


今年、創立136年を迎えた立正大学。現在では8学部を擁する総合大学として発展している。その立正大学が新しいブランドビジョンとして掲げたのが「『モラリスト×エキスパート』を育む。」だ。このビジョンにはどのような思いが込められているのか。具体的にどのような教育システムに反映しようとしているのか。髙村弘毅学長に話を聞いた。![]()
文学博士 1982年立正大学文学部教授(専門は地下水学、自然地理学概論など)。 地球環境科学部教授、同学部長などを歴任、2004年立正大学学長に就任、現在に至る。アフリカで深刻化する砂漠化の問題に詳しく、教育を通じての支援を進めている。
― 新しいブランドビジョンを打ち出された狙いは何ですか。
髙村 大きな背景には、少子化に加えて国立大学と私立大学の競争が激化、私立大学は何をもって存在意義を主張するかを問われる時代があります。
本学の起源は1580年に日蓮宗の教育機関として設立された「飯高壇林」にさかのぼります。日蓮聖人の「立正安国論」が建学精神であり、校名の由来にもなっています。石橋湛山・第16代学長は、この建学精神を時代に即して「真実を求め至誠を捧げよう」「正義を尊び邪悪を除こう」 「和平を願い人類に尽くそう」と整理されました。
私たちは、この建学精神を誇りにしてきましたし、どんな時代、どんな世界にも通用する普遍的な哲学と確信しています。しかし壮大な哲学だけに、学生や社会の人々にとっては具体的にイメージしにくい面もあります。そこで、建学精神を教育・研究においてどう具現化するのかを明確にし、新しいアイデンティティーとして構築するために掲げたのが、「『モラリスト×エキスパート』を育む。」なのです。
― このブランドビジョンには、どのような意味が込められているのですか。
髙村 20世紀は、生活の快適性、豊かさが追求され、物質文化が形成された時代でした。それが人々に恩恵をもたらした半面、人間を含む生態系に“劇薬”として作用したことも事実です。環境破壊、モラルの喪失、メンタル面で問題を抱える人の増加など、様々な課題が噴出しています。
そうした現代に持ち越された20世紀の「負の遺産」を解決するためには、21世紀は新たな学問体系“ケアロジー”が必要と考え、ケアロジーという言葉を商標登録しました。今後、ケアロジー学の確立を目指して、教育・研究を推進していくつもりです。
― ケアロジーとはどのような学問分野なのでしょう。
髙村 地球環境の破壊、人間社会のモラルの乱れ、脆弱(ぜいじゃく)な心など、20世紀の「負の遺産」に対する総合的なケアに挑戦するのがケアロジーだと定義しています。人間系、社会科学系、地球系を中心に、多彩な学部を擁する本学のリソースを生かして「人間・社会・地球」の関係性修復を目指す研究を追究します。その意識、能力を備えた学生を社会に送り出すことを、本学ならではの付加価値にしていきたいと考えています。
― ケアロジーを学ぶ教育システムとしてはどのようなものがありますか。
髙村 2009年度から、全学部共通科目として「学修の基礎(仮称)」を開講する予定です。この科目では、建学精神そのものを学ぶ中で、モラルへの意識を深めていきます。とはいえ、がんじがらめのモラリズム教育に陥るつもりはありません。先述したように「深い教養を備えたうえでのモラル」、端的に言えば、「be gentlemen」の精神を身につけることが肝心です。
2年次では学部ごとの専門を通してモラルを学び、3年次以降の高度な専門研究は、その視点を大切にしながら深化していくことになります。
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