

少子化の影響で、大学は厳しい時代を迎えている。都市部のブランド大学の志願状況が好調な一方で、地方の小規模私立大学は苦戦しており、「二極分化」が進行。定員割れの私立大学は約4割に上っている。強いところはさらに強くなる戦略を、がけっぷちに立たされたところは生き残りのための打開策を模索する。大学改革の最前線を追ってみることにしよう。
2008年度の高校卒業者数は、約109万3000人で、前年より約5万5000人減少した。このことから、大学志願者数は大幅な減少もあり得ると予測されていた。だが、実際には、意外な志願状況になっている。
文部科学省によると、08年度の国立大学志願者数は約36万6000人で、前年を0.8%下回ったものの公立大学志願者数は約12万2000人、前年比1.8%増となり、国公立トータルでは0.2%減とほぼ前年並みを維持した。
一方、私立大学は、河合塾の情報誌『ガイドライン』の集計(493大学調査)によると、志願者数約257万5000人で、前年より約3万7000人、1.4 %の増加になっている。
このデータを見て「大学全入時代の到来と言われていたが、まだ大丈夫な状況ではないか」ととらえる向きもあるかもしれない。だが、子細に見るとそれほど楽観視できる状況ではない。極端な「二極分化」が進行しているのだ。
端的な例が首都圏・近畿圏の有名総合大学と、それ以外の小規模校との格差である。早慶上理(早稲田、慶應、上智、東京理科)、MARCH(明治、青山、立教、中央、法政)、日東駒専(日本、東洋、駒沢、専修)、関関同立(関西学院、関西、同志社、立命館)、産近甲龍(京都産業、近畿、甲南、龍谷)といったブランドで有名な21大学の08年度の志願者数は132万4734人。前年より6万8511人、5.5%も増加している(河合塾調べ)。しかも、この21校の志願者数は、私立大学トータルの志願者数の51.4%を占めている。都市部の知名度の高い大学に受験生が集中しているわけだ。
これに対し、地方の小規模大学は志願者確保が難しい局面を迎えている。
日本私立学校振興・共済事業団の調査によると、07年度の定員割れになった大学は前年と同数の221校、全大学の39.5%を占めている。
短大はさらに厳しく、定員割れ校は31校増えて225校。全短大の61.6%に上っており、初めて6割を超えた。
もちろん、こうした状況に大学側も手をこまねいているわけではない。様々な改革を進めている。

特に、「攻めの改革」として注目を集めているのが「大学統合」だ。
先駆けとなったのは、独立行政法人化で危機感を抱いた国立大学だ。02年度の山梨大学と山梨医科大学、筑波大学と図書館情報大学を皮切りに、統合が相次いだ。
続いたのが公立大学。05年度に、首都大学東京(東京都立大学+東京都立科学技術大学+東京都立短期大学+東京都立保健科学大学)、大阪府立大学(大阪府立大学+大阪女子大学+大阪府立看護大学)と、東京、大阪の公立大学が統合された。その動きは続いており、08年度には長崎県立大学(長崎県立大学+県立長崎シーボルト大学)、09年度には千葉県立保健医療大学(千葉県立衛生短期大学+千葉県立医療技術大学校)、愛知県立大学(愛知県立大学+愛知県立看護大学)といった統合が予定されている。
私立大学でも、08年度の慶應義塾大学と共立薬科大学、09年度の関西学院大学と聖和大学、武蔵工業大学と東横学園女子短期大学(東京都市大学に名称変更)が予定されているなど、統合が活発になりつつある。
特筆しておきたいのは、これらの大学が、現時点で必ずしも志願者の確保に困っていないことだ。
それにもかかわらず統合を目指したのはなぜなのか。そこには長期的展望に立った、明確なブランドビジョンに基づいた戦略が感じられる。ビジョンなき改革は、受験生、保護者からも社会からも見放されかねない。
例えば、慶應義塾大学と共立薬科大学の統合は、双方の利害が完全に一致した形だ。チーム医療の充実が求められている中、慶應にとっては薬学部が加わるメリットは大きい。共立薬科にとっても、薬剤師養成教育の6年制移行に伴って、長期の病院実習が必要になっており、大学病院を擁する慶應のリソースが活用できる利点がある。
武蔵工業大学と東横学園女子短期大学が統合されて誕生する予定の東京都市大学も、教育・研究両面で飛躍が期待できる。これまで武蔵工業大学が培ってきた「ものづくり」技術に東横学園女子短期大学の人文・社会系の感性が加わるユニークな組み合わせで学際的、総合的な研究を活発化する。
関西学院大学と聖和大学の統合は、関西学院が掲げる長期的ビジョンを推進する上で意義が大きい。関西学院は08年度に初等部を開校したが、これまで小学校教員養成の課程を設置していなかった。そこに幼稚園・小学校教員、保育士などの養成に定評のある聖和大学の知的資源を活用できる。統合に伴って、09年度に教育学部(幼児・初等教育学科、臨床教育学科)の新設を構想しているほか、聖和大学の付属幼稚園が傘下に加わることによって、幼稚園から大学院までの一貫教育が可能な総合学園へと生まれ変わる。
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