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なぜ農民は「ニセ政府」を作ったのか

「偽物騒動」ではなく「弱者の抵抗」と読むべし

2014年8月29日(金)

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 ニセモノがはびこる中国で、「ニセ政府」を作った農民が逮捕された――。先日、日本のニュースサイトで目にした記事に、強烈な違和感を持った。この事件を、一連のニセモノ騒動に列して捉えることに対してだ。中国の事件を面白おかしく報じるのを非難する積りはないが、表面的な事象だけを見て、物事の是非を判断することは、「木を見て森を見ず」となりかねない。

 そこで今回はこの事件の実情を、中国メディアが報じた内容を取りまとめる形で検証してみたい。

ごく普通の農婦が、食堂を営みながら

 【1】河南省鄭州市の南西15キロメートルに位置する文渠郷は人口6万人余りの田園地帯である。その文渠郷に属する“廖寨村(びょうさいむら)”の村落“蒋庄六組“に住む“張海新”は、中国の農村のどこにでもいるごく普通の農婦だった。夫は長年にわたって出稼ぎに出ており、張海新は農業をしながら家を守っていた。2000年頃、張海新は自身が住む蒋庄六組の道路脇に小さな食堂を開業し、通行するトラック運転手を相手に豚肉料理や鄭州名物の“窩子麺(牛肉麺)”を販売するようになった。食堂の経営は順調だったが、2007年に張海新は“廖寨村”党支部書記の“呉振徳”と争う事態が起こった。それは、村の幹部たちが度々張海新の食堂を接待に使って飲み食いした揚句に、支払いを付けにして溜め込んだ飲食代6000元(約10万円)に起因していた。張海新は6000元の支払いを再三要求し、“上訪(上級機関に陳情すること)”して回ったがらちが明かなかった。6000元は最終的に支払われず、呉振徳は3人の子供を持つ張海新の「超過出産違反の罰金」<注1>と相殺にしたのだった。

<注1>「1人子政策」により2人以上の子供を出産すれば罰金が科せられる。

 【2】その後、娘が鄭州市の市街区にある中学校へ入学したことから、張海新一家は市街区へ移り住んだ。張海新はそこで屋台の果物屋を開業し、大いに繁盛した。しかし、2009年に蒋庄六組で土地を巡る紛争が起こり、農村生活から抜け出した張海新を農村へ引き戻すことになった。同年4月、蒋庄六組の村人は蒋庄六組内にある養豚場の土地が廖寨村の幹部たちによって“蒋庄五組”の村人“呉家敏”の住宅用に売却されたことを知った。養豚場の土地は蒋庄六組の集団所有地であり、廖寨村の幹部たちにはそれを売却する権限はないというのが蒋庄六組の言い分だった。しかし、廖寨村の幹部たちは、当該土地が1993年に廖寨村の「村所有地」に転換されていたと主張し、両者の対立は平行線をたどった。

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「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」のバックナンバー

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「なぜ農民は「ニセ政府」を作ったのか」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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