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EUはナショナリズムへの防波堤

2013年11月14日(木)

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 この連載は、ヨーロッパに23年間住んでいる者の視点から、日本の新聞記事やテレビのニュースからは読み取れない、ヨーロッパの断面をご紹介することを目的の1つとしている。

80年代に比べて統合は進化した

 ユーロ危機が連載のメインテーマなので、どうしても欧州連合(EU)のシステム上の欠陥や、ユーロ圏加盟国が抱える様々な問題点、南欧諸国に対する救済策の問題点などを取り上げざるを得ない。

 ネガティブな側面を取り上げるのは、ジャーナリストの習性の1つであるが、債務危機によってまるでEUが崩壊するような印象を与えるのは、私の意図ではない。日本の経済学者の中には、「もうEUは終わりだ」という印象を与えるコメントをしている人もいるが…

 ユーロ危機は、EUが第二次世界大戦後体験した、もっとも深刻な危機である。EUが未曾有の苦しみを体験していることは事実だが、その存在自体が問われる事態には至っていない。

 私が1980年代にNHKの記者だった頃に比べると、ヨーロッパの統合ははるかに進化している。そしてジャーナリストにとっても、はるかに興味深く、伝えるべき内容が多い地域になった。ヨーロッパ諸国は、連合体として団結することによって、国際政治の舞台でも1980年に比べて重みを増した。

 今日のEUは、1980年代の欧州共同体(EC)に比べて、政治的・経済的な統合が大幅に進んでいる。加盟国が主権の一部をEUに譲渡しているからだ。ユーロの導入で通貨が同じになっただけではない。来年からは大手銀行の監督・規制や、経営難に陥った銀行の整理についてもEUの一機関(欧州中央銀行)が取り仕切ることになる。

ヨーロッパの「遠心力」

 もちろんヨーロッパには求心力の他に遠心力もある。ヨーロッパの重要な特性は地域的な多様性だからだ。ドイツひとつをとっても、北と南ではメンタリティーや慣習が大きく異なる。EUをグローバル化の象徴とみなして、「ユーロ圏離脱」を求める勢力は、どの国にも多かれ少なかれ存在する。英国のように、EUそのものからの脱退について国民投票によって民意を問おうとしている国すらある。「各国政府が担当するべき瑣末な問題についてまで、EUは口を突っ込みすぎだ」という批判も強い。

 しかし私は、EUについて様々な議論が起きている今日こそ、その原点に立ち返る必要があると思っている。なぜEUが必要なのかについて、再確認するためである。私は、様々な問題を抱えていても、EUは必要であると考えている。今日のヨーロッパの根底にあるものを理解しないと、EUの存在意義は理解できない。

コメント10件コメント/レビュー

こういう質の高い記事が無料で読めるのがNBオンラインのいいところですが、最近は記事とコメントが反比例する傾向が(違う意味でも)高く残念です。私自身、欧州統合に至る歴史的背景をある程度理解していたつもりでしたが、ここ数年はやや懐疑的になっていました。が、この記事を読んでまだまだ(日本に住んでいる)自分にはわからないことが沢山あるものだと考え直しました。ろくに勉強もしないでネットで聞きかじった情報だけでわかったふうをするのは良くないですね。寒夜、厳しい過去を振り返りに外出するドイツ人に及ぶべくもない。(2013/11/19)

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「EUはナショナリズムへの防波堤」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

こういう質の高い記事が無料で読めるのがNBオンラインのいいところですが、最近は記事とコメントが反比例する傾向が(違う意味でも)高く残念です。私自身、欧州統合に至る歴史的背景をある程度理解していたつもりでしたが、ここ数年はやや懐疑的になっていました。が、この記事を読んでまだまだ(日本に住んでいる)自分にはわからないことが沢山あるものだと考え直しました。ろくに勉強もしないでネットで聞きかじった情報だけでわかったふうをするのは良くないですね。寒夜、厳しい過去を振り返りに外出するドイツ人に及ぶべくもない。(2013/11/19)

ユダヤ人のナチスの虐殺証言者はユダヤ人の話しかしないです。だから私はつい最近までユダヤ人以外にナチスに虐殺された人達が400万人もいたことを知らなかったのです。確かにユダヤ人が600万人でもっとも多いですが、400万人は無視していいほど少なくはないはずです。しかし、その人達のことは語られません。なぜなのだろうと考えるとこれもナショナリズムの一種なのかと思います。ユダヤ人の人達もけっしてリベラルな人ばかりではなく右翼勢力の人達がいるのは考えてみれば当たりまえです。虐殺は悲惨でその実態の証言には耳を傾ける必要がありますが、それだけでは十分ではないことを意識する必要があります。虐殺の証言の中に自分たち以外の民族を無視するような人種差別的な要素があることに気がついて、私自身は驚きました。だから、記事にあるように多くの民族が暮らすヨーロッパではEUのような組織が必要なのでしょうね。(2013/11/15)

ギリシャはユーロから離れて自主貨幣に戻った方が良い。スペインやイタリアも。ドイツ一人勝ちじゃないか!(2013/11/14)

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