専門職大学院は、より多様な業種・職種の第一線で活躍できるように、バラエティーに富んだものになっている。主な専門職大学院をおさらいしてみると、ページ下部のようになる。
MBAは最もポピュラーだけに、競争も激しい。例えば、グロービスはビジネススクールとして出発、2006年専門職大学院「グロービス経営大学院」を教育特区の株式会社で立ち上げた。その実績を踏まえ、学校運営上有利な学校法人化を2008年4月に実現すべく文部科学省に申請、勢いに弾みをつける。

ここにきて目立つのは、ユニークな教育内容の専門職大学院の登場だ。
例えば、2006年度の新設では、起業家養成を視野に入れた事業創造大学院大学、ファッション業界に関するマネジメントを学ぶ文化ファッション大学院大学など、従来とは一味異なる領域を対象とする専門職大学院が誕生している。
特に目を引くのが、映画専門大学院大学だ。近年、邦画の集客数は好調で、欧米からも高い評価を受けている。にもかかわらず、映画界全体では完全に輸入超過の状況にあり、ビジネスの観点からは成功しているとはいいがたい。プロデュース力のある人材を養成するため、企画開発、資金調達、著作権、配給、マーケティングなどに関する実践的なカリキュラムを重視する。最近では、街おこしの一環として、映像コンテンツを活用するケースも増えており、海外市場への目配りだけでなく、幅広いタイアップ能力を備えた人材の育成が期待される。
2005年6月に政府がまとめた「知的財産推進計画2005」によると、今後10年間で、知的財産の保護・活用に携わる人材を12万人へと倍増させる方針が掲げられている。模倣品の氾濫や、日本固有の技術の流出など、日本企業は知的財産に関して深刻な被害を受けており、その現状を憂慮して打ち出された方針だ。これを受けて知的財産法を総合的な見地から教える大学院が出現。2006年度に設置した国士舘大学をはじめ今後、同様の狙いを持つ専門職大学院は増加していくと思われる。

*図をクリックすると拡大表示されます
〈表1★〉に示した2007年度の新設校に目を移すと注目されるのは、東海大学に開設された「組込み技術研究科」だ。組込み技術とは、特定のアプリケーションに特化した処理を行わせる技術のこと。今や自動車、家電製品、医療機器など、あらゆる製品が組込みシステムによって実現されている。だが、経済産業省の調査によると、現時点で日本では9万人以上も組込み技術者が不足しているとされている。この分野の人材養成は緊急課題であることから、日本経団連が同校を拠点校に選定。企業からの講師派遣、教材提供、インターンシップの支援など、様々なサポートを行っている。
日本のビジネススクールの先駆的存在である慶應義塾大学が時代のニーズに即応して専門性の高いマネジメント分野でスキルアップを図る大学院を2008年度に新設する。メディアデザイン研究科は「デジタルメディア・コンテンツや、デザインマネジメントの領域において、価値あるコンテンツを創造できる人材」を養成する。システムデザイン・マネジメント研究科は「新しい技術システムを提案、実現して、新規マーケットを創造し、それを基に事業を運営するシステムデザイナー」および「大規模プロジェクトの構想、デザイン、組立、運用、廃棄の全プロセスに関する見通しを持ったプロジェクトマネージャー」の養成が狙いだ。

教育改革、教育再生が叫ばれる中、2008年度に開設される専門職大学院として、脚光を浴びているのが教職大学院だ。
教職大学院とは、いじめ、不登校、学級崩壊、学力低下、理数系離れなど、山積する学校現場の課題に立ち向かうスクールリーダーの養成を目的とする専門職大学院だ。〈表2★〉に示した通り、国公立を中心として、数多くの大学で設置が構想されている。
団塊の世代が退職期を迎え、これからしばらくは教員の大量採用が続く。それを大学新卒者だけでまかなうのは困難。教職大学院には社会人の入学も期待されており、社会人特別枠の設置を検討しているところも少なくない。多様な就業経験を持つ学生が集まることによって、数多い学校現場の問題解決方法を様々な視点から探ることができるメリットも大きいはずだ。

社会人の中には、学びの意欲は高くても、通学は困難というケースも少なくないだろう。
そんな人にとって朗報となるのが、通信制の大学・大学院の増加だ。
特に、すべての授業をインターネットを使って学ぶ大学として話題を集めたのが、2007年度新設のサイバー大学だ。パソコンから大学のサーバーにアクセスして再生するため、24時間いつでも受講、繰り返し学習できる形態をとっている。もちろん、パソコンとブロードバンド回線さえあれば、国内外を問わず、どこからでもアクセスできるロケーションフリーな授業を実現している。考古学者の吉村作治氏が学長に就任したことでも話題を呼んだ。
日本で最大規模の通信制教育機関である放送大学でも、マネジメント能力養成に特化した「実践経営学プラン」を開設するなど、社会人のニーズに応えたプログラムの提供に力を注いでいる。
通称はビジネススクール。経営学系の専門職大学院の主流を占める。実際の企業事例をテキストとして、討論により問題解決方法を探るケースメソッド(あるいはケーススタディ)という授業スタイルを中心として、経営実務を実践的に学ぶ。かつてはMBAを取得する場合、欧米の大学に留学するのが一般的だったが、近年は日本の大学でもMBAを取得できるところが増えている。
科学技術が分かるビジネスパーソンと、マーケティング・物流管理・会計などの経営実務に明るい技術者の双方を養成するのがうたい文句。
弁護士、検察官、裁判官など、法曹を目指す人のための専門職大学院。今後、新司法試験を受験するためには、ロースクールを修了することが条件になる。国際間の訴訟、IT関連の紛争、医療過誤など、法律問題の複雑化に伴って、多様な専門分野の人材が求められているため、社会人も数多く入学している。多くの大学が一斉に新設し、旋風を巻き起こしたが、新司法試験の合格率は今年度以降20〜30%程度になると予想されており、ロースクールを修了しさえすれば合格できるような安易なものではないことは覚悟しておく必要がある。
会計分野の専門職大学院。1990年代から日本で進行している時価会計や連結決算の本格導入などの会計制度改革や、会計のグローバルスタンダード化に対応できる人材の養成を目標にしている。