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欧露の貿易戦争で深い傷を負うのはロシア

ウクライナ危機と西欧の苦悩

2014年3月19日(水)

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 2014年3月16日。クリミア自治共和国で行われた住民投票の結果、投票者の90%以上がウクライナから独立しロシアに帰属する意思を表明した。3月18日にプーチン大統領は、クリミアのロシアへの編入を決定した。クリミア自治共和国はウクライナの一部だが、住民の約60%がロシア系である。この投票結果は、ウクライナ分裂の可能性を一段と高めただけではない。1989年のベルリンの壁崩壊以来、終息したかに思われていた「東西対立」を再び招きかねない事態となった。ユーロ危機の後遺症からようやく立ち直りつつある欧州にとって、ロシアとの対立は頭の痛い問題である。

冷戦後、欧州にとって最大の試練

 クリミア問題は、ロシアとウクライナとの間の紛争にとどまらない。ドイツのフランク・ヴァルター・シュタインマイヤー外務大臣は「冷戦が終結して以降、欧州が直面する最大の危機」と呼ぶ。ジグマー・ガブリエル副首相は「我々は冷戦の時代に逆戻りしようとしている」と警鐘を鳴らす。

 ロシアは、クリミア半島に戦闘部隊を送り込んでウクライナ軍の兵営を包囲し、空港などを事実上「制圧」した(これらの兵士たちは覆面をつけており、国家記章や階級章を外している。プーチン大統領は、「これらの兵士たちはロシア兵ではなく、地元の防衛組織だ」と主張するが、ロシア軍部隊であることは明らかだ)。ドイツ政府をはじめとするEU諸国はこれを 「ウクライナの主権を侵害し、国際法に違反する行為」と断定。EUにとって、冷戦終結後に確定した国境線を変更することは、原則としてタブーなのだ。

 EUは、ヤヌコビッチ大統領が失脚した後に誕生したウクライナ新政権を全面的に支援しており、同国との間で提携条約を近く結ぶ方針だ。このためEUはクリミア自治共和国の住民投票を「違法」と決めつけている。

 これに対しロシア側は「ヤヌコビッチ大統領を失脚させたウクライナの政変は、外国勢力が加わったクーデターであり、新政権は承認できない」と主張する。ロシアのメディアは、「ポーランドやリトアニアの秘密キャンプで訓練された特殊部隊が、キエフの騒乱に加わっていた」という政府の見解を報じている。さらにロシア政府はウクライナの極右勢力もキエフで反政府デモに参加し、政府を転覆したと主張。クリミア半島などウクライナに住むロシア系住民をそうした勢力から守る必要があるというのが、プーチンの理屈だ。

 ウクライナはロシアが「近い外国」と呼ぶ国の一つ。かつてソビエト連邦に属していた国々だ。これらの国々にはクリミア半島のように、ロシア系住民の比率が高い地域がある。プーチン大統領は、旧ソビエト連邦の盟主だったロシアには、「近い外国」に住むロシア系住民の権益を、武力を行使してでも守る義務があると考えている。ロシア系住民の比率が高いウクライナ東部では、これまでも分離独立を求める勢力がいたが、クリミア半島の住民投票に影響されて、その動きに拍車がかかる危険がある。

 実際、ロシア外務省は3月16日に「ウクライナのクリミア半島以外の地域に住むロシア系住民から救援要請が届いており、現在状況を分析中」と発表している。ウクライナ新政権は、この声明を「ロシア軍がウクライナに侵攻する兆候ではないか」と見て警戒を強めている。万一ロシアが侵攻した場合、ウクライナ軍が反撃することは間違いない。約85万人の兵力を持つロシア軍に対し、ウクライナ軍の兵力はわずか約13万人。しかしある若いウクライナ人は「必要となれば、断固としてロシア軍と戦う。正規軍の兵士の数は少なくても、パルチザン(地下抵抗勢力)として戦える」とBBCテレビの記者に対して答えていた。

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「欧露の貿易戦争で深い傷を負うのはロシア」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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