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赤い帝国主義下の言論出版統制

作家たちは権力とせめぎ合い、自粛心と戦う

2015年6月3日(水)

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 今、北京にいる。知日派知識人と待ち合わせをしていたが、待ち合わせ場所に彼がなかなか現れない。さすがに約束の時間になって一時間が過ぎると、心配になってきた。なにせ、天安門事件26年目の記念日まであと5日という敏感な時期であり、しかも習近平政権の「知識人狩り」の凄まじさは、以前にこのコラム欄で紹介した通りである(「習近平の知識人狩り、希望を粛清」参照)

 ちょうど携帯電話を買い替えたばかりで、彼の携帯番号を新しい携帯電話に入れておくのを忘れていたので、電話で安否を確認できなかった。連絡が取れないまま、ヤキモキしていると彼が一時間半遅れて、謝りながらやって来た。遅れた理由は、次に出版する本に関して、いきなり出版社から呼び出されたのだという。「一番大事な一章をまるまる削らないと、検閲審査が通らないと言われて、もめていました。いきなり約束もなく、出版社の社長が訪ねてきて。連絡もできずにすみませんでした」という。

 彼は「中国は、あと2、3年もすると出版社は全部つぶれるんじゃないですかね。今、本を出すことはものすごくリスクが高い。出版社にとっても、ほとんどリスクだけで利益はでません。中国の出版市場はおそらく出版史上、もっとも暗黒時代を迎えていますよ」と、ため息をついていた。

自分の中に生まれた「自粛の心」こそ怖い

 こうした息苦しさを訴える知識人たちの言葉を、今回の中国旅行中に何度聞いたことか。

ある作家はこういっていた。「恐ろしいのは自分の中に自粛の心が出て来たことだ。賞をとり、大学の職を与えられ、安定した収入も約束され、息子たちが結婚して家庭を築くようになると、(当局の怒りを買うかもしれないというリスクを負って)自分の書きたいものを書くには、捨てなければならないものが多すぎる。だが、そうして筆を緩めることは、読者に本当に伝えなければならないもの、意義あるものを書けないということだ。自分が過去に書いたものを超える納得できる作品を生み出せる体力気力がもつのは、あとせいぜい10年くらい。これから、いかに自分の心と闘いながら、書いていくかが、作家としての真価が問われる」。

 メモを取るような場面ではなかったので、発言は私の記憶である。本当に恐ろしいのは、検閲そのものではなく、検閲を避けようとする自分の心だ、というのは心にしみるメッセージだった。

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「赤い帝国主義下の言論出版統制」の著者

福島 香織

福島 香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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