特集記事 | 環境ソリューションでクローズアップする中小企業への対応
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社会・環境報告書ディレクトリ2009 Part2
環境ソリューションでクローズアップする中小企業への対応
 地球温暖化に関わるCO2排出削減と人体への安全性を左右する化学物質管理は、企業のCSRに関わる重要なテーマである。いずれも解決は容易ではなく、さらなる知恵や努力を要求されている。CO2排出削減では、国内クレジット制度の創設により、大企業が資金・技術を供与して中小企業のCO2排出を減らし、それに見合う排出枠を獲得する道が開けた。化学物質管理ではEUの「REACH」規制をきっかけにサプライチェーン全体で化学物質のデータを共有する動きが始まった。やはり中小企業をどう巻き込むかが課題だ。

国内クレジット制度で見込める中小企業、大企業双方のメリット

図1 国内クレジット制度の概要(出典:経済産業省資料) このところ急ピッチで経済産業省に申請が増えているのが、同省が昨年秋から始めた国内クレジット制度だ(図1)。

 中小企業が大企業の資金・技術によりCO2排出削減事業を実施、大企業はその削減量を自らの削減分として取得できるが、中小企業、大企業双方にとって次のようなメリットが期待できる。すなわち中小企業は資金、人材がネックになってやりにくかったCO2削減を実施することで、地域、顧客に対するイメージアップにつながる。大企業は社会・環境報告書の中でCSRをうたううえで、業種ごとの団体が設定しているCO2削減目標(自主行動計画)の達成に活用できるメリットが大きい。個別企業で言えば、事業所から発生したCO2を相殺するカーボンオフセット的な利用も可能になる。

 さらに試行排出量取引スキームの目標達成に活用できるほか京都議定書で日本が約束した削減目標の達成に貢献することも期待できよう。平成20年3月に改定された京都議定書目標達成計画の中でも中小企業の排出削減計画が盛り込まれ、中小企業の削減効果を182万t-CO2と見積もっている。新政権は「2020年までに、1990年比で25%削減」という厳しい目標を掲げたが、多様な対策の中で国内クレジット制度の寄与は欠かせない。

 国内クレジット制度は、中小企業と大企業が協働(共同)で策定した事業計画を有識者、専門家から成る国内クレジット認証委員会に申請し、その認証を得なければならない。同制度は産業部門だけでなく、農林(森林バイオマス)、サービス、業務、家庭を含む民生部門まで対象になる。

図2 国内クレジット制度における事業案件数の推移(出典:経済産業省資料) 経済産業省が2009年8月18日現在でまとめたところによると、排出削減事業の申請受付件数は、累計で125件に達した。このうち、国内クレジット認証委員会が承認した事業計画は56件、実際にクレジット認証を得たのは8件となっている(図2)。

 申請受付分の62件は工場(中小企業)が占め、他を圧倒する。国内クレジット認証委員会の承認を得た削減方法論は、ボイラー更新が最も多く、次いで空調設備更新、照明設備更新、ヒートポンプ導入、ポンプ、ファンなどの可変動力制御機器の導入などとなっている。一方、共同実施者(クレジットを買い取る側)は商社が最も多く、電力会社、銀行、その他の順だ。

 電力会社は自らのCO2削減目標の達成の一助に、商社は小ロットの削減量をまとめて転売するビジネスのもくろみがあるとみられる。銀行の場合は、預金に排出クレジットを付けるサービスなどで顧客の好感度を高める狙いがあるようだ。

※試行排出量取引スキーム:環境省が国内での排出量取り引きを実験的に行うため、
   参加企業を募って始めた。現在はほかの取り引きシステムとの統合化を目指す


ソフト、ハード両面でバックアップ 診断の無料化や設備費の一部負担

 しかし中小企業、大企業のメリットを強調するだけでは制度は軌道には乗らない。そこで国内クレジット制度ではソフト、ハード両面から支援する体制を組み込んだ。

 ソフト支援は排出削減事業の計画段階では、中小企業が現在どれくらいのCO2を排出しているかの診断と計画の作成を無料で行う。計画が妥当なものかを外部の登録審査機関に審査を依頼する費用については年間5000t-CO2以上削減で50万円を上限に援助する。排出削減事業の実施段階では、実績報告書の作成を無料で支援し、実績報告書の確認を審査機関に依頼する費用は15万円を上限に支援する。実際のソフト支援は日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、民間のコンサルティング企業が当たる。

 民間のコンサルティング企業で国内クレジット制度の支援サービスを行っているのは現在12社。シンクタンク系から省エネ関連の計測機器メーカーまで様々だ。最近注目された活動は、ボイラーやコジェネ機器メーカーに太いパイプを持つエンジニアリング会社が、メーカーを集めて全国で勉強会を開き、メーカーの日ごろの営業活動を通じて国内クレジット制度をPRし中小企業のCO2排出削減のニーズを掘り起こすように働きかけていることだ。

 ハード支援は先進的な排出削減設備を導入する中小企業を対象に設備費の一部(1/2または1/3)を国が負担する。平成21年度の予算で6億600万円が計上されている。

 さらに日本政策金融公庫による特別金利の融資もあり、中小企業に排出削減の意欲を喚起するのが狙いだ。

 8月18日時点で承認された排出削減事業計画56件の中には事業者と共同実施者の間に資本関係があるケースもある。この点について経済産業省産業技術環境局環境経済政策課環境経済室の市場メカニズム係長、辻上和也氏は「大企業が音頭をとって関連会社、取引先を巻き込んだサプライチェーンとして国内クレジット制度を活用する動きが活発になるのでは」とみる。
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