
1899年、31歳になったアウグスト・ホルヒ博士(Dr.August Horch)は、自らの名を冠したホルヒ社を設立。修理を行う整備工場としての実績を積み重ね、わずか2年後の1901年には、画期的な試作第1号車を完成した。しかし、1909年、資金に糸目をつけない強硬な開発姿勢が経営陣と対立。信念を貫くために自ら設立した社を潔く退き、新会社アウディを設立した。
1932年、「ホルヒ」「ヴァンダラー」「DKW」「アウディ」の4社が参加してアウトウニオン社を結成し、現アウディ社の礎を築いた。その4社統合のシンボルこそ、フォー・シルバー・リングスである。
ホルヒ博士の工場では、フェルディナント・ポルシェの設計によって、アウトウニオンPヴァーゲンと呼ばれるレースマシンを開発。驚異のV型16気筒DOHCエンジンは295psを放ち、たちまちレースを支配した。
また、世界初の大規模な風洞実験やクラッシュテストなど、今では当然となった開発手法は、実は30年代にアウディが世界に先駆けて導入したものである。
そして37年には、ベルント・ローゼマイヤー操るType C Streamlineが、公道で406.321km/hを突破。人類史上初の400km/hオーバーを達成する快挙を成し遂げた。
ドイツ語で“聞く”の意味を持つhorchenの派生名詞Horchに相当するラテン語こそ『Audi』である。既成概念にとらわれず、常にその先へと耳を澄ます。「レースは技術の実験室である」という理念のもと、時には自らがレースドライバーになり、クルマの未来へと信じる道を真っすぐに走り続けた。

アウディの先進テクノロジーを語る上で忘れてはならないのは、「quattro」フルタイム4WDシステムだ。
クワトロは路面状況に合わせて4輪のトルクを自動配分する仕組み。グリップ力が確実に伝達されることで、雪道や凍結路面などの悪路走破性はもちろん、揺るぎない高速安定性と鋭いコーナリングを生む。例えば、タイヤがスリップしてトルクが伝わらなくなると、そのトルクが駆動力の良好なタイヤに自動的に分配される。つまり、グリップが維持されているタイヤが1本だけになっても駆動力が確保されるという優れたシステムである。
「軍用車の技術を乗用車にも転用できないか」という一人の技術者の発想から開発が進められ、1980年のジュネーブ・モーターショーにおいて、世界で初めてフルタイム4WDを搭載した量産型乗用車「アウディ クワトロ」が発表された。
81年には世界ラリー選手権(WRC)に参戦して圧倒的な戦闘力を見せつけ、翌年には早くもチャンピオンに輝いた。その後、ライバルチームがこぞって4WDを採用するなど、レースシーンに大きな影響を与えた。
アウディの独走を抑えるために、90年代には様々なレースでルール変更やレギュレーション変更が行われ、4WDでの参戦が禁止されることもあった。クワトロの卓越したパフォーマンスが、モータースポーツ界では脅威だったことがうかがえる。

アウディの飽くなきチャレンジスピリットが息づく先進のパワーユニットが、FSIエンジンである。
FSIエンジンが高回転域に入ると、インテーク・マニホールド内の“チャージ・フラップ”が開き、マニホールド断面いっぱいの大量の空気が燃焼室に取り込まれる。
そして空気を吸入する時、シリンダー手前の吸気ポートを迂回することなく、高圧をかけてシリンダーに燃料を直接噴射し、渦流の効果で一気にスパークプラグ周辺へ濃密かつ均質な混合気を集中させる。
これによってムダのない燃焼を実現し、パワーの向上と低燃費という相反する事象を両立させている。燃焼室形状と寸法、エアフロー、混合気量、噴射方向、噴射タイミング、噴射圧の最適化。これらすべての連携によって、ガソリンの一滴一滴から最大限のパワーを生み出す最適なソリューションといえる。
FSIテクノロジーのパフォーマンスと信頼性は、モータースポーツで実証されている。ル・マン24時間耐久レースでは、Audi R8が2000年〜2002年において3連覇を果たすとともに、2004年には日本のAudi Sport Japan Team Gohが表彰台の頂点に立っている。これらの強靭な走りを支えていたのがFSIエンジンである。

先進技術をよりシンプルに、そしてよりエモーショナルに進化させるために、多彩な機能を凝縮したのがMMIである。
すべての操作は、自然に届くMMIターミナルで行う。スイッチ類は人間工学および人の思考ロジックに合わせて精緻にレイアウトされているので、操作にはすぐに慣れることができる。
MMIターミナルのファンクションセレクターボタンを使って、様々な機能を瞬時にディスプレーに呼び出すことができる。ラジオ/CD/MD/TVを統括する「エンターテインメント」、ハンズフリーフォンを操る「コミュニケーション」、ナビゲーションを操る「インフォメーション」、車体の諸機能を調整する「コントロール」。各機能はグループごとにディスプレー上に色分けして表示されるので、説明書を読まなくても直感的な操作が可能で、運転に集中することができる。
アウディは自動車メーカーで初めて「触感開発チーム」(the haptics team)を設立した。触感は、皮膚内部の器官を通して得られる感覚で、これを科学的に研究するのが触感学。こうした研究の成果として、MMIにおいても、1/100mm以下の凹凸さえも識別するデリケートな指先にしっくり馴染むような触感を実現している。
インテリアの触感特性や人間工学特性でも、アウディは世界最高水準にある。

アウディは今や、ほぼすべてのメーカーが採用している直噴ディーゼルエンジンのパイオニアとして知られている。TDIエンジンは、ダイレクトインジェクションと電子式エンジンマネージメントを導入したディーゼルエンジンで、アウディ最初のTDIエンジンは1989年に発売された。それ以来TDIは経済性とFun to Driveの同義語として知られるようになった。
このTDIテクノロジーは、25年以上の歴史を誇るクワトロ・フルタイム4WDシステム、そして10年以上のアルミニウムおよび軽量構造デザインとともに、アウディのコアとなる技術革新の優位性を代表する一つである。
Audi R10 TDIは現在、アメリカン・ルマン・シリーズ(ALMS)において旋風を巻き起こしている。9月1日、デトロイトの新市街地サーキットで開催された第10戦で、アウディはルマンプロトタイプレースの最高峰であるLM P1 カテゴリーで記念すべき20連勝を飾り、同時にシーズン終了まで2レースを残した状態で、8回目のマニュファクチャラーズタイトルを獲得した。
さらにAudi R10 TDIは、2006年のルマン24時間レースでも初参戦で優勝。そして、豪雨などコンディションの厳しいレースとなった今年も見事に優勝し、R10 TDIでの2連覇を達成した。インゴルシュタットの革新的なディーゼル・スポーツカーは、ルマンでは無敗となる。

世界的に好調なアウディの原動力の一つとして、アウディ独自のデザイン哲学が挙げられる。
シングルフレームグリルは力強さと躍動感にあふれ、新たな価値の創造、アウディのブランド改革を象徴している。
また、どのモデルも滑らかで美しいフォルムを描いている。これまでのデザインは上品で控え目だったが、プレミアムカーとしての上質感を残しながらも、スポーティー感あふれるデザインに変貌を遂げている。
デザイナーの採用はグローバルで、国籍を問わず世界中から実力者が参画している。例えば、アウディA6、Q7、そしてA5のエクステリアデザインをまとめ上げたのは、アウディデザインでシニアデザイナーを務める和田 智だ。ブランド哲学を熟知して、そこに『革新性』をブレンドして時代に合った商品に進化させていく。こうしたプロたちの情熱が、アウディのブランド・クオリティーを支えている。