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多くの経営者は、積極的に投資すべき対象として IT を掲げています。
欧米と比べて、日本の IT 投資の現状をどう見ていらっしゃいますか――。

日本と欧米では、企業を取り巻く環境は違っています。ただ、それを考慮したとしても、日本のIT投資は遅れていると思います。ここに、アクセンチュアが主要企業の管理職に対して調査した結果があるので、ご覧に入れましょう。これによると、「企業全体で IT に基づく生産性が向上している」と回答している人の割合は、米国が全体の 75.5 % なのに対し、日本は 52 % に過ぎません。また、「IT 投資と経営目標の整合性がとれている」と感じている回答者の割合は、米国が全体の 83 % にも達しているのに対し、日本は 38 % と いう結果です。経営とIT投資がかみ合っていると実感している管理職が4割に満たないというのは、深刻な問題です。その企業にとって必要なIT投資が見えていない、ということですから。こういった状況を打破するには、経営者が社内外に向けて「 IT を使って企業を良くしたい」という強い意志をもっと表現することが必要ではないでしょうか。
経営者がしっかりとしたビジョンを持ち、トップダウンの形で IT 投資を積極的に進めることが重要ということでしょうか――。
ビジョンを持って取り組みなさいというメッセージは、古くから言われてきていることです。しかし、実際問題として、すべての経営者が IT に対する大きなビジョンを描くことは容易なことではありません。私は、この「ビジョンを持つ」という発想を、もっと身近に考えたらよいのでは、と思っています。「IT投資で社業をすべて変革しよう」というような大げさなことは考えず、1 つの目標でよいから明確にして、その実現を目指すことをお勧めします。例えば、「自社の商品をもっと高く売るために IT を使って何か付加価値を生み出したい」「コスト競争力が不足しているから IT を使って現在の半分の社員で業務を回せるようにしたい」「これから売り出す新商品を軌道に乗せるために IT を使って販売チャネルやブランド形成をしたい」というような具体的な目標です。経営者がこうした明確な目標を掲げれば、それを実現するために必要なことに投資されるようになります。「なんとかITを活用しなくては」というような漠然とした意識では、どこに投資すればよいかさえ見えてこないのです。
「戦略的にIT投資を活用したい」。経営者なら誰もがそう思うはずですが、実際はそうなっていないことも多いようです。どこに原因があるのでしょう――。
IT インフラの「リストラ」を実行できているかどうか、これが分かれ目です。アクセンチュアの調査によれば、システム機能の改訂や IT システムの運用保守など、経営的には価値を生み出さない固定的な IT 支出は、世界平均が IT 支出額全体の 53 % なのに対し、日本は76 % にも達しています。残りの支出が戦略的投資に回されるわけですから、同額の IT 支出額で比較すれば、日本の戦略的投資は世界平均と比べるとかなり少ないことを意味しています。そして、その大きな原因として考えられるのは、日本の企業に「負の遺産」がかなり残っているということです。
日本の企業は、既存の IT システムの統廃合や標準化が遅れており、IT インフラのコストが割高になっています。現状の IT インフラに対して新しいハードウエアやソフトウエアを導入したとしても、さらに複雑なシステムが出来上がるだけで、固定的な IT 支出はかさむ一方です。こうした状況の中では、まず何が負の遺産なのかをしっかりと認識し、これらを整理することが戦略的投資に振り向ける出発点となります。
「まだ使えるから」という理由で
ITインフラを整理統合できない経営者も多いのでは――。
私自身は、現在あるシステムをできる限り使いこなすべきだと考えています。しかし、同時にシステムを使いこなすことによって生まれる多額の固定的 IT 支出もしっかりと頭に入れておく必要があります。
技術は常に進歩しています。現状のシステムを生かしつつも、その先を見据えてIT環境を構築する視点が必要なのです。今使っているシステムの活用だけを考えると、最新の技術からは取り残されてしまいます。結局そのシステムを廃棄することになったとき、社内に残るのは何でしょう。古い知識とスキルしか持たない人材だけで、最新の技術を活用するのに、またゼロからの出発ということにもなりかねません。
リストラという言葉には少し後ろ向きのイメージを持たれるかもしれませんが、余裕がある時に IT インフラを整理しておかないと、景気が悪くなったときに企業経営の大きな負担となってしまいます。まだ使えるものを捨てるという決断は難しいことかもしれません。しかし、時として経営者はこのような潔い決断を迫られることがあります。経営者の役割とは、物事の優先順位を付けることです。企業にとって IT インフラのリストラが高い優先度を持つ以上、経営者はこうした事情を踏まえて強い意志決定を下さなければならないのです。
















