三井住友アセットマネジメントは2008年1月26日(東京)、2月2日(大阪)で、アジア・中国投資セミナー「アジア・中国経済と株式市場の魅力に迫る!」を開催する。このセミナーで「21世紀世界経済を牽引するアジア経済の魅力」について基調講演する、BRICs経済研究所 代表の門倉貴史氏に、現時点でのアジア・中国経済の動向について話を聞いた。新興国経済に詳しい門倉氏は、経済成長の原動力、米国のサブプライムローン問題の影響、人民元の切り上げ、中国の引き締め政策など多岐に渡る中国・ASEAN(東南アジア諸国連合)経済の現状を分析・展望し、「日本の個人投資家は、中国・ASEAN株式への投資により、中長期的に日本や欧米の株式を上回る収益の確保を期待できる」と結論付けた。
中国とASEANは今後も高い成長を続け、21世紀の世界経済を牽引することになるでしょう。高成長の原動力として第1に挙げられるのは、圧倒的に大きい人口規模です。中国が約13億人、ASEANが約6億人の人口を抱え、しかも若年層の労働力は増加しています。この潤沢な労働力が、生産と消費の両面で巨大な経済圏を形成する武器になると考えられます。
第2の原動力は、豊富な天然資源に恵まれていることです。エネルギーをはじめ天然資源の需給が逼迫している状況下にあって、中国とASEANは資源の活用によって高い経済成長を達成することが期待されます。第3は、質の高い労働力を供給できることです。新興国の成長には外資の導入が不可欠ですが、人材の水準において中国とASEANは他の新興国に比べて非常に有利な立場にあります。
中国経済は、上海万博が開催される2010年まで実質GDP成長率が年10%前後の高い成長を続けると予想します。2010年以降は、北京オリンピックと上海万博というメガイベントの効果が薄れることから成長率が鈍化する可能性があります。人口増加と資本蓄積のテンポから、インフレにつながらない中国の実質成長率は2010年より数年間、7%程度と見ています。2010年以後の中国の経済成長は、その水準に落ち着くことになるでしょう。
世界経済への波及が心配されているサブプライムローン問題については、中国の実体経済に与える影響は限定的と考えています。対米輸出が落ちても、世界経済の多極化によって輸出全体の伸びは続くとみられるからです。金融セクターのダメージも、欧米や日本に比べ軽微でしょう。


米国などが要求している人民元の切り上げに関しては、中国は元の上昇を容認するスタンスに変わっています。元の上昇は輸出企業には痛手ですが、景気の過熱でインフレ圧力が高まっている現在、元高による輸入物価の下落はインフレ対策上望ましいと受け止められています。今のような形で元を緩やかに上昇させ、適当な時点で変動相場制に移行すると予想します。その時期は、経済成長が最も高まる北京オリンピックと上海万博の間ではないでしょうか。
景気の過熱に対処して中国政府は2003年から引き締め政策をとってきました。しかし、業種によってはその効果が出ているものの、全体としては過熱気味の景気が続いています。これは、オリンピックと万博のインフラ整備に関連する建設投資が高水準にあることに加え、沿岸部を中心に消費が好調であるためです。
不動産価格の高騰を抑制するため、中国人民銀行は2軒目の家屋購入には頭金の比率を引き上げるなど、融資規制を強化しています。ポイントは過熱する景気の調整がどう進むかですが、不動産価格の暴落や景気の後退というハードランディングは避けられるでしょう。現在、金利は7%台と高い水準にあり、財政にも余裕があります。このため、引き締め強化の影響で景気が急激に減速するような事態になれば、財政金融政策を総動員できるからです。
環境問題が中国経済を左右する要素に見られていますが、中国は2006年からスタートした第11次5ヵ年計画で、高い経済成長よりも環境への配慮や資源効率の向上を実現する方針を打ち出しました。中国では温暖化ガス排出量の高い伸びが続いていますが、今後は日本など先進国がCO2排出権取得のために技術や資金を供与し、排出量削減に協力する流れが強まるでしょう。環境問題が成長の足かせにはならないと思います。


ASEANは、域内と中国に対する貿易の拡大により高い経済成長を続ける見通しです。2001年12月に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟した当時には、外資が中国に流れることによって、ASEANは競争上不利になると見られていました。しかし、今では中国が最終消費地として台頭してきたことによって、ASEANは中国への輸出拠点として拡大してきています。
中国の高成長は、さまざまな形でASEANの経済を牽引しています。例えば、中国では成長を主導した沿岸部などで労働コストが上がってきたことから、中国に進出していた外国企業がベトナムに移るという動きが目立っています。また、中国とインドはASEANを経済のパートナーにすることで競争しており、この点でもASEANは有利な立場に置かれています。
1997年に発生したアジア通貨危機では、タイのバーツ暴落がその発端になりました。しかし、当時に比べるとASEAN経済のファンダメンタルズは大きく改善しています。また、多くの国で経常収支の黒字が拡大し、外貨準備高が増加しています。このため、アジア通貨危機のような状況が再び起きる可能性は低いと思います。
中国とASEANの株価は、2005年後半から急ピッチの上昇を続けてきました。経済が非常に好調なので、それを反映して株価が値上がりするのは自然な流れなのです。しかし、例えば中国の資産市場が過熱していることは否定できません。現在、中国株式は金融引き締めの強化やサブプライムローン問題などによる調整局面にありますが、強いファンダメンタルズに支えられているので、日本のバブル崩壊のような大規模な調整になる可能性は低いと考えています。
個人投資家が投資対象として中国とASEANの株式を考える場合、中長期的な投資価値は高いと判断しています。株価の裏付けになる経済が先進国に比べてはるかに高い成長を続けるため、欧米や日本の株式より優れたパフォーマンスを期待できるからです。中国とASEANへの株式投資によって、日本の個人投資家は、中長期的には株価の値上がり益と為替差益を得ることが期待できるでしょうね。




