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南欧諸国に必要なのは「シュレーダー改革」だ

ドイツの経常黒字に改めて批判の声

2013年12月5日(木)

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 ユーロ圏を覆う冷たい暗闇の中に、ほのかな明かりが見えてきたようである。想定外の突発事態が起こらなければ、今月、欧州連合(EU)の「ユーロ危機・集中治療室」を離れる患者が初めて現われる。

アイルランドとスペインが救済プログラム離脱へ

 「我が国経済の非常事態は終わった」。今年10月13日に、アイルランドのエンダ・ケニー首相はこう宣言した。この小国は一時、深刻な銀行危機に追い込まれていた。ケニー首相は12月15日をもって、アイルランドがEUの救済プログラムの管理下から脱することを明らかにした。

 元々小さな農業国だったアイルランドは、90年代に法人税を12.5%という西欧で最も低い水準に引き下げた。これは、ドイツやフランスの半分以下であった。低い法人税率に魅せられて、米国や英国の企業は欧州の拠点をアイルランドに設置した。最初は主に製造業がアイルランドに進出した。次第に金融機関もこの国に子会社を作るようになった。

 このためアイルランド経済は空前の好景気を経験する。1997年の経済成長率は実に11.5%に達し、アイルランドは「ケルトの虎」という異名を得た。同国の失業率は1980年代末には17%だったが、2000年代には4%まで下がり完全雇用状態を実現した。1990年に95%を超えていた同国の債務比率(対GDP比)は、2007年に25%にまで下がった。国民1人当たりのGDPは、欧州の平均を50%も上回っていた。正に優等生の成績である。

 しかしリーマンショックが、アイルランド経済に大きな打撃を与えた。GDPは2008年には3.5%、2009年には7.6%も減少した。2010年には失業率も約14%に達し、EU(欧州連合)の平均を上回った。EUの助けなしには、経済再建が不可能な状態に陥った。

 アイルランドの危機は銀行危機だった。政府は独力で銀行を救済することはできないと判断して、2010年にEUに対し救済を申請した。EUと国際通貨基金(IMF)は、総額850億ユーロ(11兆500億円、1ユーロ=130円換算)の融資パッケージを提供。同国はこのうち680億ユーロ(約8兆8000億円)を実際に銀行救済のために使用した。EUとIMFは、同国に対して銀行業界の再編、歳出削減と増税による緊縮措置を要求した。

 アイルランドのGDP成長率は2012年0.2%だった。EUは、同国が今年度、その5倍を上回る1.1%の成長率を達成すると予想している。アイルランドは今後も25億ユーロ(約3250億円)相当の増税と歳出削減を実行しなくてはならないが、南欧諸国に先駆けてEUによる救済プログラムの傘の下から出られることになった。

 2009年末にギリシャで債務危機が表面化して以来、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド、キプロスの4カ国がEUとIMFの正式な救済プログラムの管理下にあった。この「集中治療室」を離れる国が出るのは、初めてだ。

 またスペインは2012年にEU・IMFの正式な救済プログラムではなく、銀行危機に対処するための特別融資だけを申請した。EUとIMFは同国に1000億ユーロ(約13兆円)の融資を提供し、スペインはそのうち約40%を銀行救済のため実際に使用した。同国政府も、来年からはEUとIMFの支援を必要としないことを明らかにした。欧州委員会で通貨問題を担当するオリー・レーン委員(EUの通貨・経済大臣に相当する)は「スペインの銀行業界再編は進展を見せた」として、同国政府の努力を高く評価した。

 スペインとアイルランドは2014年以降、EUとIMFからの融資なしでも、国債市場で独力で資金を調達できることになる。明るいニュースが少ないユーロ圏にとって、久々の良い報せである。

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「南欧諸国に必要なのは「シュレーダー改革」だ」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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