福島敦子氏
福島 今年6月に「不動産財務戦略サポート室」を新設した背景から教えてください。
佐藤 日本の企業の場合、経営資源に占める不動産の割合が諸外国に比べ高く、上場企業の約3割では簿価ベースで総資産の25%以上の比率で不動産を保有している、とのデータもあります。当社ではお客様の企業価値向上の観点から不動産財務戦略をとらえる必要があると考え、当室を立ち上げました。
福島 時価会計制度の導入など、不動産の評価基準を取り巻く環境は変化しています。
佐藤 おっしゃるとおり、不動産の価値算出方法は一様ではないうえに、関連の会計制度はどんどん変わっています。しかし、「足元では含み益が出ているので保有」「今期赤字だったから売却」など、企業全体の戦略と切り離した形でシンプルに不動産対策を考えている経営者もまだ見受けられます。
福島 伝統的な企業を対象に、最新の不動産価値に着目したM&A(企業の合併・買収)も話題になりました。
佐藤 数年前からの傾向として、株主や投資ファンドに代表される資本市場は、企業が自社の経営資源を有効に活用しているのか、従来よりも厳しくチェックする傾向にあります。
一方、三菱UFJ信託銀行とお取引のある上場企業の多くは、経営課題に「企業価値の向上」を掲げ、株主重視に向けたさまざまな取り組みを展開されています。
私どもは、信託銀行で培った知見を生かしてお客様の側に立った不動産財務戦略を提案していきます。
不動産オリジネーション部
不動産財務戦略サポート室 室長
佐藤靖典氏
福島 三菱UFJ信託銀行としてはこれまでも不動産活用に関するサービスを提供していらしたと思われますが、専門部署で管轄することにより、どのような対応が可能になるのですか。
佐藤 MUFG戦略プロジェクトの一環として新設された当室は、組織上は不動産部門の一つと位置づけられていますが、メンバーは法人ファイナンス部門出身者と不動産部門出身者の双方で構成されています。
信託銀行ならではの「財務を読み解く眼」と「不動産の実務」に長けたプロが一丸となって業務を遂行することで、お客様のニーズに対してタイムリーに専門ノウハウを提供できるワンストップソリューションサービスが実現できると考えます。
福島 企業の不動産活用については、最近よく「CRE戦略」という言葉を耳にします。
佐藤 世間でいわれている「CRE」の定義は実はさまざまで、一様ではないのが実情です。
私どもの不動産財務戦略サポートは、単なる不動産の在り方だけではなく、「不動産と市場の折り合い」を重視します。バランスシート上の不動産比率が高い企業の経営者には、経営戦略・財務戦略の観点から不動産の最有効活用の在り方のご提案にとどまらず、株主や投資家への充分な「説明力」をつけていただくレベルまでカバーします。
企業の不動産活用に関して、何か問題が生じてから対症療法的に解決するのではなく、企業の将来像を踏まえて能動的に課題解決に導きます。
福島 企業の経営全体を俯瞰(ふかん)したうえでサポートしていくイメージですね。
佐藤 顧客企業のバランスシートを分析し、対象不動産の市場価値や潜在リスクを抽出しながら売却・集約・賃貸借・現状維持などの中から最適な活用方法を検討します。
また、売却代金についても「自社株買いの資金に充てて株価の上昇を図り、結果として株主利益増大が期待できる」、あるいは「退職給付債務の削減に充当して、実質的に従業員の福利厚生の充実を図る」といったような、株主や市場へのメッセージを織り込んだアドバイスを提供していく方針です。
福島 最後に、今後の抱負をお聞かせください。
佐藤 不動産の時価と簿価のギャップ、市場価値・利用形態をめぐる企業と市場関係者の齟齬(そご)などのスムーズな解消を目指して、顧客企業一社一社にテーラーメードの提案をしていくのが当室の役割です。
日本において法人が保有している不動産資産の総額は約490兆円にのぼります。この有効活用が進めばマクロ的な経済効果も大きいとみています。私どもはその一翼を担っているという自負のもと、お客様の中長期の経営アドバイザーとしてお役に立ちたいと思います。
福島 金融と不動産の融合によるコンサルティングに期待しています。





