江口:小林製薬株式会社の事業内容を教えてください。
小林:家庭用品の製造販売事業と、医療機器事業の2つを中心に事業を展開しています。家庭用品というのは、市販の医薬品などのヘルスケア用品と、芳香・消臭剤などの日用品です。医療機器事業では、整形外科で骨折した時に埋め込む骨接合材や、手術用の電気メスなどを扱っています。
江口:小林製薬さんと言いますと、洗眼薬の「アイボン」や、口中清涼剤の「ブレスケア」、トイレ用芳香洗浄剤の「ブルーレット」など、それまでになかったジャンルを開拓して、次々とヒット商品を出している会社、というイメージがありますね。
小林:小林製薬では「人と社会に『快』を提供する」を経営理念に、「“あったらいいな”をカタチにする」をコーポレートブランドスローガンに掲げています。お客様が「あったらいいな」と思うような製品を創り出していくメーカーであるためには、単なる「顧客志向」というだけでは、お客様にご満足いただけません。「並外れた顧客志向」で、製品の開発に取り組んでいます。
江口:耳鳴りを改善する「ナリピタン」や、脂肪の分解・燃焼を促す「ナイシトール85」など、ユニークな製品を発売しておられますが、開発にあたって心がけているのはどのような点でしょう。
小林:一般に製品開発では「こんな技術があるから、これを使って新しい製品を開発しよう」と考えるものですが、小林製薬の場合は「まずニーズありき」です。お客様が生活の中で困っていることを、懇切丁寧に拾い上げて、それを解決するアイデアを考える。そのアイデアにどのくらいの市場性があるのかを調査して、見込みがあれば製品化に着手します。私たちのポリシーは「Something New, Something Different」です。少しでも新しいもの、少しでも他とは違うものを製品化することを心がけています。こうした製品開発の結果が、ニッチ市場の開拓につながっているのだと思います。
江口:製品名も独特ですね。何か理由があるのですか。
小林:「わかりやすいこと」が共通コンセプトです。何に使うのかすぐわかるネーミング、見ただけで何の商品かすぐわかるパッケージ、CMも使い方をわかりやすく伝えることを重視しています。
江口:私も小林製薬さんの「のどぬ〜るぬれマスク」を愛用しています。仕事柄、飛行機や新幹線での移動が多いので、乾燥で喉を痛めないようマスクをつけることにしているのですが、このぬれマスクは便利ですね。加湿器を置いていないホテルに宿泊する際も重宝しています。
小林:ありがとうございます。
江口:この「のどぬ〜るぬれマスク」という製品が誕生した経緯は、どのようなものだったのでしょうか。
小林:ある時、私の方から開発チームに「一度、商品開発という視点で、ドラッグストアの店頭を見て来て欲しい」というお願いをしました。そこで開発チームは「店頭に濡れたマスクが一つもない」ことに気づいたのです。そこから、マスクの中に何か湿ったものが入っていたら、のどが乾燥しなくて済むのではないかというアイデアが生まれました。調査をしてみると、のどの乾燥に困っている人が多いこと、とりわけ「朝起きると、のどがヒリヒリする」と訴える人が多いことも分かりました。ちょうど同じ頃、小林製薬のあるOBの方からも、「濡れたマスクを作ってみてくれないか」という話が持ち込まれていました。こうした経緯から、「就寝時ののどの乾燥を防ぐ、ぬれフィルター入りのマスク」という新製品を開発することにしたのです。
江口:ご苦労された点などはありますか。
小林:一番気を使ったのは、マスクの安全性です。万一窒息したりするようなことがあってはなりませんから、マスク本体はできるだけ薄くし、ぬれフィルターは鼻の部分をくり抜いたり、大きな穴をいくつも空けたりして、息苦しさを緩和しています。無呼吸症候群の方が使っても大丈夫なのか、といった点についても、耳鼻咽喉科の先生をはじめ専門家の方々のご意見を伺いました。
江口:製品名もズバリ「ぬれマスク」。とても分かりやすいですね。
小林:「シンプル・イズ・ベスト」が基本ですから。そこに、のどをケアする「のどぬ〜る」シリーズの関連製品だと分かるように、冠ブランド「のどぬ〜る」を付けました。
江口:当初はつけているとマスクの内側が毛羽立ってしまって、私はそれが苦手だったのですが、ある時から急に毛羽立ちがなくなりましたね。
小林:愛用してくださっているだけあって、よくご存知ですね。マスクの肌触りに対するご要望が多く寄せられましたので、昨年改良しました。
江口:いったん開発した製品でも、地道に改良するという姿勢が、消費者の心を掴むのでしょうね。


