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欧州に「尖閣諸島とサラエボ」比較論

ドイツに広まる「日本は過去と真剣に向き合わない国」のイメージ

2014年1月27日(月)

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 今年1月15日、ワシントンDCのナショナル・プレス・クラブで講演した国際通貨基金(IMF)のクリスチーヌ・ラガルド専務理事は、「2014年は、世界経済が危機から本格的に脱却する区切りの年となるだろう」と述べ、ユーロ危機などの行方について楽観的な見通しを明らかにした。ラガルド氏は、「厳しい寒さは過去の物になり、地平線には光が見える。私は、これまで続いた沈滞の7年間が、2014年を境に、力強い躍進の7年間に変わってほしいと望んでいる」と語った。

 IMFは、去年10月に発表した世界経済見通しの中で、今年世界の国内総生産(GDP)が約3.6%増えると予測していたが、1月21日に予測成長率を3.7%にやや上方修正。

 IMFは、2009年以来世界経済の足を引っ張ってきたユーロ圏について、2012年、2013年とマイナス成長が続いた後、今年は3年ぶりに1.0%というプラスの成長率を記録すると予想している。その理由は、欧州を牽引する機関車役であるドイツが成長率をさらに伸ばすためだ。IMFは、今年のドイツのGDP成長率が、去年の約3倍の1.6%になると見ている。他のユーロ圏諸国の景気が回復の方向に向かうので、ドイツの輸出がさらに増えることが予想されるからだ。事実、ドイツの多くの経済記者や投資アナリストは去年の秋以来「2014年は、ドイツ経済が飛躍する年になる」という楽観的な見通しを打ち出している。

尖閣はサラエボ?

 こうした状況の一方で、欧州では世界第2・第3の経済大国である中国と日本の関係が悪化していることについて、日に日に懸念が高まっている。ドイツの報道機関は、尖閣諸島を巡る日中間の対立が2012年に激化して以来、東アジアの緊張が高まっていることを繰り返し伝えてきた。特に去年11月に中国が尖閣諸島を含む海域の上空に防空識別圏を設定してからは、日中間の対立をさらに大きく取り上げるようになった。日本の防衛予算の増額、秘密保護法の制定などについても報道している。

 保守系の高級紙「フランクフルター・アルゲマイネ」(FAZ)で外交・安全保障問題を担当するクラウス・ディーター・フランケンベルガー論説委員は、2013年12月3日の第1面に「極東を覆う暗雲」と題する社説を掲載した。

 同論説委員はこの記事の中で、オバマ政権の元官僚が語った「尖閣諸島が、21世紀のサラエボになることを危惧している」という言葉を引用している。現在ボスニア・ヘルツェゴビナの首都であるサラエボは、1914年6月28日にオーストリアのフランツ・フェルディナンド皇太子とその皇妃が、セルビア系ボスニア人によって暗殺された場所。この事件は、第一次世界大戦の口火となった。

 フランケンベルガー論説委員は「1914年のサラエボと今日の尖閣諸島を比べるのは、あまりにもセンセーショナルだと考える人もいるかもしれない。しかし安全保障を担当する米国政府の関係者がこのような比較を行うということは、東アジアが紛争の火種を数多く持っていることを意味している」と指摘。そして「東アジアの小さな島をきっかけとする対立が制御不能に陥り、地域的な紛争が不測の事態を契機に大国の衝突につながる危険はないのだろうか」と警鐘を鳴らしている。

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「欧州に「尖閣諸島とサラエボ」比較論」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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