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「就職差別」裁判、求職者「連勝」の意義

戸籍や性別による差別に「NO」、改革の端緒か?

2014年9月12日(金)

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 2014年7月29日、江蘇省の省都“南京市”の“鼓楼区人民法院(地区裁判所)”で、中国にとって画期的な民事訴訟の調停が成立した。それは中国初の「戸籍所在地による就職差別」に関する民事訴訟が裁判所の仲介によって原告と被告が合意に達したものだった。

法学部出身の蘇敏が「戸籍所在地差別」に異議

 8月4日付の中国メディアの報道によれば、被告の“南京市鼓楼区人力資源服務中心(人的資源サービスセンター)”(以下「南京鼓楼服務中心」)は、戸籍所在地による就職差別の被害者である原告の“蘇敏”(仮名)に対して、1万1000元(約18万2000円)を7日以内に支払うこと、また本紛争は今回で決着とし、これ以上の係争を行わないことに合意し、調停が成立したのだという。これは原告である蘇敏の勝利であり、長年にわたる偏狭な地域主義に根差した戸籍所在地による就職差別に風穴を開けた快挙であった。蘇敏が勝利に到るまでの長い道のりをたどってみると以下の通りである。

【1】蘇敏は安徽省の南部に位置する“安慶市”の出身で、2013年6月に安徽省の名門大学である“安徽師範大学”の“法学院(法学部)”を卒業予定であった。大学生にとって卒業後の課題は就職である。他の大学卒業予定者と同様に、蘇敏も厳しい就職戦線の中で、少しでも自分に相応しい職場に就職したいと懸命に就職活動を展開していた。

【2】2013年4月、蘇敏はネットの求人サイトで“南京市人力資源和社会保障電話諮詢中心(南京市人的資源・社会保障電話相談センター)”(以下「南京人社電諮中心」)が「電話番号12333<注1>の電話相談員を10名募集」という「南京鼓楼服務中心」名義の求人広告を見て、これなら自分の学歴が活かせるのではないかと興味を持った。当該求人広告に書かれている応募条件を子細に見ると、学歴、専門、年令などは全く問題ないが、これに続いて「南京市戸籍者限定」という制限が明記されてあり、戸籍所在地が安徽省である蘇敏は応募できないことが判明した。

<注1>12333は全国統一の労働や社会保障に関わる相談センターの電話番号。当該相談センターは、各地の「人的資源・社会保障局」の下部機関。

【3】一般の求職者なら応募資格を満たしていないなら仕方ないと諦めるところだが、大学の法学部出身の蘇敏はそうは考えなかった。これは南京市に戸籍を持つ者だけを優遇し、その他地域の戸籍を有する者を排除するという地元優先主義に根差した、明らかな「戸籍所在地による就職差別」に他ならないと考えた。それならば、大学で学んだ法律知識を活用して、この就職差別を撤廃させてみせると、蘇敏は固く心に誓ったのだった。2013年5月15日、蘇敏は弁護士の“許英”の協力の下、南京市“玄武区人民法院”に対し、「戸籍所在地による就職差別」を理由として、南京市政府の“南京市人的資源和社会保障局”(以下「南京市人社局」)を提訴した<注2>。しかし、予想はしていたものの、その結果は“不予立案(提訴を受理せず)”という裁定で、門前払いされたのだった。

<注2>南京市人社局は求人元の「南京人社電諮中心」および広告主の「南京鼓楼服務中心」の上部機関。

コメント3件コメント/レビュー

これを中国政府が新たな構造改革に舵を切った証と見るのは早計でしょう。単なるガス抜きか、権力闘争の一環かも知れません。(2014/09/15)

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「「就職差別」裁判、求職者「連勝」の意義」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

これを中国政府が新たな構造改革に舵を切った証と見るのは早計でしょう。単なるガス抜きか、権力闘争の一環かも知れません。(2014/09/15)

十分な法律の知識と強い意志を読み取ったからこそ、「裁判所の仲介によって原告と被告が合意に達した」が起こり得た。原告に十分な知識が無かったり、知識はあっても強い意志が無かったりしたら、同じ結果にはならない。中国では「三権一体」だから、行政に都合の良い判決が一般的だ。この判例を機会として、同じ考えの弁護士が国中で起こっている裁判に積極的に関与する様になれば、共産党政権下であっても「民主主義」が一歩前進する。数年前、中国の地方都市で仕事をした時、その町を走るタクシーの殆どは白タクだった。私が愛用した白タクの運転手は、当時軽のライトバンでタクシー業を営んでいたが、彼は外省出身者であった。彼の話によると、目抜き通りや大きなホテルの前のタクシーの溜まり場には外省出身者は客待ちを出来ないとの事だった。同じ時期に他の外省出身者が目抜き通りで客待ちをしていて、地元出身のタクシー・ドライバーと喧嘩になった。最後は殴り合いになったらしく、警察が来て取り調べた結果、外省出身者の方だけが連行され、「百叩き」にしたところ、運悪く死亡してしまった。私は目撃していなかったが、この事件に怒った外省出身ドライバー達が暴動を起こしたらしい。警察官は地元出身者なので、地元出身者を優遇するのが当たり前になっている。多分、仲間意識の様なものがあるのだろう。我々外国人には民間企業に見える様な大会社の多くが、国営企業であるか、民営化されても政府の意向に合わせて活動している会社が殆どだから、直接的には地元政府の意向が大きく働く。今回の判例が古い慣習に風穴を開ける切欠になれば、嬉しく思う。私自身、中国の歴史と中国人の多くが好きであり、「共産党」が権利も富も独占している状態が壊れて民主主義が定着する事を強く期待している。先ずは共産党自信が作った筈の「皆平等」の実践から始めるのは一筋の光明になる。(2014/09/13)

いずれ在中国の日系企業も募集要項に「国籍不問」と掲げなければならない日が来るんでしょうね。(2014/09/12)

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