事がよく分かりました。■IMFは財政均衡原理主義から経済成長へとIMFは緩やかにシフトしつつあります。ヘアカットの件など、欧州危機に対する主張は(技術的なことを除いて思想的には)至極真っ当です。ドイツが日本に対して経済的に難癖をつけているのは、財政均衡ではなくアベノミクスが経済成長を目指した政策だからです。IMFの最近の考え方と方向性は同一であり、もしアベノミクスが成功事例を作ってしまえば、フランスやイタリアに発言権を与えてしまう。そうすればドイツの愛する財政均衡主義が論破されるかもしれない。そのためにつまらない因縁をつけているのだという認識が必要でしょう。■何にせよ、ドイツでも何処の国でも、ポジショントークであるという認識が必要です。日本は日本で、他国の言うことは聞き流しつつ自国にとって必要な政策を打たなければなりません。(2013/08/09)

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「ギリシャ救済を巡り、IMFと欧州委員会が「戦争」へ」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

面白かったです。欧州分析記事は非常に興味がありますし、取材も良くされていると思います。その上で。■ドイツは財政均衡主義者の根城となっています。その精神的論拠は筆者も述べている通り構造改革による輸出型の経済成長の成功体験でした。ただ、EU域内の需要を高い生産性によって取り込み、その結果南欧諸国の供給力を削り続けてきたこと。ユーロ導入による不公平な通貨引き下げによってEU域外への輸出ボーナスを享受していたこと。そして、その余剰資金による南欧への無理な投資こそがギリシャ危機の直接の原因だったこと。この輸出至上主義とそれに付随する財政均衡主義は、ドイツ一国を見ればそれは自己満足できる結果だったのでしょうが、明らかに欧州全体を不安定にしています。この記事を読み、ドイツにはこれらに対する自己認識も反省も全くないという事がよく分かりました。■IMFは財政均衡原理主義から経済成長へとIMFは緩やかにシフトしつつあります。ヘアカットの件など、欧州危機に対する主張は(技術的なことを除いて思想的には)至極真っ当です。ドイツが日本に対して経済的に難癖をつけているのは、財政均衡ではなくアベノミクスが経済成長を目指した政策だからです。IMFの最近の考え方と方向性は同一であり、もしアベノミクスが成功事例を作ってしまえば、フランスやイタリアに発言権を与えてしまう。そうすればドイツの愛する財政均衡主義が論破されるかもしれない。そのためにつまらない因縁をつけているのだという認識が必要でしょう。■何にせよ、ドイツでも何処の国でも、ポジショントークであるという認識が必要です。日本は日本で、他国の言うことは聞き流しつつ自国にとって必要な政策を打たなければなりません。(2013/08/09)

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