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ウクライナ危機~メルケル首相が犯した失敗

東欧は「新たなミュンヘン協定」に懸念

2014年4月17日(木)

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 ロシアが3月中旬にクリミア半島を併合してからも、ウクライナ情勢はエスカレートの一途をたどっている。

ウクライナ東部で高まる緊張

 ウクライナ東部のスラビャンスクでは、4月12日に正体不明の武装勢力が警察署などを占拠した。翌日にはウクライナ軍の特殊部隊が、武装勢力を排除しようとして銃撃戦となり、双方に死傷者が出た。これらの武装勢力は他にもウクライナ東部の4つの町で、政府機関の建物を占拠している。北大西洋条約機構(NATO)のラスムセン事務局長は、「クリミア半島で住民投票が行われる前に、空港などを武装勢力が占拠した状況に似ている」と述べ、これらの武装勢力の暗躍にロシアが関与している可能性を示唆した。プーチン大統領はロシアの関与を否定している。

 国連の安全保障理事会は4月13日に、ウクライナ危機がエスカレーションしたことを受けて緊急会議を召集。米国とロシアの国連大使が非難し合う光景は、東西冷戦たけなわの時代を思い起こさせた。欧州連合(EU)はロシアがウクライナ東部で混乱状態を引き起こしているとして、銀行口座の凍結などの制裁の対象とするロシア人の数を増やすことを決めた。

ウクライナ連邦化を目指すロシア

 プーチン大統領の狙いは、ウクライナの東部地域を同国から事実上分離することだ。ロシアはウクライナを連邦化し、東部地域が外交、経済、文化などについて自治権を獲得することを目指している。しかもウクライナがNATOに加盟せず、中立国になることも要求している。「中立」とは言うものの、ロシアがウクライナ東部を事実上の「保護領(プロテクトラート)」にしようとしていることは明白だ。

 ウクライナ東部の親ロシア勢力は、この地域をクリミア半島と同じくロシアに帰属させることを要求している。ウクライナの政変で失脚し、ロシアに事実上亡命したヤヌコビッチ前大統領は、ロシアへの帰属に関する住民投票をウクライナ全土で行うべきだと主張している。

 問題は、ロシアが民主的な方法ではなく、軍事力を背景にウクライナ東部の分離を実現しようとしていることだ。クリミア半島の住民投票も、武装勢力が同地域を制圧したことで初めて可能になった。

 ロシアはウクライナ東部との国境に、戦車や装甲兵員輸送車、戦闘ヘリを含む約4万人の戦闘部隊を集結させている。4万人といえば、2個師団に相当する兵力。NATO関係者は、「ロシアは5日以内にウクライナのすべての都市を占領できるだけの兵力を集めている」と分析する。

 つまりプーチン大統領は、「ウクライナの連邦化を認めなければ、ロシア系住民を保護するためにウクライナに侵攻する」という無言の圧力をかけているのだ。

 これは西側諸国が「もはや欧州では過去のものとなった」と信じきっていた、帝国主義的な恫喝である。1989年のベルリンの壁崩壊以来、「平和の配当」に酔いしれていたEUや米国の政治家や官僚たちは、突然豹変して牙をむいたプーチン大統領に、冷水を浴びせられたのだ。そう、帝国主義はヨーロッパ大陸の東部ではまだ死に絶えていなかったのである。第一次世界大戦の勃発からちょうど100年目に当たる今年、EUが帝国主義と対決することになるとは、何という歴史の皮肉だろうか。

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「ウクライナ危機~メルケル首相が犯した失敗」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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