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映画「KANO」と台湾アイデンティティ

話題作が問う「日本統治」と「中華意識」再考

2014年4月9日(水)

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 前回に引き続き、今回も台湾の話題になる。3月末に台北を訪れたときに、一部で大変話題となった映画「KANO」を観てきた。

 この映画は、このコラムでも以前取り上げた「セデック・バレ」を撮った魏徳聖がプロデューサー、監督はセデック族の血を引くイケメン俳優の馬志翔。彼は「セデック・バレ」でも、主人公と対立するセデック族の一部族の頭目役で出演していた。主演は日本人の永瀬正敏。台湾映画であるが、国境民族を超えた合作映画ともいえ、セリフの7割が日本語、2割が原住民の言葉、1割が台湾方言か客家方言。おそらく中国人は字幕がなければほとんど理解できない。

 映画の内容も民族を超えて1931年の甲子園準優勝を勝ち取った「嘉義農林学校野球部」を舞台にした青春ドラマである。知り合いの台湾人たちが、「泣いた!」「2度観ても、また観たい」「少なくとも4度は泣く」と大絶賛だったこともあり、来年まで待てば日本でも公開されるはずなのだが、待ちきれずに取材の合間に台北の映画館に足を運んだ。

今の台湾人が、もっとも問われているテーマ

 案の定、私は最初から最後までほぼ涙を流しっぱなしだった。ちなみに私が泣いたからといって名作とは限らない。世間で駄作とこき下ろされる映画でも、実はけっこう泣く。「KANO」は台湾で、公開1カ月あまりで興行収入3億ニュー台湾ドル近いと大ヒットを飛ばしたというから、出来のよい映画だろう。そして一部識者からは「日本の植民統治時代を美化しすぎている」「日本の皇民史観に腐食された台湾アイデンティティ」といった攻撃的な批評も出るほど、インパクトもあった。

 なぜ、台湾で「KANO」がこんなに話題になったのか。答えを先に行ってしまうと、この映画の中で描かれる台湾アイデンティティというものが、今の台湾人にもっとも問われているテーマだからだろう。

 私は年初に台湾を訪れて今年は中台間に何か動きがあるのではないかと予感したのだが、台湾で今、起きていること、これから起きるであろうことを理解したり、推測したりするには台湾アイデンティティとは何か、がわからねば見誤るだろう。この映画から見える「台湾アイデンティティ」について考えたい。以下、多少映画のネタバレも入る。

コメント5件コメント/レビュー

良い記事ですね。一つの「国」の中にも色々な意見、見方がある、というのが良く分かります。日本統治の是々非々もそうですよね。書き方もとてもフラットだと思います。私はいわゆる保守派ですけど、日本人でも私と反対の立場の人の意見、見解はきっと「中華意識の強い台湾人」と同じでしょうね(笑)。(2014/04/09)

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「映画「KANO」と台湾アイデンティティ」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

良い記事ですね。一つの「国」の中にも色々な意見、見方がある、というのが良く分かります。日本統治の是々非々もそうですよね。書き方もとてもフラットだと思います。私はいわゆる保守派ですけど、日本人でも私と反対の立場の人の意見、見解はきっと「中華意識の強い台湾人」と同じでしょうね(笑)。(2014/04/09)

日本から学んだプラスの面を客観的に捉えることのできる台湾に比べて、何でも否定しようとするかの国。好対照ですなあ。(2014/04/09)

在台日本人です。隣国・台湾で、学生が国会を占拠し、日本の人口比に換算すれば約200万人が学生に共感して総統府へのデモに参加したという一大政治事件が起きたにも関わらず、矮小化と表現してもいいほどこの事件に対して無視に近い態度を決め込む日本の主要マスコミに、強い不満を抱いています。わずかに掲載される記事も、台湾社会の多数派が抱く、学生への強い共感と馬英九政権への反感が全く感じられない、無味乾燥な悪い意味で「中立的」な記事ばかりでした。そんな中で、台湾社会と国際情勢を公正な視点で眺めた、いい意味で「中立的」な福島氏のこのコラムは、台湾のいまの空気をありのままに知らせる、大変よい記事だと評価します。ただ一点、国際情勢と中台関係の現実を見れば独立の目はないと決めつけている点には納得ができません。確かに、福島氏ご指摘の通り、短期的には台湾と取り巻く客観情勢が独立を承認する目はないと言えます。しかし、馬英九政権の6年間ですら、李登輝・陳水扁時代に行われた台湾化の流れを逆行させることはできず、せいぜいスローダウンさせるのが精一杯でした。福島氏の台湾vs中華アイデンティティの割合が7:3という評価は現地在住の私の認識とも一致しますが、台湾アイデンティティの割合が増えることはあっても、減ることはまずないでしょう。加えて、相手が一党独裁国家である中国である以上、旧ソ連の崩壊という歴史的事実を見れば、何が起こるかはわかりません。したがって、長期的にも独立の目がないとまでは言い切れないのではないでしょうか。(2014/04/09)

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後藤 忠治 セントラルスポーツ会長