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インダストリー4.0がもたらす光と影

ドイツが官民一体で進める「第4の産業革命」(3)

2014年9月25日(木)

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 ドイツが官民一体となってインダストリー4.0に取り組んでいる最大の理由は、この国の産業構造にある。ドイツは、機械工業を最大の柱とする物づくり大国である。国土が比較的狭い上に、天然資源に乏しく、人口も8000万人と比較的少ない。付加価値の高い製品を輸出したり、外国で現地生産したりすることによって、国富を稼ぐしかない。

ミッテルシュタントを守れ!

 しかもドイツ企業の約90%は、従業員数が500人に満たない中規模企業(ミッテルシュタント)である。ミッテルシュタントは、不断の技術革新を武器に、主に企業間取引(B2B取引)を通じて、特定の部品や工作機械などの分野で大きなマーケットシェアを持っている。他の企業はドイツのミッテルシュタントが作り出す製品がなくては、自社の生産活動が滞ってしまうので、ミッテルシュタントが提示する価格を受け入れる傾向が強い。このため、ミッテルシュタントは、激しい価格競争を避けることができる。

 高福祉国家ドイツは、税金や社会保険料が高いために、人件費が高い。このため、ドイツ企業は価格競争にさらされる危険が比較的少ない高付加価値の分野に特化することによって、成功を収めているのだ。逆に、携帯電話やテレビ、繊維製品のように、価格競争が激しい分野では、ミッテルシュタントは生き残ることが難しい。

 ミッテルシュタントは、独シーメンスなどの大手企業に比べると資本力が乏しい。インダストリー4.0に対応するためのソフトウエアを開発するには多大の資本力が必要となるので、ミッテルシュタントが自社で開発することは非常に困難である。

 政府が音頭を取り、物づくりに関連する主要な業界団体を巻き込んでインダストリー4.0の標準化を進めているのは、自社でソフトウエアを開発する力のないミッテルシュタントも、このテクノロジーの恩恵を受けることができるようにするためである。中規模企業が工場のデジタル化で後れを取った場合、この国の経済の重要なプレーヤーたちが弱体化してしまう。

労働力不足への回答

 ドイツがインダストリー4.0を重視しているもう一つの理由は、少子化と高齢化による労働力不足だ。2010年以来、好景気に沸くドイツでは、技術者の不足が現在でも深刻だ。一部のメーカーは、不況のために母国で仕事が見つからないスペインやポルトガルの技術者らを受け入れることによって、受注増加に対応している。

 しかもドイツの就業者数は、2030年には現在に比べて600万人も減ると予想されている。一部のドイツ企業は、60歳以上の労働者も働きやすい環境を整えることによって、熟練した技術者を確保しようとしているが、労働力不足に歯止めをかけるには十分ではない。このためインダストリー4.0は、労働力の不足が予想されるドイツにとって、一つの回答となる可能性がある。

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「インダストリー4.0がもたらす光と影」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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