住宅への思いは人それぞれ、実に多種多様だが、その中心にあるのは、健康、幸せ、生き方など、人間の本質に迫るものではないだろうか。「こころとからだ」を癒し豊かな成長をもたらす、理想の住まいを得るために必要なのは、設備、環境、構造など、多面的なアプローチと、トータルに推し進めるプランニングである。
理想の実現に向けて、今から用意できることは何なのか─。千葉県南房総市に、こだわりのエコ住宅「エゴコロハウス」を建てた女優の益戸育江(旧・高樹沙耶)さんに、注力したポイント、苦労した点、住まいづくりの喜びなどを聞き、心身ともに豊かになるための住宅について探る。

「エゴコロハウス」の名前は、エコロジー=環境への配慮、エゴ=快適さの追求、そして絵心=美しい暮らし方の3つをもじったもの。環境にも住む人にも優しく、またスタイリッシュな住宅に仕上がった。
家は住む人の生き様が形になったもの だから妥協はできない
今や女優業だけでなく、フリーダイビングの第一人者として幅広く活動する益戸育江さん。エコロジカルな生活の実践者としても知られ、千葉県南房総市に建設した「エゴコロハウス」は、そんな彼女の生き方の象徴的な存在だ。
私の場合、自分の家を持ちたいというよりも、まず自給自足をして自然と共存できる、持続可能な生活を実践したかった。オーストラリアのマレーリーというエコビレッジで、持続可能な暮らしとはどういうものか、具体的に学ぶ機会がありました。そんなライフスタイルを日本で実現したいと考えたのが、エゴコロハウスを建設した理由です。
住宅は、住む人の生き様、生活における優先順位が形になったものだと思うのです。例えば、現代は「仕事を得やすい」「通学に便利」という理由から家を選ぶ人が多いような気がしますが、そのような条件も含め、その人が大切にしたいもの、どんな暮らしをしたいかということが、住まいには表れてくるのです。
私が住宅に求めた第一条件は、自然から搾取する一方ではなく、得たものを地球に返し、なおかつ自給自足ができることだったので、リサイクル可能な自然素材の使用や、生活水の循環、畑や田んぼとの隣接など、いくつも実現したいことがありました。でも、建築を思い立った2003年当時は、まだ世間ではエコ住宅が注目を集めていなかったので、私の考えを理解してくれる住宅メーカーや工務店、設計士がなかなか見つからなかったのです。本当は建設予定地である千葉県の南房総市で、その土地の気候風土を理解している方に頼みたいと思っていたのですが、実際には「エコハウス? 何ですかそれ」という感じ(笑)。作成してもらった図面も、普通の住宅と変わらず、お断りしたケースも数件ありました。でも、「持続可能な暮らしをすること」が目的なので、妥協はしませんでした。インターネットや本で調べたり、人に相談したりと模索し続けました。
そして構想を練り始めてから3年。知人からの紹介でようやく出会った設計士は、なんと鹿児島の方でした。施工に関しては、ソーラーシステムの経験が豊富な地元の工務店を紹介してもらい、ようやく着工にたどり着けました。
計画段階から完成まで、安心してゆだねられる相手を探すのが、結局は一番大変でしたね。

益戸育江 (ますど いくえ)
静岡県生まれ。高樹沙耶[たかぎさや]として映画やドラマで幅広く活躍する一方、マリンスポーツの魅力に出合い、2001年からはハワイに活動拠点を移して、フリーダイビングを始める。02年にはフリーダイビングの日本記録を樹立。並行してハワイやオーストラリアの原住民の生活に関心を抱き、パーマカルチャーを学ぶ。03年から拠点を日本に戻し、エコ住宅「エゴコロハウス」の建設構想を開始。05年の着工からおよそ3年をかけて完成。08年9月26日より本名「益戸育江」として活動中。

南房総の豊かな緑を背景に、海に向かって開かれた高台というロケーション。自然との一体感が味わえる。









