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「ギリシャのユーロ圏脱退容認」報道をめぐる心理戦争

2015年1月13日(火)

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 年明け早々、世界中の株式市場、金融市場を激震が襲った。「ドイツ政府はギリシャのユーロ圏脱退を許容する方針を持っている」というニュースや原油価格の下落が原因となって、1月5日と6日に、各国で株価が下落。6日の東京株式市場は全面安となり、日経平均株価が500円以上値下がりした。

メルケル政権の「転向」

 いま欧州の政界、金融業界、論壇は「Grexit(ギリシャのユーロ圏脱退)」に関する議論でもちきりである。

 引き金となったのは、ドイツのニュース週刊誌「シュピーゲル」が1月5日号に掲載したスクープ記事だ。その要旨は、1月3日の夕刻に電子版で発表された。同誌は、次のように報じた。「メルケル首相とショイブレ財務大臣は、万一ギリシャがEUの求める緊縮策や経済改革を拒絶し、ユーロ圏を脱退しても、通貨同盟全体が崩壊することはないという見解を持っている。その理由は、通貨同盟が、危機的な状況に対応できる能力を以前に比べて増したからだ。このため連邦政府部内では、ギリシャがユーロ圏を脱退する道を選んだ場合のシナリオが検討されている」。

 さらに同誌は、「急進左派連合のアレクシス・ツィプラス党首が1月25日の総選挙で首相になり、緊縮政策や経済改革を取りやめ、利払いを拒絶するという公約を実行した場合には、ギリシャのユーロ圏脱退はほぼ避けられないだろう」とコメントしている。

 もちろん、メルケルやショイブレがギリシャの脱退を許容すると言ったわけではない。しかし1月4日の記者会見でシュテフェン・ザイバート報道官は「ドイツ政府のこれまでの方針に変更はない」と述べたものの、記事の内容を全面的に否定しなかった。このため、外国為替市場の参加者は、「ギリシャがユーロ圏を脱退するというシナリオが現実味を増した」と解釈。ドルに対するユーロ安傾向に拍車がかかるなど、マーケットが動揺する兆候を見せ始めた。さらにギリシャや他のEU加盟国の間でも、「この時期にギリシャ脱退について憶測するのは、無責任だ」という批判が出始めた。ツィプラスは、「ドイツ政府はギリシャ脱退というおとぎ話を流布している」とメルケル政権を非難した。

 このためメルケルは1月7日に訪問先のロンドンで声明を発表した。「ギリシャ国民はこれまで困難な道を歩み、大きな成果を挙げてきた。我々は今後も、ギリシャ国民とともにこの道を歩み続けると確信している。その際に必要なものは、EU加盟国の連帯と、ギリシャ政府の自助努力だ」と述べ、将来もギリシャがユーロ圏に残ることを希望するという態度を表明した。

 報道官のザイバートは このメルケルのコメントの動画をツィッターに公表するとともに、「連邦政府はギリシャ脱退に関する憶測には加わらない。連邦首相府で指導的な立場にある政治家たちの手元には、ギリシャ脱退に関するシナリオはない」と付け加え、市場の鎮静化に努めた。

 シュピーゲルの記事は、誤報だったのだろうか。筆者は、そうは思わない。メルケルとザイバートが発表したのは、政府の公式見解つまり建前である。

 連邦首相府の職員数は450人。連邦財務省では1900人が働いている。そこでは日々様々な分析や研究を行っているが、首相や報道官がその内容の全てを公にするわけではない。

コメント4件コメント/レビュー

ギリシャの破綻問題が発生した当初から、EUはギリシャを脱退させるべきだと思っていた。ヨーロッパの南東端に位置するギリシャは観光以外にこれといった産業がなく、域内での対等の「Give and take」が成立しない。農業ですら優位性が無いのだから、EUの「お荷物」になるのは必至だ。例えば財政再建に一度は成功しても再び財政危機は遠くない将来に発生することは目に見えている。そんなギリシャにカンフル注射を打ち続けることに多くのドイツ国民は我慢できないだろう。注射代の多くをドイツが負担するからだ。ドイツは車を始めとする主要産業の域内における主要供給元となることで安定した基盤を築いているが、市場としての旨みもないギリシャは本音としては一刻も早く切り捨てたいところだ。他方ギリシャのEU離脱推進派である国家主義者たちも自分達が国際的には如何に無力であるか身を持って体験した方がギリシャの将来のためにも良いだろう。その点TPPは参加国の状況に応じた「差」を容認することを前提としているようなので、将来的にもEUとは違った方向に進むのだろうと考えている。(2015/01/13)

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「「ギリシャのユーロ圏脱退容認」報道をめぐる心理戦争」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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ギリシャの破綻問題が発生した当初から、EUはギリシャを脱退させるべきだと思っていた。ヨーロッパの南東端に位置するギリシャは観光以外にこれといった産業がなく、域内での対等の「Give and take」が成立しない。農業ですら優位性が無いのだから、EUの「お荷物」になるのは必至だ。例えば財政再建に一度は成功しても再び財政危機は遠くない将来に発生することは目に見えている。そんなギリシャにカンフル注射を打ち続けることに多くのドイツ国民は我慢できないだろう。注射代の多くをドイツが負担するからだ。ドイツは車を始めとする主要産業の域内における主要供給元となることで安定した基盤を築いているが、市場としての旨みもないギリシャは本音としては一刻も早く切り捨てたいところだ。他方ギリシャのEU離脱推進派である国家主義者たちも自分達が国際的には如何に無力であるか身を持って体験した方がギリシャの将来のためにも良いだろう。その点TPPは参加国の状況に応じた「差」を容認することを前提としているようなので、将来的にもEUとは違った方向に進むのだろうと考えている。(2015/01/13)

ドイツはユーロに見切りを付けてマルク復活をすれば良いと思います。日本円とフェアに戦えますし。(2015/01/13)

EUの現状を見るにつけ、ギリシャの放漫よりもドイツの傲慢に危険なものを感じている。人口に膾炙する正しさを「正しい」と大声で言うことは果たして正しいことなのか。自分の物差しだけで他人を測ることが問題の根源にあることは、世界がイデオロギー対立から民族主義の台頭へと変遷するにつれ、よりリスクが増大しているように思われる。(2015/01/13)

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