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徐才厚失脚と背後の暗闘

習近平が解放軍に「零容忍」を通告

2014年7月9日(水)

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 中国人民解放軍のナンバー2、制服組トップまで上り詰めたことのある退役上将・徐才厚がついに完全失脚した。6月30日に党籍を剥奪、即時逮捕である。末期の膀胱がんを北京の301軍病院で治療中だったところを3月15日に、中央軍事委規律検査委に無情に連行されたという。このとき妻と娘も一緒に連行されたとか。事実上の失脚は早くに伝えられてはいたが、徐才厚ほどの地位の人間が、党籍剥奪にまで至ると確信していた人は少なくとも去年の段階ではほとんどいなかったと思う。

 しかも、徐は先の党大会の際に円満退役。病は重く、先は長くない。江沢民政権時代の劉清華、張震退役上将(元軍事委副主席)のように、退役後も軍内で強い影響力を発揮していた、というような人物ではない。これだけの地位の老い先短い老人に今さら厳しい刑事罰を科す、というのは従来の共産党的秩序からは考えられなかった。前代未聞、といっていいこの顛末は何を意味するのだろうか。党中央と解放軍の関係性に何か変化が起ころうとしているのだろうか。

偽リークで煙幕、軍制服組を出し抜く

 6月30日、建党93周年の日を前に党中央政治局会議が開かれ、71歳になる中央軍事委前副主席の徐才厚の党籍剥奪が決定された。上将の地位も剥奪だと香港紙は伝えている。徐才厚が公式の舞台に最後に姿を見せたのは1月20日、軍の春節文芸演出晩会で中央軍事委主席として出席する習近平の傍らに、白髪の老いた姿で立っているのをCCTV(中国中央テレビ)がとらえていた。このころにはすでに膀胱がんが相当悪化しているといわれていたが、その憔悴ぶりは病のせいだけでなかったかもしれない。

 たしか今年3月、徐才厚が双規(紀律検査当局による取り調べ)にあったという噂が駆け巡ったが、3月17日付の香港紙サウスチャイナモーニングポスト(SCMP)は、北京消息筋の話として「徐才厚は病状悪化によって、双規から除外された」と報じ、その噂を打ち消していた。その一方、明鏡ニュースネット(3月22日発)によると、3月14日の段階で北京301医院東院南楼6階に入院中の徐才厚が、鉄格子窓のはまった病室に軟禁状態だという。中央軍事委員の命令で空軍から派遣された50人の兵士が交代で24時間警備しており、付近には狙撃手まで配置されていた様子をリアルに伝えたうえで、北海艦隊に所属していた徐才厚の元秘書・董振波を専用機で北京に連行し軟禁、すぐさま董が設立している企業の資金20億元の凍結措置を取ったという。

 この一連の措置は解放軍検察長が直接、習近平に報告したため、軍事委副主席の范長龍、許其亮、総政治部主任の張陽は全く知らなかったという。総参謀部主任の房峰輝については書かれていないが、習近平と仲が悪いと噂にまでなっている房が事前に関知していたとは考えがたい。また明鏡は徐才厚案件に絡む現職・退役中央軍事委員は15人に上ると伝えている。

 結果から推測するに、香港紙に偽リークを放ち煙幕を張りながら、水面下では軍制服組幹部を出し抜く形で、徐才厚閥を一気呵成に潰していったということか。しかしこの状況で、大手SCMP紙と真逆のスクープをしれっと飛ばす明鏡ニュースの解放軍内部情報筋の確かさを改めて指摘しておく。

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「徐才厚失脚と背後の暗闘」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト