――早速ですが新市場NEO創設の狙いは何でしょうか。

当取引所は1949年に店頭市場として発足して以来、60年近く新興企業の発展に力を注いできました。そして今、上場会社は970社を超え、一つの区切りである1000社に近づいています。
一方、経済に目を向けると、グローバル化やIT化の進展などにより社会経済の構造が急激に変化している中、先端的な技術や新しいビジネスモデルが生まれています。そのような次世代の日本経済を担う可能性のある企業を支援するルートやプロセスが今、強く求められているのです。
当取引所の原点に戻って新しい企業を登場させるという使命をしっかり果たすには、ここで白紙からチャレンジすべきだと判断したのです。
こうした考えに立ち、成長可能性のある新しい技術又はビジネスモデルを持つ企業を支援するとともに、投資家の皆様に新たな投資機会を提供するため、新市場NEOを創設することにしました。NEOではイノベーションを創出し、新産業を創出していくような企業を見つけて、育て、守っていきたいと私は考えています。
――相次いだ不祥事により新興企業に対する投資家の信頼が揺らいでいますが、NEOは信頼回復のための新しい枠組みを導入していますね。

そうです。その一つが上場の前に行う外部専門家による技術評価です。成長可能性のある企業を見つけ、育てるには、上場前に当の企業が持つ技術やビジネスモデルをよく理解しておくことが不可欠です。
特に技術評価は当取引所だけでは不可能であるため、外部の力を借りることにしました。技術評価の仕組みは多層構造になっています。まず、新しい技術を持つ企業がNEOに上場申請する場合、企業は第三者による技術評価書類を含む資料を提出します。
受ける当取引所ではまず、第一次評価として複数の専門家にその技術の評価を依頼します。そして、その評価結果を「技術評価アドバイザリー・コミッティー」にかけます。ここで評価の評価をして、上場審査に生かすのです。このコミッティーは複数の権威ある専門家5名で構成されています。
――もう一つの新しい枠組みである「マイルストーン開示」の義務化についてお聞かせください。

NEOに上場申請する企業は上場審査のための資料として事業計画書を提出します。上場後において、事業の進捗状況や計画の達成あるいは未達の要因、今後の見通しとその前提条件などを開示することが「マイルストーン開示」です。これをNEO上場企業に対して、四半期ごとに行うことを義務づけます。
「マイルストーン開示」義務化によって投資家に十分な判断材料を提供し、企業の評価をしやすくしたいと考えています。また、こうした開示は上場企業が誤った事業運営に陥らないように上場企業を守ることにもなります。
――JASDAQとNEOはともに新興企業向けの市場ですが、違いはどのような点にあるのでしょうか。

この点について強調したいのは、JASDAQとNEOは上下の位置関係ではなく、並列した形でそれぞれが機能するということです。相違点は、この二つの市場がタイプの違った企業を対象にしていることにあります。
具体的には、JASDAQでは上場基準に利益や純資産の額が採用されており、企業の継続性及び収益性などが審査されます。このため、JASDAQ上場企業はある程度実績を上げている企業となっています。
これに対して、NEOでは研究開発型企業など実績がなくても成長可能性のある新技術や新しいビジネスモデルを持っている企業であれば上場できます。上場審査においては、「企業の成長性」が重視されるのです。
JASDAQとNEOは上場会社のタイプが異なるため補完関係が生まれ、両者を合わせて新興市場の発展に寄与できると考えています。
ただ、JASDAQとNEOの境目にある企業もあるでしょう。そのような企業は、これまでの実績か、それとも成長可能性か、どちらを投資家にアピールしたいかによって上場する市場を選ぶことになるでしょう。
――NEOの1年後の市場規模をどのように想定されていますか。今後の目標、あるいは将来像についてお聞かせください。
会社数や時価総額など市場規模は目標にしていません。過去において新興市場が投資家の不信を招いた一因は数の競争に傾斜したことにあるからです。
私がこだわるのはNEOへの上場を目指す会社が公開企業としてふさわしい理念を持っているかどうかです。そして、NEOに上場した会社がその後、どのように事業を展開していくかによってNEOの評価は定まるでしょう。
「マイルストーン開示」の義務化などの枠組みを導入している市場は世界にありません。当取引所は今後も新しいことに挑戦し、JASDAQとNEOを世界に誇れるような新興市場に育てていきます。